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~最終話・異世界国づくり前編⑥~

    ◇


 僕達、は少し仮眠を取るなど一休みしてから、アヴェーラ公爵の執務室を訪れた。


「我がグラント王国と、開国するファーレン大公国とは、これまで色々ありましたが、今後は協力して‥‥いや、我々がお世話になるばかりかもしれませんが‥‥。

アヴェーラ様、私は、ミリア姫を妃に迎えたく存じます。どうかご同意いただけませんか。」


 クラン王子が、緊張気味に挨拶すると、

「気ままな‥‥、おおよそ王妃になど、ふさわしくない娘に育ててしまいましたが、貴方の助けになる‥‥いや、必死で助けになろうとするでしょう。どうか娘をよろしくお願いいたします。」

アヴェーラは、優しい笑顔で答えた。


    ◇    ◇



 「私がこのような形で殿下にお会いする。これだけで私の意図は、ご理解いただけると存じますが。」

クラン王子の戴冠式を数日後に控えて、ロメル殿下の元へ、ベリル侯爵が訪れた。


「ふうむ、ベリル侯爵殿。はっきりと言ってくれないだろうか。貴方の意図は掴みかねるのだ。」

ロメルが首を傾げると、

「殿下も、お人が悪い。では申し上げましょう。グラント王国側に付いていても、先が無いと思ったのです。これから先の事を考えたなら、私はファーレン大公国と行動を共にしたいと思います。」

ベリル侯爵は胸に手を当ててうやうやしく答えた。


 「ユウ、君はどう思う。」

ベリル侯爵の斜め前に立っていた僕に問われたので、

「参考にお伺いしたいのですが、ベリル公爵様がグラント王国を離反する場合に、後に続くと思われる領主貴族の方はいらっしゃいますか?」

僕が口を出すと、睨む様に一瞥した後で、

「当然おります。伯爵が1人、子爵が2人、男爵の数は‥‥よろしいですよね。」

僕は(なんだ、そんなもんか‥)と思ったが、

「一大勢力ですね!」

と感心して見せた。


 「しかし、感心しないね。戴冠式の直前にこのような動きをするのは、両国間に混乱を招くとは思わないのかね。」

ロメルの言葉に、

「それこそ、ファーレン大公国にとっては、好都合なのではないですか?」

イヤな含み笑いをして見せた。


 「しかしね、ベリル侯爵。クラン王子とは、互いに国を繁栄させて行くための約束事が出来ていてね。」

「えっ!?」

ギョッとしたような表情のベリルに、

「ユウ、録画した画像は見られるかな?」

「はい、只今!」


 僕がいそいそと、モニターを準備している間に、

「ベリル侯爵、貴方は、グラント王国から離反した私達を「思い違いの少数派」と言っていましたね。そして「古代竜に撃ち滅ぼされるに違いない」と思っていた。しかし、予想に反して我らは勝った。そこで、今度は方向転換して我らに組しようとした。」

「な、何をおっしゃいますか?! だいたい何を根拠にそのような事を‥‥」


 「根拠というか、証拠なんですけどね。」

僕が、隠しカメラで影の手に録画させていた、侯爵の城での密談の様子を見せると、先程ロメルが言ったセリフは、ビデオにしっかりと残されていた。


 「先程の会話も、こんな感じで記録に残っています。」

先程の会話の録画も見せた。


 「な、なんと‥‥。いや待て! だ、だいたい、そのような‥ま、魔道の作り物など、誰が信じるものですか?!」

慌てて立ち上がったがベリル侯爵は、まだ余裕がありそうなので、

「王太后様は、信じて下さいますよ。何度も見られて‥‥というか、ご自分が一番やられていますからね。」

「な、王太后様が‥‥」

がっくりと膝を落とした。


 ロメルが座り込んだ伯爵に歩み寄って、

「貴方は、私達を少数派と言ったが、我らには、命を賭して誓い合った絆がある。仲間はしっかりと選ばせてもらうつもりだ。」


 「わ、私を‥‥どうするおつもりか?」

言葉を絞り出すようにしたベリル侯爵に、僕がしゃがみ込んで目線を合わせて、

「クラン王子を助けてあげて下さい。戴冠式等の目立つ場で、それを表明して下さい。」

「共に離反しようとした領主達を裏切れというのか?」

下を向いてイヤそうにしているので、

「伯爵と子爵でしょう? 侯爵様の気が変わったのなら、仕方ないじゃないですか?」

「きっ、貴様ぁ‥‥」

僕を睨んで来た。


 「ベリル侯爵、君に選択の余地は無いのだよ。それに私達は君を罰しようともしていない。この話は無かったことにしようと言っているのだよ。その上で頼んでいるのだ。クラン王子を助けてもらえないか。」

ロメルが見下ろして言い放つと、ベリル侯爵は大きなため息をついてへたり込んだ。


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