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~最終話 異世界国づくり後編③~

(前回と同じです)いよいよ最終話です。これまで読んで頂いた方、ありがとうございます。自分でこのサイトで読み返すと「うまく書けたかな」とおもう話と「この話いらなくないか」という話もあります。そこでお願いですが、評価をいただけると助かります。次回作の参考にしたいのです。そして誤字脱字や段落がズレたところにあったり、修正も必要ですが、まずはこれまでありがとうございます。もう少しお付き合い下さい。

     ◇


 カラーン、カラーン

一夜明けたファーレの街には、朝から祝いの鐘が鳴り響いていた。


 「ここにファーレン大公国、そしてその国主、ロメル・ファーレン大公の誕生を宣言する。」

大司教が宣言するとロメル大公が力強く拳を掲げた。

前夜祭から一夜明け、城で開国式典が行われた。


 ファーレン大公国万歳!

 ロメル大公万歳!

大広間では、ファーレン大公国・ロメル大公の誕生に盛大な拍手と大歓声が沸き起こっていた。

大司教の開国宣言を頂き、戴冠式を済ませたロメルは、中庭に面したバルコニーに立ち、集まった民衆に向かって、

「今ここに、ファーレン大公国の建国を宣言する!!」

もう一度、高々と拳を掲げて宣言した。


 うわーっ!

 ファーレン大公国万歳!

 ファーレン大公国万歳!


民衆の大声援はなかなか止まず、ロメルは歓声に手を振り続けた。


 それを見ながら僕は考えていた。

(これから面倒くさい事になるなあ‥‥)

そのことを。

ファーレン公爵領と連携領地は今日からファーレン大公国となり、ロメル殿下は、ロメル大公となった。そして僕も不本意ながら、「宰相・ヤマダユウ伯爵」となってしまったのだ。


 しかし、僕のやることは、これまでとあまり変えないつもりだ。

宰相の権限をあまり持たせないようにすること(持ちたくないので)、そしてロメル大公の目指す現世の民主主義に近いやり方を目指して「議会」のようなものを作るつもりだ。

当面の代議員は、領主や3つの職業ギルド長にでもお願いするつもりだ。


 そんなことを考えていると、

「ユウ! こっちに来てくれ!」

ロメルに呼ばれてバルコニーに向かうと、

「みんなも承知と思うが、開国の立役者・ヤマダユウだ!!」

 うおーっ!!

 ヤマダユウ様―っ!

ロメルから紹介されると僕も、集まった民衆の物凄い声援に迎えられた。


 ロメルは、ユウと肩を組むと、

「ユウ‥僕は、この景色を一生忘れないよ。」

つぶやいて瞳を潤ませた。

その後、

「ヴィー! ヴォルフ! リリィも来いよ!」

両手で大きく手招きして僕の仲間達を呼んだ。


「私達まで、行っていいの?」

「遠慮した方が良いと思うです‥‥」

躊躇とまどっているリリィとヴィーを、

「なにしてるんだ。大公がお呼びだ。行くぞ!」

ヴォルフが両手で2人を抱える様に押した。


 「ちょ、ちょっと、ヴォルフ‥‥」

戸惑うリリィに、

「俺だって、夢みたいで‥信じられないんだ。リリィと一緒になれるだけで夢みたいなのに、剣豪5指になったり、建国の英雄に名を連ねるなん‥‥」

ヴォルフは、言葉が続かなくなってしまった。

リリィが抱き着いてキスしたからだ。


 それを赤面しながら見たヴィーが、

「ユウ様―っ! 」

ユウに駆け寄って抱き着いた。


 そこに、領主貴族達も混じって大騒ぎのバルコニーの様子を見ながら、

「本当に良いのか、バート?」

アヴェーラ公太后が、バルコニーの様子に目を細めるバートに尋ねた。

「はい。そろそろ若者達に役目を譲らなければなりませんから。」

静かに答えていた。


 昨夜、バートから提案があり、開国式の後にやっておく大事な用事が出来た。

その話を聞いたヴォルフは「寂しくなります」と涙ぐんでバートに肩を抱かれていた。


   ◇


 遠方の国賓達の見送りを済ませた後、僕はクラン王の護衛役のバルガスに声を掛けた。

「中庭に来て欲しい」と。


 バルガスが中庭に出ると、そこにはファーレの衛士隊が集まっていた。

そしてその最前列に剣豪5指が並び、クラン王がその脇で椅子に座っていた。


 (何か、儀式でもやるのかなあ?)

バルガスがきょろきょろ辺りを見回していると、

「バルガス殿! こちらにおいで下さい。」

剣豪5指として端に並ぶ、ヴォルフに声をかけられた。


 バルガスが駆け寄るとバートが微笑んだ。

「以前、君とヴォルフの腕試しをやりましたが、あの時。と比べると、今の君は別人だ。我らを助けてくれて、ありがとう。」

「えっ、いやぁ‥‥お恥ずかしい限りです。あの時俺は、目が覚めました。ヴォルフとユウ様のおかげです。そして、今の俺があるのは、クラン陛下のおかげです。」

バルガスは、頭を搔きながら答えている。


 「そのように、自分の努力まで、人のおかげと言えるようになったのですね。」

バートは、大きくうなずいてから、

「バルガス殿、私は剣豪5指を退きます。そして代わりに君を推薦します。」

「ええっ!? ダメですバートさん! バートさんは俺の心の師匠ですから。」

慌てるバルガスに、

「私からも頼みたい。」

ロメルが微笑むと、

「そうだぜ! みんな賛成してるんだ。」

ドルクも続いた。


 戸惑うバルガスがクランの顔を見ると、満面の笑みでうなずいている。それを見て、

「謹んで、お受け致します。これからも精進しますので‥‥ご指導をおねがいします!」

深々と頭を下げると、

 パチパチパチ

集まった衛士隊から暖かい拍手が送られた。


 さらに、

「おおっ、間に合ったか!」

ドワーフ工房のベレンさんが、この集まりを見つけて駆け寄ってきた。

「ユウ様。ご注文の品、1つ目、仕上がりましたよ。」


 それを聞いた僕が目で合図すると、ロメルがうなづいて、

「剣豪5指に返り咲いたバルガス! 君に贈りたい物があるんだ。ささやかながら受け取ってもらえないか?」

その言葉の間に僕がそれをバートに手渡すと、バートがそれを掲げた。それに向かってロメルが手を掲げて、

「古代竜のウロコ作った鎧だ! 古代竜討伐の記念として作った。そしてこれは、剣豪5指と双王国の国王のみに着用を許すものとする。」


 えーっ!

 すげえ!

衛士達から驚きの声が上がる中、

「さあ、バルガス。当てて見ましょう。」

バートに促されたが、バルガスは恐縮してしまっている。

(おいおい‥‥国宝級の素材だろう。俺なんかに相応しくねえよ。)

そのことに。


 バートが「胴」の部分を着けてやっていると、

「なんだよ。案外、似合うじゃねえか!」

ドルクとバルクがにやにやしながら冷やかすと、

「う、うるせえよ‥」

横を向いて照れていたが、


 「バルガス! カッコイイよ!」

満面の笑みでクランに言われると、

「あ、ありがとうございます。」

素直に礼を言うしかなかった。



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