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~最終話 異世界国づくり後編①~

いよいよ最終話です。これまで読んで頂いた方、ありがとうございます。自分でこのサイトで読み返すと「うまく書けたかな」とおもう話と「この話いらなくないか」という話もあります。そこでお願いですが、評価をいただけると助かります。次回作の参考にしたいのです。そして誤字脱字や段落がズレたところにあったり、修正も必要ですが、まずはこれまでありがとうございます。もう少しお付き合い下さい。


   ◇   ◇


 「なあ、ヴィー。この頃ノワがいつも一緒にいるけど、アヴェーラ様やラング殿下は、淋しがっていないのか?」

「私もそう思って、アヴェーラ様にお預けしようとしたですが、ノワが私から離れないのです。」

教会の大司教様から預かっている「闇ヒョウ」のノワは、子猫のような見た目の聖獣だ。

普段は子猫の様に小さく大人しくすることで力を貯めている。いざというときは黒ヒョウの姿で魔を払う。可愛くて頼りになるのだ。

今は子猫の姿で、ヴィーの膝の上でスヤスヤと寝ている。

「何か‥私の事を心配しているみたいなのです。」


 先日、古代竜との戦いで瀕死の重傷を負った僕を助けるために、ヴィーは「生命力いのちのちから」を僕に分けた。その秘術を施してくれた大精霊セレス様が言うには、「ヴィーは、自らの望み通り、ユウと同じ、只人と同じ寿命となった。」そうだ。

しかし僕は、ある理由でヴィーのことをあまり心配していなかったのだが、ノワはヴィーの生命力が大きく減ったことを感じて心配しているのではないか、ということだ。


 「僕も最初は心配したんだけどね‥‥でも‥‥」

「なんですか?」

言葉を詰まらせた僕の顔を覗き込むヴィーに、

「なんかこの頃ヴィーが‥‥す、すごくきれいになって‥、でもそれは、みんなも言っているから、気のせいじゃないと思うんだ。」

「ええっ? 」

ヴィーは赤くなった頬を押さえながら照れている。

「そうなのですか?」


 実際ヴィーはこの頃、すごく艶っぽいというか、とにかくきれいになっていて、このことは城内でも噂になっていた。

「さぞかし仲睦まじいのであろうな。」

アヴェーラ公爵にも冷やかされていたのだ。


 「ユウ様と同じ時間を生きられることで、本当に夫婦になれた気がするです。」

ヴィーは、そう言って微笑んだ。

その喜びがヴィーを綺麗にしているのなら、僕は本当に幸せ者だ。


 しかし、ノワがそばにいてくれた事で、僕が助かっていたことが後から分かった。



 「いよいよ開国式ですね。」

開国式の準備を進める僕の元を、ファーレ大教会の大司教様が訪ねてきた。

僕に「魔国の怪しい動きについての情報を聞かせたい」というのだ。


 その話を聞いた僕は、ロメル殿下を同席させて良いか尋ねたが、「まずは君だけに情報を入れたい」という事だった。

「それなら2人だけで話ができる場所を用意します。」として、大司教様に少しお待ち頂くことにした。

しかし、僕はこの時、以前感じた事がある「ある不快な違和感」を感じていた。


 「すみません、お待たせしました。部屋に案内します。」

僕が用意したのは窓の無いテーブル1つだけの狭い部屋だったが、大司教は「この部屋で良い」とのことだった。



 「ヤマダユウ殿、今日伺ったのは他でもない。魔国のことで私に神託があったのだ。これを是非とも伝えねばならないと思って、会いに来たのだ。」

「神託‥‥ですか!?」

驚く僕に、

「ああ、大切な話だから他の者に聞かれてはまずい。念のために、耳を貸してくれないか?」

僕は、一瞬考えてから、

「あ、はい。わかりました。ところで、大司教様、お預かりしている闇ヒョウのクロが、大司教様に会いたがっていますよ。」

「ああ、‥ク、クロか‥。この後、会って行こう。それよりも耳を‥」


 身を寄せて来る大司教に対して、僕は身を引いて懐から拳銃グロックを取り出して、

「人の体を操れるのか? それとも化けられるのか? ‥‥ゾーディアック!」


 「な、何を言うのだ?! わ、私は、大司教だぞ!」

大司教が慌てているが、

「ヴォルフ! 来てくれ!」

「はい!  只今!」

ヴォルフは入って来ると直ぐにドアを閉め、出口を塞ぐようにドアの前に立った。


 「ヤマダユウ殿、失礼であるぞ。私は大司教だ。ゾーディアックなどという者は知らん。」

大司教は呆れるように言ってからヴォルフを見て、

「ヴォルフ君とやら、君の主人は、どうしまったんだね?」

ヴォルフは、大司教の様子を伺うように見て、

「でも大司教様がおかしいのは確かです。大司教様からお預かりした闇ヒョウの名前は、クロではありません。」


 「なにぃ!?」

驚きの声を上げてから、大司教がユウを睨んだ。

「貴様‥‥、なぜ分かった。」

問われたユウは、先程から右腕を押さえている。

「前に、お前が視察団に紛れてやって来た時もそうだった。お前が近づくと、腕がズキズキと疼くんだ。だからヴォルフを呼んでおいた。」


 「くっ‥」

大司教がドアの方を横目で見た途端、

ダッ、と駆け出し、

ドアの前に立ち塞がるヴォルフに体当たりすると、はね返されてよろけた。その体をヴォルフが支えようとした時、

「ヴォルフ! 耳! 耳を塞げ!」

僕の声にヴォルフは、大司教に添えようとした手を引っ込めて、慌てて自分の耳を押さえた。


 その瞬間、

 シュッ

よろける大司教の耳から飛び出した何かが、耳を塞いだヴォルフの手に当たって床に落ちた。

よく見ると、小指程度の大きさの、小さな黒いヘビがうごめいている。


 バシャ!

僕はポケットから取り出したビンの液体を、そのヘビにかけた。


 「今度こそ、終わりにするぞ。 ゾーディアック!」

火を付けると、

 ボワッ!

僕がかけた液体、ガソリンが、勢い良く燃え上がった。

 グエエーッ!!

小さな体が発したとは思えない様な、異様な叫び声をあげながらのたうち回り、ヘビは燃え尽きた。



 古代竜の死体がある採掘場跡で、ウロコや骨を素材として採取するために解体作業を行っているが、その最中にゾーディアックのものと思われる焼死体も見つかっていた。それによって僕は、ゾーディアックとの戦いは終わったものと思っていた。

この小さなヘビが本体なのであれば、闇に紛れて近づいて僕の体を乗っ取ることも出来たはずだが、ノワが、それを防いでくれたのだろう。


 聖獣のノワがいつもそばに居てくれたお陰で、この小さな魔物は僕に近づけなかったのだろう。


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