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~最終話 異世界国づくり後編➁~

(前回と同じです)いよいよ最終話です。これまで読んで頂いた方、ありがとうございます。自分でこのサイトで読み返すと「うまく書けたかな」とおもう話と「この話いらなくないか」という話もあります。そこでお願いですが、評価をいただけると助かります。次回作の参考にしたいのです。そして誤字脱字や段落がズレたところにあったり、修正も必要ですが、まずはこれまでありがとうございます。もう少しお付き合い下さい。

     ◇    ◇



 「クターク王国、ハマーン王太子殿下がご到着されました。」

褐色の肌の背の高い若者が、ロメル殿下と握手を交わしている。


 クターク王国は、我が国の南端、ラートル侯爵領の南側に国境を接する国で、僕らが独立するにあたって、隣接国として建国への同意を約束してくれていた国だ。

ラートル侯爵領と同様に、クターク王国も最近の日照りによって食糧作物の収穫量が落ち込んでいて、その支援をする見返りに建国に対する協力を約束してくれていたのだ。


 この大陸の国々では慣例として、独立・建国に当たっては、国境を接する2つ以上の国と教会の同意が必要とされており、我々がファーレン大公国として独立する条件は既に整っている。

しかし、クターク王国との交渉を担当した僕とラートル侯爵は、ハマーン王太子殿下をはじめとする王族の方々の人柄に感銘を受けて、建国後の正式国交をお願いしていたのだ。


 だからと言う訳ではないが、古代竜との闘いという国の一大事に付け込んで、侵略も視野に入れた諜報活動のために間者を送り込んで来たような国々とは、今後の国交は白紙と考えている。


 そんな国の一つ、ボルドン帝国の国賓がナーザリ公爵だった。

「我がボルドン帝国は、周辺国を併合しながら領土を拡大し、300年以上の歴史を持つ。第14代国王の‥‥」

自国は伝統ある大国だ、ということを主張したいらしい。


 しかし、あまりマウントを取らせたままにしておいて、舐められて侵攻されたりしても面倒くさい。そのような国の抑止力になるように、活用しようと思ったものがある。

古代竜だ。


 竜種のウロコは、軽量だが鉄より硬い。強靭であるが、しなやかさも併せ持ち、鎧や防具の素材としては最高級の素材になるが、竜の格によっては国宝クラスの貴重品でもあるようだ。

国賓には、これを記念品として持ち帰ってもらうことにして、抑止効果として伝わることを期待した。


 しかしナーザリ公爵は、自国間者の「古代竜を討伐した」との報告が、にわかには信じられなかったらしく、

「古代竜について、きちんとした知識はお持ちなのか?」などと僕に聞いて来ている。

どうやら、ぽっと出の新興国が古代竜を倒せるはずはない。亜竜か何かを倒して「古代竜を倒した」と勘違いしている、と思ったようだ。


 「それならば、ナーザリ公爵様に、鑑定をお願い致しましょう。」

ということになった。


 ナーザリ公爵曰く、

・古代竜の一番の特徴は、そのウロコである。青銅色に輝くウロコの美しさは、特筆すべきものと言われている。これは、鎧などの防具には最高の素材だが、素材自体が国宝級の品であるため、防具での使用は現実的でない。

