余談ですが ~運送屋はツライのです~
領内の土木工事は、これまで現世のコンクリートを使わないでやってきたが、やはり雨水の影響を強く受ける場所や、川の工事では、耐水性と強度が欲しいところだ。
ちなみにローマ時代の古代コンクリートと似たような技術は、こちらの世界にもあるようだ。石造りの街であるファーレでは、多用されている。
しかし、どうしてもそれでは強度と耐久性が足りない場合もある。僕は、覚悟を決めて今回の満月には、コンクリートの材料であるセメントを現世日本から買ってくることにした。
◇
「DIYですか? 頑張りますねー。」
ホームセンターの店員に冷やかされながら、一袋30㎏のセメントを三十袋買った。
軽トラックを借りてホームセンターから、アパートまで二往復。ホームセンターでの積み込みは店員さんに手伝ってもらえたが、積み下ろしと、異世界までの運搬は、僕が一人でやらなければならない。
最初は、一袋ずつ背負子で運ぼうと思ったが、一輪車に二袋ずつ積んで運ぶことにした。アパートのトイレのドアの前で、バランスを取りながら一輪車から片手を外してドアに手をかける。
(異世界・ウルド領・代官屋敷・宿泊棟の僕の部屋のドア)
強く念じながらドアを開けて光の中を入っていく(一輪車を押していく)。
これを十五回来り返した。
「うわーん。づかれたー。」
僕が、運び込んだセメント袋の前にへたり込んでいると、ヴィーが顔をのぞかせた。
「ご主人様、終わったですか?」
「ああ、終わったよ。疲れちゃったけどね。」
ヴィーは、部屋に入ってくると長椅子に座って、ショートパンツから伸びた自分のフトモモをペンペン叩きながら、
「じゃあ‥‥膝枕するですか?」
「‥‥する!」
最近、ヴィーは、僕が〇ニクロで買って来たデニムのショートパンツを気に入ってくれたようで、よく履いている。
ヴィーのすべすべのフトモモを感じながら「頑張って良かった」と僕は思った。