余談ですが ~リリィにはメガネが似合うことが判明しました~
完結を機会に誤字脱字・てにおは修正をしています。
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「リリィ、リリィ。ちょっと来てみて。」
「はーい、何でしょうか?」
僕は、仕事の合間に代官所の執務室にリリィを呼んだ。洪水前に現世日本で、リリィのために買ってきたものが、渡せずにいたのだ。
「これをかけてみて」
「何ですか、これ?」
「メガネだよ。こっちの世界でも貴族は使ってるかも‥‥。ちょっとじっとして、こう使うんだ。」
僕は、リリィに、現世日本で買ってきたセルフレームのメガネをかけてやりながら、
「リリィは、目が悪いんだよね? 慣れるまでちょっとクラクラするかもしれないけど、これで良く見えると思うけど…、どうかな?」
「‥‥。」
「もし、今かけているヤツが、目に合わなかったら、3段階「度」を変えて買ってきてあるから、交換してみて。」
「‥‥。」
無言のリリィに、僕は不安になって声をかけた。
「…リリィ?」
「‥‥すごい! すごいです。ごユウ様!」
リリィは、執務室をまじまじと見渡して興奮していた。そして視線を僕に移そうとして「えっ?」と声を上げてよろけた。
僕は慌てて、手を取ってよろけるリリィを支えた。
「あ、ありがとうございます。…ユウ様って、こんなお顔だったんですね。」
切れ長の目を大きく見開いたリリィに、まじまじと見つめられると照れてしまう。
「なに見つめ合ってるですか?」
唇を尖らせて、ヴィーが顔をのぞかせた。
「あのね、ヴィー。ユウ様が、私の目を良く見えるようにしてくださったの。」
リリィは、執務室に入ってきたヴィーに歩み寄ると、その頬に手を当てて、
「ヴィー、やっぱりあなた、すごく可愛い‥‥」
「えっ、‥‥何を今さら…です。」
ヴィーは、少し照れて横を向いている。
「良く見せて。瞳が‥‥とってもキレイ、髪もサラサラで‥‥っ。」
リリィは、声を詰まらせて涙ぐんでいる。
「あきらめていたの‥‥、物や景色が、少し離れるとぼうっとしか見えなくて‥‥、親にも、「目が悪い家系だから仕方ない」って言われていたし、それが、こんな日が来るなんて!」
「ご主人様!ありがとうございます。」
リリィは、振り返って僕に深々と頭を下げた。
「良かったね。で、僕はどんな感じ?」
「はい、カワイ‥‥、いえ、カッコイイ‥‥です。ご主人様はカッコイイです。」
2人のやり取りを横目で見ていたヴィーは、
(あーあ、です。でもしょうがないのです。ご主人様は、カッコイイというよりは、カワイイのです。)
そして愛想笑いでごまかしているリリィに、
「あっ、リリィ。ヴォルフは庭にいたですよ。」
「えっ? べ…別にヴォルフに用事はないですけど…、あ、そういえば、私も庭に用事があるので行ってみます。」
いそいそと庭へ出ていくリリィの後ろ姿を、僕とヴィーは笑顔で見送った。