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~異世界で最後の戦いに臨みます⑤~

    ◇   


 「古代竜を撃退する作戦を考えたいと思います。先ず、ドラゴンについて教えてください。」

僕はロメル殿下とバートさんから、ドラゴンの事を教えてもらっていた。


 まずバートが口を開いた。

「では私から、

私と殿下が対したのは、アースドラゴンでしたが、腹の部分はウロコが薄いことが分かっているためか、戦闘中は中々腹を見せません。今回、偵察隊の魔道具での攻撃は、上手く不意を付けたものでしょう。」

「そうだね。僕とバートが闘いの中で確認できたことがいくつかあるが、まずはウロコの強度だが、腹以外は、鋼鉄よりも硬い上、柔軟性もある。僕らの剣でも全く貫けなかったよ。」

「そ、そうですか‥‥」

僕は、ため息をついた。

古代竜は、腹も含めた全身が強靭なウロコで覆われていたのだ。


 「ただし、ユウにぜひ伝えておきたい事がある。そんなドラゴンでも、戦いの中で弱点を作ることが出来るんだ。」

「ええっ?」

驚く僕に、バートも頷いている。


 「ドラゴンのウロコは、目というか、方向性を持って重なっているのは、ユウも分かるな。」

「そうですね。頭の方から尻尾の方に向かって、一方向に重なっている‥‥」

「それが、体を大きく曲げた時、どうなると思う。」

僕は少しの間、首を傾げてから、

「ウロコが逆立つ?‥‥隙間が出来る!?」

「そうだ! そこを狙うんだ。」

「勇敢な衛士達が、自らを犠牲にすることを厭わず囮になってくれて、偶然だがドラゴンが大きく首を曲げる場面を作ってくれた。その瞬間、ウロコが逆立って中の皮膚が見えたんだ。

僕は咄嗟に、そこに剣を突き立てた。剣は深く刺さって、ドラゴンに深手を負わせることが出来た。」

僕は真剣に聞き入った。この人達は肉弾戦でこれをやってきたのだ。どれ程の勇気を絞り出し、どれ程の犠牲を払ったのだろうか。

そんなことを考えて唇を噛みしめるユウの顔を、バートは見つめながら頷いていた。


 「一気にとどめを刺したかったのですが、手負いのドラゴンが凄まじい暴れ方をしまして‥‥」

「僕とバートは、それ以上味方の犠牲が出ないように、とどめを刺す事よりも味方の救出を優先したんだ。

しかし、魔物の数がかなり減った状態で、ドラゴンに深手を負わせた。

魔物の軍勢は撤退を余儀なくされ、我々の勝利となったんだ。」



 話を聞き終えて大きくため息をついた僕に、

「ユウ、僕はこの経験から、古代竜の話を聞いた時から考えていた作戦があるんだ。」

「えっ?聞かせてください!」

「しかし‥‥話を聞けば、君は僕を軽蔑するだろうと思う‥‥」

遠慮がちなロメルに、僕の頭にあることが浮かんだが、

「聞かせて下さい。どんな話でも‥‥」


 「分かった。その前にある場所を一緒に見てくれ。その方が分かり易いんだ。」

僕達は城の外に場所を移した。


   ◇


 「ここは何があったのですか? 変わった所ですね。」

僕が案内されたのは、ファーレの郊外の、廃坑か採掘場跡のような場所だ。

切り立った斜面に洞窟の様な穴が幾つも開いている。


「ここは銀の採掘場だったんだ。ここを古代竜との決戦の場に使えないかと考えているんだ。」

気遣う様なロメルの表情に僕は確信した。


「ヴィーを囮にして、ドラゴンと戦うのですね。」


  ◇


 「許さん、許さんぞ! 貴様ら、ヴィーを守ると言ったではないか!」

「確実に古代竜を仕留めることが、ヴィーを守ることに繋がります。」

城で作戦の概要を僕とロメル殿下から伝えられると、アヴェーラ公爵は激昂した。


 「ユウ、貴様は本当にそれで良いのか?!」

「はい。僕とヴィーはあの日‥、皆さんがヴィーを守って戦うと言ってくれたあの日、皆さんの役に立つなら、なんでもしようと二人で決めました。例え危険が伴っても‥‥。」


 「それに、我々が感情だけで動いている訳ではない事を、下の者に示さなければなりません。」

ロメルに諭すように言われると、

「くっ‥‥」

アヴェーラは、言葉を飲み込む様に下を向いてから顔を上げると、

「失敗したら‥、ただではおかん!」 


立ち上がって部屋を出ていった。



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