~最終話・異世界国づくり前編①~
すみません、PCトラブルにより連載ペースが少し遅れています。
連載もゴールが近くなってきましたので、最後まで頑張りますので、
よろしくお願いします。
◇ ◇
「バルガス殿、本当にありがとうございました。」
「いやぁ、礼を言って頂けるなら俺なんかより、俺を派遣したクラン王子に言って頂けませんか?」
ミリア姫に礼を言われて、バルガスが頭をかいて照れている。
「研鑽したようですね。」
バートにも声を掛けられると、
「いや、ユウ様に会って目が覚めたというか‥‥。それに、王宮警備隊長をクビになった俺をクラン王子が推し戻して下さって、王子に恥をかかせる訳にはいかねえんで、必死に頑張りました。」
魔物達との戦闘が終わると、各領地で構成した連合軍の騎士達は、各々の帰途に着き始めた。
中でもグラント王国・王宮警備隊の騎士達は、盛大な見送りを受けていた。
「バルガス殿、近いうちにクラン王子様にお礼を申し上げに伺います。」
気を付けてお帰り下さい!
ありがとうございました!
見送りに集まった者達の先頭で手を振るミリアに見送られて、バルガスは考えていた。
(きれいで、お優しくて、俺みたいな荒くれ者にまで丁寧に振舞える‥‥こんなお姫様がうちの‥‥いや、今は目の前の戴冠式の事だけ考えよう。)
バルガスの騎馬隊を見送ると、ミリアが僕に声をかけて来た。
「私ね、ユウの所へ嫁ぐのは止めることにしたから。」
「えっ、そうなんですか?」
驚いたが、ホッとした笑顔だったらしく、
「あなたねぇ、少しは残念そうにしなさいよ!」
「えっ、あ‥すいません。」
「まったくもう‥‥。グラント王宮に行く時は、付き合ってもらいますからね。」
「えっ、はい。分かりました。」
ミリア姫は、怒った口調と裏腹に、優しい笑顔をしていたので、
「じゃあ僕が、姫様の顔が立つような、お礼の品を用意しておきます。」
僕は、うやうやしくお辞儀をした。
「ところでユウ。リリィの姿が見えないんだけど。それと、領地に帰る人達にお弁当を配るウルド直売所が来ているけど、ミクは来ていないのね?」
「実は、リリィとミクは大事なお勤めがありまして‥‥。」
「えっ? お勤め?」
リリィとミクはその日、セレスの泉に出かけていた。
◇
「うわっ、冷た! ゾラ、これは思ったよりキツイぞ。」
「そうですね。水着に誘われて来ちゃいましたけど、結構きついですね。」
ズボンを膝上までまくり上げて、上半身裸のヴォルフとゾラが泉に足を入れた途端、震えあがった。
「ゾラくーん、頑張ってね!」
「ヴォルフ、ごめんなさい。頑張って。」
水着姿で焚火にあたるミクとリリィの声援を受けると、
「お、おう‥、任せろ。」
2人とも作り笑顔で答えている。
「あら、今度はお兄さん達が遊んでくれるらしいわよ。良かったわねぇ、テレス!」
泉の主であり、水の大精霊・セレスが満面の笑みで見下ろすのは、笑顔ではしゃぐ幼女の精霊・テレスだ。
先日の魔物との対戦では、古代竜を打ち倒したものの、ユウが瀕死の大やけどを負った。
死を待つばかりだったユウに大精霊テレスは、ヴィーの生命力を分け与えるという大秘術でユウの命を救った。
しかし、時間がない中で説明をせずに「ヴィーの命を使う」としたセレスに、ミクとリリィが猛反発して暴言を吐いたのだ。
「お詫びがしたい」とした2人に、セレスは「泉に来なさい。」と伝えた。
セレスが2人に罰として用意したのは、冷水が湧き出るセレスの泉で、テレスの遊び相手になってもらう事だった。
結果的に、それぞれのパートナーまで被害が及ぶこととなったのだが。
ヴォルフとゾラが岸で見ていた時は、水着姿のリリィとミクが相手にしているのは、子供がはしゃぐ「気配」でしかなかった。不思議な思いでそれを見ていた2人だったが、自ら泉に足を入れた途端に、満面の笑みで待ち受ける幼女の姿が目に入ったのだ。
「うわっ、冷てぇ!」
「勘弁してくれぇ!」
水をかけると、屈強な大男が悲鳴を上げて逃げ回る。
それを面白がって、テレスがキャッキャと大はしゃぎで2人を追い回している。
「はぁ‥‥。とんだ罰ゲームになっちゃったわね。」
「でも、これでセレス様にお許し頂けるなら、仕方ないですね。」
ミクとリリィが、泉の中を逃げ回る2人を見ながら、ため息をついていると、
「ミク! もう駄目だ、変わってくれーっ!」
ゾラとヴォルフが悲鳴を上げる。
「ええっ!? もう少し頑張ってよ! あんた達、大戦の英雄でしょう!」
「そうです。もう少しお願いします!」
それを見てセレスがクスクスと笑っている。
いつも静かなセレスの泉が、今日は賑やかだった。