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~異世界で貴族になったので、街を守って戦います④~


    ◇   ◇


 「うわぁ、キレイ。」

 「煌びやかだけど、神聖な感じもするのね。ユウの国の婚礼衣装は素晴らしいわ‥‥」

 後宮の応接室を「男子禁制」にして行われていたのは、花嫁衣装の試着会だ。


 ユウとヴィー、ヴォルフとリリィの合同婚礼まであと一月半となったため、先日ユウが異世界から購入してきたウェディングドレスをヴィーとリリィに着せてみよう、ということになったのだ。

 当然、衣装の手配を依頼したアヴェーラ公爵を筆頭にミリアとリーファの二人の姫も来ていた。


 「こんなドレス、私達にはもったいないと思います。」

 肩を出したチューブトップデザインのドレスを着て、恥じらうように瞳を伏せるリリィに、

 「そんなことは無いぞ。そもそもこのドレスはお前達に似合うものをとユウが選んできたのだ。良く似合うぞ。とてもキレイだ。リリィ。」

 アヴェーラ公爵が、うんうんと頷きながら満足そうにリリィを見つめている。


 「私には、そういうドレスは似合わないのです。」

 「似合わないっていうか、ヴィーの胸だと、ずり落ちてきちゃうもんね。」

 ミリア姫にからかわれると、

 「姫様、ヒドイのです。」

 着替えのために用意したつい立てから、ヴィーが顔を出して抗議した。


 「ヴィー、そなたも出て来て見せてみよ。」

 アヴェーラ公爵に促されると、ヴィーがおずおずと出て来た。

 ヴィーのドレスは、レースが多用されたノースリーブのドレスで、とても可愛らしいデザインだった。

 それを見たアヴェーラは、

 「ヴィー、可愛いではないか! やはりユウはお前に似合うものが‥分かっ‥て‥‥う、うう‥」

 笑顔で感想を言い始めたが、途中で感極まってしまったようだ。

 慌てて駆け寄るヴィーを抱きしめて、

 「良かった、良かったなぁ。ヴィー。」

 「はい、ありがとうです。公爵さま。」


 「お義母さま、私も二人から借りて着てみたのですが‥‥、見ていただけませんか?」

 遠慮がちな声に振り向くと、同じようにウェディングドレスをまとったリーファがたたずんでいた。

 レースの白いヴェールをめくると、リーファがはにかみながら微笑んだ。

 それを見たアヴェーラが、さらに「だーっ」と涙を流しているのを見てミリアが、

 「誰か、お母さまにハンカチを! ドレスに鼻水とか付けさせないで!」

 「ミリア! その言い草はなんだ!」


 幸せな大騒ぎとなっている後宮だった。


    ◇    ◇



 「ゲラン伯爵領の首尾は、どうなっている。」

 王太后とゲラン伯が会合してから、半月ほど経過した日。屋敷を訪れたルガーノにゾーディアック卿が尋ねた。

 「はい、およそ思惑どおりに進んでおります。ヤマダユウに恨みを持つハラー男爵家の残党と、「トバルの蛇」の残党を中心に結成されていた盗賊団に手を組ませました。これを「使い道があるから」としてゲラン伯爵領に匿わせています。

こ奴らは、ファーレン公爵領が手薄になれば、間違いなく攻め入りたくなるでしょうな。」

 「よし、ではそろそろ魔国にも動き出してもらおう。」


 ゾーディアック卿が怪しい笑みを浮かべると、顔の入れ墨の蛇が生きているように怪しくうねっていた。



   ◇    ◇


 それから、さらに10日程経ったある日のこと、


 「王子様、王太后様、至急ご報告したいことがございます。」

 王都・王宮では、急報を受けて緊張した面持ちの宰相が国王執務室に入って来た。

 「国境近くの森に魔物が集結しているそうです。」


 「やはり‥‥っつ!」

 (やはり話は本当だった)と言いそうになって、王太后バーシアは慌てて口を噤んでから、

 「確認を急ぎなさい! 事実であれば魔物に対抗する兵を集めるのです!」


 王太后の号令の下、近隣の領地から兵が招集されることになった。


    ◇


 「くそう。バーシアめ、うちの領地の景気が良い事を妬んでおるのか?」

 「母上、そのような事を言われては‥‥」

 「だって、そうであろう。ゲランの奴めの所を、財政難を理由に出兵免除するなぞ! その上でうちの領地を中心に兵団を組めなぞと!」 

 アヴェーラ公爵が王宮からの出兵命令を受けて荒れていた。



 「ロメル殿下。王宮からの出兵命令は、そんなにキツイものなのですか?」

 「ああ、かなり厳しいな。ファーレの街を警備する最小限の衛士を残して、あとは全部派遣しないといけないくらいだ。」

 ロメル殿下が「出兵の調整に頭を抱えている」と聞いて、僕は城に顔を出してみたのだ。


 「僕も出ましょうか? 少しは戦力になると思いますが‥‥」

 「ありがとう。君には期待している。だからこそ君には残ってもらいたい。何かあった時のために少数精鋭で領地を守る役を頼む。」

 「はい。そういうことなら、そのように。」


 実際、ロメルはユウに期待していた。

 先日来、ユウは自らの騎士団に異世界から持ち込んだ小銃の訓練を始めていた。騎士団と言っても衛士隊の中から十五人の志願者を募ったもので、副隊長のゾラがそのままユウの下で副団長を務めることになっている。

 小銃の扱いの指南役になっているヴォルフとリリィは、ユウの部下であることは変わりないので、そのままユウの騎士団で行動を共にすることとなる。


 そしてユウはヴォルフに、新たに手に入れた武器を試してもらっていた。

 「ちょっと大きいですね。撃った反動も大きいので、小銃の様に手に持って構えるよりも置いて構える感じですかね。」

 「あ‥ああ。ヴォルフの使いやすいようにしてくれ。」

 (すまんヴォルフ。そんなゴツイ武器の扱い方なんて分からないよ。)

 新しく入手したのはいわゆる「「対物ライフル」と呼ばれる車両等を攻撃するための、口径の大きなライフルだ。

 この先オーガより大きくて強い魔物が出て来ないとは限らない。「小銃よりも強力な武器が何か手に入らないか」と相談したところ、「中古で良ければ」とこれを譲ってもらったのだ。


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