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~異世界で貴族になったので、悪い奴に落とし前を付けます④~

 ファーレン公爵領の500人兵団は、街に戻った翌朝、日の出と共に出発し、その日の昼にはゲラン伯爵の居城の直ぐそばの丘の上に陣を張り始めた。

 城の目前の陣を見て初めて、ファーレン公領軍が戻ってきていることを知ったゲラン伯爵の城内は慌てふためいていた。


「なんでファーレン公領軍が、あんなところに陣を張っているのだ!?」

「いつの間に帰って来たのだ?!」

「帰ってくるのは早くても4日後くらいのはずではなかったのか?」

 ゲラン伯爵と側近は、ファーレの街が襲われてから国境に知らせを送った場合の往復時間は、早くても5~6日と見ていた。このため、しばらく城を出て身を隠すための支度をしている最中だったのだ。


 しばらくすると、丘の上の陣地から数人が下りて来た。ゲラン伯爵が、城から遠眼鏡で見てみると、

「ロ、ロメル殿下が帰って来ているではないか! それと熊のような大男ドルク、すごく背の高いバルクがおるぞ。あれは亜人の男か?(ヴォルフ)、お‥‥、美しいリリィもおるではないか‥‥。先頭の町人のようなユウが何か変な道具をロメル殿下に渡しておるな‥‥。」

 ユウがロメルにメガホンマイクを渡しているところだった。


「聞こえるか、卑怯者のゲラン伯爵。ファーレン公爵家のロメルだ!」


「な、何だあの道具は? 声を大きくする魔道具か? するとあの町人のような男が、ヤマダユウ男爵か? 魔道具使いの?」

 メガホンマイクの呼びかけにゲラン伯爵は慌てた。


「ゲラン伯爵、直ちに投降せよ! 直ちに投降しない場合は、うちのヤマダユウ男爵が魔法攻撃をお見舞いするぞ!」



 ゲラン伯爵の城内は、はざわついていた。

「おい! ヤマダユウ男爵って、魔物の軍団を全滅させた奴だよな?」

「魔法攻撃って、なんだよ!? どんな恐ろしい攻撃なんだ?」

「うろたえるな! コケ脅しに決まっておろう!」

 ゲラン伯爵は、臣下や兵達を一喝した。


 僕達は少し待ったが、ゲラン伯爵が、城から投稿する様子はない。


「じゃあ、ここからは僕がやらせてもらいますね。」

 僕はロメル殿下からメガホンを受け取って呼びかけた。


「ゲラン伯爵が自ら投降する意思がないなら、周りの人が投降させて下さい。その男は領主ですが卑怯者です。そんな領主は、周りの皆さんが縛り上げて、投降させて下さい。」


「み、皆の者、敵の世迷い言に惑わされるでないぞ!」

 ゲラン伯爵は、ユウの言葉に慌てた。臣下たちへの呼びかけで責めて来るとは思わなかった。


「その男は、計画的にファーレン公爵領の守りを手薄にして、恥知らずにも盗賊団や魔物と手を組み、ロメル殿下の留守のファーレの街を襲わせたのです! こんな卑怯者は、直ぐに領主の座を追われます。皆さん、恐れることはありません!ゲラン伯爵を取り押さえて下さい!」


「そんなこと言ったってなぁ‥‥。」

「領主様だしなぁ‥‥。」

 城内では、臣下や兵達が顔を見合わせている。それを見たゲラン伯爵が業を煮やして、

「貴様らーっ! 何をグズグズしておるか! 奴らを迎え撃つ準備をせんか!」

 怒鳴っていた。


 城の様子に変化がないため、僕はトランシーバーで影の手に「始めるよ。」と連絡を入れると、すぐ側でリリィも小銃の準備を始めた。


 それを確認しながら、僕はメガホンで再び呼びかけた。

「城の中の皆さん。ゲラン伯爵を差し出す判断が出来ないようですね。では、僕の「爆炎魔法」を見て決めて下さい。 城には東西に尖塔が立っていますね。東の尖塔を見ていて下さいねーっ!」


 僕が手で合図すると、

 ヒュルヒュルヒュル‥‥

 という音が空から聞こえて来たような気がした。

「爆炎魔法を受けてみよ!!」

 僕の声を合図にしてリリィが小銃を発砲した。次の瞬間、


 ボガーン!

 巨大な爆炎が、東の尖塔の屋根を襲った。

 うわーっ!

 ひぃーっ!

 城内に悲鳴が溢れた。


「もう一発受けてみよ!」


 ボガーン!

 燃え盛る尖塔に、もう一度、巨大な爆発と火柱が上がった。

 うわーっ!

 本物の魔法だーッ!

 本物の魔導士だーッ!

 城内はパニック状態になっている。


「次はこれを、皆さんがいる城の中に撃ち込みますね。 卑怯者のゲラン伯爵と一緒に黒焦げになるか、正義の名のもとにゲラン伯爵を差し出すか、十数える間に決めて下さいね!  ひとーつ‥‥、 ふたーつ‥‥、 みいーっつ‥‥」


「待ってくれーッ! 領主様を差し出す! だから止めてくれーッ!」

 城から叫び声が聞こえて来た。直ぐ後に、

「貴様―っ、許さんぞーっ!」

 というゲラン伯爵と思われる声が聞こえてきたが、直ぐに大人しくなったようだ。


 ちなみに爆炎魔法は、大型ドローンでガソリンの入った袋を空から落とし、その瞬間にリリィに尖塔の屋根を撃たせて、火花で発火させたものだった。


    ◇


 しばらくした後、

「ゆ、許してくれ。こ、殺さないでくれーっ!」

 縛られて僕らの前に差し出されたゲラン伯爵が、僕らの前で命乞いしている。

 ロメルがそれを冷ややかな目で見下ろして、

「ゲラン伯爵、アヴェーラ公爵は怒り心頭でね。「ゲランは見つけ次第首をはねろ。」と言われている。」

「ひ、ひーっ!」

 悲鳴を上げるゲランに続けて、

「しかしね。私は条件次第で君の命は助けようと思っているんだ。」

「ど、どんな条件でしょうか? なんでもします! 助けて下さい!!」

 すがる様なゲランに、

「王太后の前で、今回の経緯を語って欲しいんだ。」

「えーっ! そんなぁ‥‥。そんな事したら、今度は王太后に殺されてしまいます。」


「では取り合えず、僕達に話して頂けませんか?」

 僕が目配せするとロメル殿下が頷いたので、ゲラン伯爵の話を聞くことにした。


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