・また、骨も貴重素材であり、こちらは美術・工芸品の素材となる。宝石と同等の価値があるため、偽物が多い。しかし、深い漆黒の輝きは他に類を見ない物である。

その他にも、血液も貴重素材だそうだが、焼けてしまったので残っていなかった。


 「骨格を解体している現場をお見せしたいのですが、まずはウロコをご覧いただくようにします。」

僕は、来賓を集めた貴賓室でウロコを見て頂くことにした。



 「すみません、ユウ様。遅くなりました。ウロコをお持ちしましたけど、加工の途中なんで、親方に、またすぐ持って帰って来いって言われてます。」

ドワーフ工房の若手が、湾曲した板のような物を抱えてきた。それを僕に手渡すと、「あ、あとこれもですね。」と言いながら、布地の包みを渡してくれた。


 テーブルに置かれたのは、反りのある細長い楕円形の板、磨かれた古代竜のウロコだった。

「こ、これは‥‥」

ナーザリ公爵は、言葉を失っている、

「青銅色では、無いですね。公爵様がおっしゃっていた古代竜とは、違うのでしょうか?」

しかし、ナーザリは、驚きのあまり言葉を失ってしまったという感じだ。


 「こちらの方は、先程のご説明に近い感じですね。」

布包みが解かれると、漆黒の棒状のものが出て来た。古代竜の骨だ。僕が現世で見た紫檀したん黒檀こくたんと言ったいわゆる銘木めいぼくのような艶を持っていた。


 「しゃ、赤銅色のウロコを持つものも、‥‥稀に存在すると聞いている。」

「あ、本当だ。そう言えば赤銅色ですね。戦っているときは、「赤っぽい」としか思いませんでしたが、磨くと綺麗なものですね。」

それを聞いたナーザリ公爵は、僕の顔をまじまじと見つめて来た。

僕はわざわざ「戦っているとき」という言い方をして、ナーザリ公爵の反応を確認したのだ。


 「こ、古代竜には違いないようだ‥‥み、見事なウロコである。」

平静を保っているが、ナーザリ公爵は動揺を隠せないようだった。


 「国賓の方には、このウロコと骨を記念にお持ち帰り頂こうと考えています。」

僕の言葉に、

「なに?! ただでか?! いや、無償でで、あるか?!」

強く反応してきた。

恐らくこのウロコが、大変貴重なもので、かつ高価であることが推測された。

そしてこの古代竜が、本当に危険な敵であったということも改めて確認出来た。


    ◇


 「クラン陛下が、おいでになったぞ。」

「ということは、ご一緒に‥‥」

城の使用人やメイド達が騒いでいる。


 ミリア様!

 ミリア様がいらっしゃったぞ!

 お久しぶりです。お元気でしたか!?

ミリアの姿を見つけた途端に、皆、大騒ぎになっている。


 それに対して、

「ごきげんよう。みんな元気そうで何よりね。」

しずしずと挨拶を返すミリアに、

「おい、ミリア様がおかしいぞ!?」

「お腹でも痛いんじゃないか?」

「誰か、薬師を呼んで来い!」

「俺が呼んできます!」


 それを見たクラン王が、

「ミリア、その‥‥慣れないことは、止めた方が良いんじゃないかな?」

遠慮がちに進言した。

「えっ!? な、何を言っておられますの、クラン様、私はいつでもこのように‥‥」

慌てているミリアに、


 「ミリア様、お体の具合が優れないとか? 皆、心配しております。」

なじみのメイド達が、心配顔で駆け寄って来た。


 「もーっ! 分かったわよ! 私はいつも通り元気よーっ!」

「もーっ」と、口を尖らせているミリアに、

「僕は、いつもの君が、可愛らしくていいと思う。」

クランが少し照れながら、耳打ちすると、

「えっ‥、クラン様がそうおっしゃるなら‥‥」

とたんに耳まで赤くして照れているミリアだった。



 「さて、クラン陛下、ミリア様。そろそろ始まりますよ。」

開国式の前夜祭のため、僕らは街の中の運河に来ていた。夕暮れせまる運河には、準備を済ませた多くの船が待機していた。

もうすぐ前夜祭オープニングの儀式が始まる。それを待つ民衆の興奮が僕らまで伝わって来ていた。


 ♪ ♪ ♪

軽快な音楽が始まると、それを合図にする様にスポットライトが点灯し、運河に面した舞台が浮かび上がった。


  うおーっ!!

 キャーッ!!


 途端に、歓声が湧き上がる。

舞台中心に立つ人影が、ミクが声を上げた。

「みんな、明日はいよいよ開国だよ! 今夜は楽しもうねーっ!!」

その声を合図に、リリィとヴィーが両側から飛び出すと観客の興奮は頂点に達した。


 ♪ ♪♪ ♪

ミクの歌声に合わせてリリィとヴィーが、しなやかに舞い踊る。


 観客が手拍子をしながら、

「ねえ、踊ってる2人、前からキレイだったけど、ますますキレイになってない?!」

「ホントだよね! 」


 興奮して騒いでいるのは、観客ばかりではなかった。音楽に乗って、運河の周りではオレンジ色の光が、そして運河の水面では青い光が、賑やかに踊りだした。

それに気づいたミクが、

「地精霊さん! 水精さん! 舟に捧げものが積んであるから、舟に乗って!」


 ミクに促され地精霊と水精が、踊りながら待機していた舟に乗り込んで行く。舟には新鮮な野菜や果物、そして酒が積んであった。

精霊たちが乗り込むと船内が、ぼうっ、と光り出した。


 「よし! 出発だ!」

ヴォルフの掛け声と共に、今度は待機していた多くの舟の船体が、様々な色の光に耀き出した。

以前ロメル殿下の婚礼式典で使ったイルミネーションを舟体に施したのだ。


 「まるで、水上○レクトリカルパレードだね。」

曲を終えたミクが、つぶやいてから大きく息を吸い込んで、

「ここで皆様にお知らせがあります!! ミリア姫様がクラン国王陛下とご婚約されましたーっ!!」

スポットライトが2人を乗せた舟を照らした。


 うわーっ!!

 おめでとうございます!

 ミリア姫様―っ!

 クラン陛下―っ!

 運河の両側の大歓声の中を、2人を乗せた舟は進んだ。

当初の予定にはなかったが、クラン王とミリア姫には前夜祭の盛り上げのために一役買ってもらうことにしたのだ。


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