~異世界で貴族になったので、悪い奴には落とし前を付けます①~
ドドド!
「無事でいてくれ、みんな‥‥。リーファ!」
昨夜から夜を徹してバイクで街道を走り続けた公太子ロメルは、ファーレの街の城壁が見えるところまでたどり着いた。
後部座席には長い手足を折りたたむようにしてバルクが座っている。「君と僕が駆け付ければ百人力くらいになるはず。」としてロメルが連れて来たのだ。
「殿下、あれを見て下さい!」
バルクが指さす先には、兵士や魔物の死体が見えて来た。つい先ほどまで、激しい戦闘があったことがうかがえる。
ドドド‥
ファーレの街を囲む城壁に近づくにつれて、魔物や兵士の死体が増えていく。ロメルは不安な気持ちを抱きながらその中を走り、バイクで城壁の門をくぐった。
果たして、
門を抜けたロメルに聞こえて来たのは大歓声だった。
市民達が人だかりを作って大騒ぎしている。みんな手を高々と掲げ、
「ファーレ万歳! ファーレ万歳!」
と叫んでいるようだ。
ドド‥‥。
あっけにとられたロメルが、バイクを止めて人だかりに近づいていくと、大きな人の輪が出来ていた。輪の中心を覗くと、ゾラに肩車されて照れた笑顔のユウがいた。
「ユウ!」
ロメルが叫ぶと、
「おお、ロメル殿下だ。」
「殿下が帰ってらっしゃいましたぞ!」
ロメルに気付いた市民が道を開けてくれた。それによってユウもロメルに気が付いた。
「あ、ロメル殿下! 戻って来られたんですか。早かったですね。」
「‥‥ってヤツは‥‥」
「え?」
うつむいてつぶやきながら近づいて来るロメルの表情は、ユウには良く見えなかった。
「君ってヤツは!」
ロメルが、ユウの肩に軽く拳を当てた。顔を上げてユウと向き合ったロメルの目には涙が溢れていた。
「ありがとう。ありがとうユウ!」
肩にあてた拳を首に回すと、ロメルはユウを抱きよせた。二人が固く抱き合うと再び歓声が始まった。
「ファーレ万歳! ファーレ万歳! 」
遠巻きにこの様子を見ていたバルクに大きな影が近づいて来た。
「よう! バルク。早かったじゃねえか! いや「もう遅い」かな?」
ドルクだ。
苦笑いするバルクに、
「ユウ様は、大したお方だぜ。絶望的な戦況だったのによ。自分の騎士団と俺をうまく使って敵と戦って、最後は町の人達まで使って、魔物と大盗賊団に勝っちまったんだ。」
「じゃあ、皆さん。後で祝勝会をやりましょうねーっ!」
おおーっ!
町の人達に声をかけて手を振り、それぞれのバイクに跨ったユウとロメルは公爵の城へ向かった。