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~異世界で貴族になったので、街づくりを進めます①~

完結を機会に誤字脱字・てにおは修正をしています。

       ◇     ◇


 「ユウ、此度の件では大司教ばかりが得をしたようではないか。このところ教会への寄進が大幅に増えているそうだぞ。」

厄災から10日余り経過し、ファーレの街も落ち着きを取り戻しつつあった。この厄災において「神の声を聞き、多くの民を救った」大司教の評判が急上昇しているのだ。

僕は、公爵居城の会議室に来ていた。今後のファーレの街づくりの相談をするためだ。


 「ええ、ですから公爵様のお望みも叶えたいと思いまして。」

「私の望みを叶えるとはどういうことだ?」

「はい、公爵様が5年前に実現しようとした望みを今も望んでいるなら‥‥。」

僕の言葉を聞いた途端、アヴェーラ公爵がキッと僕を睨んで、

「なんだ貴様、私を笑い者にしに来たのか?」

公爵の側付きメイド達にも緊張が走った。


 「聞いて下さい。5年前、ファーレの街では大きな事業に着手しましたが、その事業は途中で頓挫しましたね。」

「う、うるさい。」

「当時の技術力では安全に堤防に穴を開けることが出来なかったからと聞いていますが‥‥」

「うるさいと言っておるのだ!」

腹と立てて席を外そうとしたアヴェーラ公爵に、


 「その事業「運河建設」を僕に引き継がせてください。」

「何ぃ?」

「河川堤防の強度を維持しながら、堤防に穴を開けて水を取る、ということは簡単なことではありません。土木構造物の知識が必要です。そして運河建設にも様々な技術が必要になります。もちろん大勢の労働者も。しかし、今ならそれが全て揃います。やらせてください。」

「貴様、それを本気で言っておるのか。」

「はい、本気です。」

アヴェーラ公爵が僕に駆け寄って両手で僕の手を握り、

「本当か、本当に運河を造ってくれるのか?」と少女のような声を上げた後で、

「私を期待させて‥‥失敗したら許さんぞ。」

僕を睨みながら低い声で念を押した。


     ◇


 以前ロメル殿下が帰省して僕を訪ねてくれた時に、ダウンタウン及びスラム街の改造を中心としたファーレの街づくりについては、その柱をいくつか考えていた。

・スラムの住人にも仕事が回るような大規模な公共事業を始めること。

・その事業は将来にわたってファーレの街に役に立つものであること。

・ファーレの街の交通や流通を改善させること(人や物の流れを活性化させること) 

・出来るだけ街の景観をきれいに保ちながら(改善することも視野に入れて)事業を行うこと。


 災厄の後、僕はバイクで街の中を回り、街づくりの柱になるものを探していた。そしてたどり着いたのは、災厄の状況確認の時に気になった空堀のような作りかけの水路「5年前にとん挫した」という事業「運河建設」だった。


 現世で街づくり・都市計画などで街並みを作り変える「区画整理事業」を行う場合、大抵柱になるのは道路の新設・拡幅だ。渋滞の緩和や交流促進のため、歩道を拡幅したりする。

 しかし、この世界には、まだ自動車が無い。僕とヴォルフが「魔法道具」と言ってバイクに乗っているのは例外だ。人や物資の主な輸送手段は馬車だし、それが渋滞するほど走っているわけでもない。

 なお、僕は現世から自動車を持ってくるつもりは無い。大量の燃料を現世から継続的に確保(購入)してくることが困難だからだ。


 この世界には「魔石」を電池の様に使う技術はあるようだが、それは高価なものだ。そのようなこの国で流通の柱に出来そうなのが「舟運」だ。そして陸地に船を通行させる手段が運河建設となるのだ。


 アヴェーラ公爵はかつて海に近い国を訪問したことがあるそうで、その時に見た運河を張り巡らせた美しい街が忘れられず、運河建設を思い立ったのだそうだ。

 しかし、水路を掘る工事は進められたが、堤防を安全に開削(切り開く)して川と運河を接続する方法が思いつかず、事業はとん挫したのだ。川沿いの街で洪水に対して強い警戒感を持つファーレであれば当然のことだったのだろう。


    ◇


 「じゃあ、行ってくるから。」

「はい。気を付けて下さいです。」

僕は、ヴィーに見送られて現世日本へ向かった。今回は様々な買い物があるから大変だ。

まずは、銀のインゴットの大量購入だ。これから始める事業のためにもアヴェーラ公爵のご機嫌はしっかり取っておかねばならない。

 次に大型ホームセンターで工事用具の購入だ。以前、ウルド領の公共事業の時に購入したよりも大量の買い付けに店員さんも驚いていた。そして大型ホームセンターでは小型の建設機械まで売っていることに驚き、ついつい注文をしてしまった。


 さらにミクの「2つのお願い」のひとつに応えなければならないため、秋葉原に向かった。そして最後にミリア姫の買い物だ。ランジェリーショップに行くのは恥ずかしいのでカタログ通販を私書箱で受け取ることにしていたのだ。時間短縮になるし、何より店舗で恥ずかしい思いをしなくて済む。

 これらの買い物をして、ヴィーの待つ宿舎へ帰った。



 「ただいまー。」

「おっ、帰って来たわね。」

僕を出迎えてくれたのは、ヴィーではなくミリア姫だった。この頃よく遊びに来る。


 「すみませんが、後宮の使用人の手を少し貸してもらえませんか? あ、出来れば口の堅そうな人を。」僕はミリア姫にお願いして人を集めてもらった。


 まずは建設資材の搬入だ。使用人の皆さんの手を借りるに当たって、僕には「収納の魔道具」が使えるということを説明した。宿舎の納戸から信じられない量の資材が出て来るのだから、不審に思われることへの対策だ。

スコップ、つるはし、セメント袋、一輪車等が納戸のドアを介して異世界から大量に運び込まれて来たのだ。それらは公爵家の倉庫に収納してもらった。


 そしてミリア姫に段ボール2箱分のランジェリーを手渡すと、早速そば付きメイドに開けさせている。

(ここで開けるなよー。)と思っていると、

「キャーッ!きれい! でもエッチーっ! ヤマダユウ、こんなの派手なの買って来て、あんたいやらしいわねーっ!」

ミリア姫が大騒ぎを始めたので、

「何言ってるんですか。全部姫様がカタログで選んだヤツですよ!」

「えーっ? そう? ヴィー、あなたも見てみなさいよ。あなたに似合うと思って買ったのはこれよーっ!」

ミリア姫たちが騒いでいるうちに僕は残りの荷物を運び込んだ。


「ヤマダユウ、終わったらこっちの部屋に来て。」

荷物の運び込みが終わった僕にミリア姫から声が掛かった。


「じゃーん! すごいベッドでしょう。」

僕らの宿舎の寝室に天蓋付きの大きなベッドが運び込まれていた。

「すごいです。お姫様のベッドみたいなのです。」

ヴィーが、頬に手を当てて驚嘆の声をあげる。

「ベッドは私が見立ててあげるって言ったでしょう。‥‥でも、これならもう一人くらい一緒に寝られそうねぇ。」

顔を見合わせる僕とヴィーにお構いなしで、

「うん、クッションもいい感じ。」


 ミリア姫はベッドに座ってご機嫌だった。

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