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~異世界で国を興します⑤~

    ◇


 公爵邸に戻ると、ロメル殿下達が戻って来ていた。連絡を受けて途中で引き返してきたようだ。

「ユウ、怪我はないか?!」

駆け寄って来たロメル殿下に、

「大丈夫です。強いて言えば、慌てて伏せた時に手首をチョットねん挫したかもしれません。」

僕が、手首を押さえながら笑顔で答えると、

「そうか。その程度で良かった。良かったのだが‥‥」

「どうしたのですか?」


 ロメルは少し思案して、

「先日、僕らはカント公爵をかなり挑発したよな。」

「そうですね。殿下が挑発的だったので、僕も乗っかりましたけど。おかげでこんな事になりましたが‥‥」

「君を危険な目に合わせてすまん。しかし、僕は前から少し考えていたんだ。国を二つに割る方法を‥‥王家との戦は回避しつつ双王国を誕生させる方法を‥‥。」



 「シアン、カント公爵は、今どんな状況か分かるか?」

ロメルに呼ばれると、シュッ、と現れたシアンが、

「今は半焼した自分の王都邸に居らっしゃいますが、荷物をまとめておりましたので盗聴してみたところ、‥‥王宮へ転がり込むつもりの様です。」


 ロメルは、目を閉じて少し思案してから小さく頷いた。

「カント公爵が王宮に行くなら‥‥よし、一気に決めてしまおう! 「僕らは、カント公爵との争いによって独立せざるを得なくなった」という筋書きを造る。」

「えっ、ちょっと強引じゃないですか?」

「何を言っているんだ。君を殺そうとして怪我までさせた相手だ。僕が許すわけが無いだろう! 

罠に嵌めて‥僕らが独立する役に立ってもらった上で‥‥陥れてやろうじゃやないか。」

遠くを睨む様な顔で言い放った。


 そしてロメルは、夕暮れ迫るその日のうちに各地へ連絡を送った。

「決起の時が来た。王都へ結集されたい。」と。



      ◇  ◇


 「思ったより早く動くのだな。アヴェーラ様は賛成されたのか?」

ロメルの招集から5日後、王都公爵邸に到着早々、ロメル殿下に尋ねているのは、最後に到着したラートル侯爵だ。

「母上に話をしたら、「私が王太后に話をしておいた方が良いだろうな。」と仰ってこちらへ向かっています。「謁見の申し込みはしておけ。」とも。」

「そうか。」


 王都へは、ベレン伯爵、ラズロー伯爵、フリード子爵、スート子爵代理のワグル、レガン子爵が既に集結していた。


 ロメルは、志を共にする領主貴族達を王都に集めるにあたり、「有事の戦力は、ファーレン公爵家が確保する。少数の護衛のみで、早急に結集されたい。」という連絡を送っていた。

好機を逸しないことを優先して、迅速に結集することを求めたのだ。

そしてファーレン公爵家からは選りすぐりの衛士500騎と、ユウの魔道騎士団が王都に集結していた。


各地の領主の参集を確認したロメルは、王宮・王太后に対して、謁見を要請した。


 ファーレン公爵家公太子であれば、謁見を要請するまでもなく王宮を訪ねることは容易だが、ロメルが各地の領主と連名での謁見を申し込んだことを訝しんだ王宮は、これを断ってきた。「突然無礼である」と。


 しかし翌日、王都に到着したアヴェーラ公爵から話を聞いた王太后が態度を一変させた。「聞いておいた万が良い話のようだ。」と。

ロメルの元に、謁見を了承する連絡をしてきたのだ。


     ◇


 その王宮には、シアンの報告のとおり数日前からカント公爵が転がり込んで来ていた。


 ユウの「反撃魔法」によって自らの王都邸が半焼してしまったため、自分の事を棚に上げてヤマダユウの「悪行」を訴えつつ、王宮に転がり込んできたのだ。

事情を聞いた王太后バーシアは、幾つかの想いを巡らせた上で、

「大変でしたね。我が家と思ってくつろがれよ。」と、カント公爵を厚遇することにした。


 「ありがたい。さすが王太后様。」と、相好を崩す公爵の顔を見ながら王太后は想いを巡らせていた。

(近隣の領主達と徒党を組んでいるファーレン公爵家が、行動を起こすのはもっと先だと思っていたのに‥‥。この馬鹿がきっかけを造ってしまったようですね。‥‥。ロメルが各地の領主達に召集をかけたというではありませんか‥‥。

しかし王家の保身とクラン王子の将来のためなら‥‥、母は、あらゆる準備をしておかねばなりません‥‥。)


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