【番外編】~余談ですが~ 聖獣ノワ編➁ 我は聖獣、色々なお役目があるのだ。
番外編を追加する都合上、「連載中」の表示に戻っていますがご了承ください。
あと何話かアップする予定です。
◇ ◇
ヴィー殿とユウと一緒に暮らしはじめて、しばらくした頃、
「子猫を見せて」と少年がやって来た。
我は、子供が嫌いだ。
うるさくて乱暴なくせに、思い通りにならないとすぐ泣く。
しかし「ラング殿下」と呼ばれたその少年は、大人しそうだ。ユウとヴィー殿が気を使っている様子から、ユウが仕える主君の子供なのであろう。
ユウには、ご飯を食べさせてもらっている恩義がある。我も少し気を使うことにしよう。
ミャア‥‥
声を掛けてやるとラング殿は、
「おいで」と手を広げて来たので、抱かれてやることにした、
たいていの子供は、我を見つけると大騒ぎするが、ラング殿は落ち着いている。こういう子供なら、我も付き合ってやろうではないか。
「本を読んであげるね。」
別に本など読んでくれずとも、大人しくしてくれれば良いのだが‥‥。
「『竜騎士の冒険』にしようか。」
我を膝に乗せて、ラング殿は、本を読み始めた。
「ある所に、とても美しいお姫様がいました。
そのお姫様は、誰にでも優しく、みんなから慕われていました。」
(ふむ、まるでヴィー殿のようだな。)
我は、ラング殿が本を読むのを、膝の上で付き合ってやることにした。
「でも、ある日突然、お姫様は、魔物にさらわれてしまいました、」
(なに!? それは一大事ではないか!)
我が、思わずラング殿の顔を見上げると、
「大丈夫だよ、ノワ。聞いていてね。」
我を撫でながら言う。
別に我は、魔物の襲来を恐れた訳ではない。突然のことに驚いただけだ。
続きを聞こうではないか。
「お姫様をさらわれた王様は、国中から姫を助けてくれる勇敢な者をさがしました。」
(むう‥‥我のように勇敢な者は、中々いないかもしれんぞ。)
我が、再びラング殿の顔を見上げると、
「心配だね、ノワ。誰か来てくれるといいね。」
(うむ、来てくれると良いのだが‥‥)
「王様の元に駆け付けてくれたのは、ロバに乗った男と、羊飼いの男と、蛇使いの男でした。」
(なに!? 弱そうなヤツしかおらぬではないか?!)
「あらぁ。ラング殿下に本を読んでもらっているですか?」
ヴィー殿が、おやつと飲み物を持ってきてくれたことにも気付かず、我は、ラング殿との冒険の旅に集中していた。
冒険の続きはというと、
ロバに乗った男は、実は竜騎士で、竜がロバに化けていたのだ。
そして蛇使いは、案の定、魔物の使いだった。蛇使いの使うたくさんの蛇は、全て魔物に化けて、竜騎士の行く手を阻んできた。
そして羊飼いは、途中で逃げ出した羊を追ってどこかへ行ってしまった。頼りにならん奴だ。
物語が佳境になると、我も共に戦っているような気分になった。
最後は、竜騎士が魔物を退治して、姫を救いだし、めでたしめでたしであった。
物語の中でラング殿と我は、共に冒険の旅をしたのだ。心地よい疲れが眠気を誘う。
「あら、2人とも寝ちゃったですか。」
ヴィー殿が、ラング殿と我に毛布を掛けて、優しく抱いてくれた。
ヴィー殿に抱かれて、我とラング殿は、夢の中で冒険の続きに出かけることになった。