【番外編】~余談ですが~ ミク編➁ 切ない愛の伝道師
「ふっふっふ、ようやくこれが届いたのね。」
ユウちゃんに以前からおねだりしていた物が、ようやく届いた。
ユウちゃんに現世の物を色々おねだりしてきたけど、電気を使う家電系は中々OKが出なかった。太陽光パネルと蓄電池によって安定的に電気が使えるようになって、ようやく待望のこれを持ってきてもらえた。
カラオケセットだ。
近頃のセットは小さくなっていて、リモコンボタンが付いているマイクとラジカセサイズの本体、USBに入った音楽ソフトでセットになっている。
問題は「どこで歌うか」よね。
色々考えてみたけど、怪しまれても大丈夫なように、ユウちゃんとヴィーの新居の2階を借りることにした。しっかりした造りの家なので、そんなに音漏れしなそうだし、変な音楽が聞こえてもユウちゃんの家なら、あまり怪しまれないと思ったのよね。
2人がちょうど出かける日に、借りることが出来た。
私は、久しぶりのカラオケだったのと、小さなセットのわりに思いのほか音が良かったことに浮かれて、調子に乗って歌っていて、侵入者に気づかなかったんだ。
「じゃあ、ここで、とっておきをやってみましょうか!」
私は、現世日本で十八番にしていた曲を歌うことにした。女性ロックバンドの懐かしいバラードで、失恋した相手を想った曲だ。
♪ ♪ ♪
いい調子で歌い終わって満足していると、
パチパチパチ、
拍手が聞こえて来て、驚いて振り返ると、
「ううっ‥、ミク。そなた、なんと!‥‥なんと切ない歌を歌うのだ!」
「ほんっと、胸が締め付けられるほど、切ない歌だったわ!」
涙にくれるアヴェーラ公爵とミリア姫が、拍手をしてくれていた。
「ミク! 私はこれほど切なく、これほど胸を打つ歌を聞いたことがなかったぞ! ミリア、公爵家お抱えの吟遊詩人を全員クビにして、ミクを雇え!!」
ユウちゃんに用事があって来た公爵親子が、どこからか聞こえてくる歌声を聞きつけて、歌い手を探して2階にやって来て、そのまま聞き入ってしまったのだそうだ。
その日から私は、「悲恋の歌姫」「切ない愛の伝道師」等と呼ばれて、ユウちゃんには冷やかされるわ、公爵様には独演会みたいなことをやらされるわ、と、しばらく恥ずかしい思いをした。
異世界でカラオケをする時は、場所に気を付けないといけない。
あと何話か、投稿させて下さい。