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~異世界で国を興します③~


    ◇


 「では我々は、お先に失礼します。」

「道中気を付けて。」

僕らは、伯爵領の衛士の隊列、そしてロメル殿下の一行が、王都公爵邸を後にするのを見送った。


 僕は事後処理のため残留することになり、同じく残ることになった伯爵領のドルー、ワレンと今後の事を相談していた。なお、僕の護衛のためにヴォルフと影の手が残ってくれていた。



 「えーと‥‥まだ行方が確認出来ていない衛士さんは、何人くらい居るんでしたっけ?」

「はい、あと7名の行方が掴めていません。王都の衛士達に追い立てられて、古城に逃げ込む途中ではぐれた者がいまして、まだ見つかっていない者がいます。」

「ふーむ、その人達を早く見つけましょう。」

「申し訳ありません。お世話になります。」

僕がワレン隊長とそんな話をしていた時だった。


 ドドド‥‥

庭から聞きなれた低い排気音が聞こえ、それが止むと、


 「来ちゃったのです。」

ヴィーが笑顔で顔を出し、続いてリリィが、

「すみません。ヴィーが、お手伝いがあるだろうから、行きたいって‥‥」

申し訳なさそうに顔を出した。


 なお、リリィは最近バイクの運転が出来る様になり、急ぎの使いの時にはヴォルフのバイクを使っていたので、中型のローライドタイプのバイクを買い与えていた。

リリィはレザーツナギの上からライダースジャケットを羽織り、ヴィーはいつものショートパンツに二―ソックスでお揃いのライダースジャケットだ。


 「うーん‥‥リリィに手伝ってもらうことはありそうだけど、ヴィーにはあるかなぁ。」

僕が首を傾げると、

「ヒドイです。ヒドイのです!」

ちょっと意地悪を言ってみたら、泣きべそをかいて嘆くのでなだめるのに苦労した。



 「ヤマダユウ様あてに、手紙が届いていますが‥‥。」

僕がヴィーをなだめていると、公爵邸の使用人が遠慮がちに手紙を持ってきた。

受け取って中身を確かめようとした時だった。


 「大変です! 門の前に酷い怪我をした人が倒れています! 恐らく‥‥伯爵領の衛士さんです!」

メイドが青ざめた表情で駆け込んできた。

「なにぃ!?」

ドルーとワレンが立ち上がった。


 果たして、

運び込まれたのは伯爵領の青年衛士だった。

衛士の制服を脱がせてみると、全身に打撲による痣があり、いわゆる「袋叩き」にされたことが想像された。

「ひどい、誰がこんな事を‥‥」

メイドが思わず声をあげた時、

「リリィ! ヴィー!」

「はいです!」

「直ぐに取り掛かります!」

僕の声掛けよりも早く、リリィとヴィーは上着を脱いで青年の手当ての準備を始めていた。



 2人が青年の手当てを初めてくれたのを見ながら、僕は届いた手紙を開けてみることにした。

『伯爵領の衛士7人を預かっている。1人返してやるが、残りを返して欲しければ、今日の夕方、4つの鐘に合わせて、奴らが立てこもった古城へ来い。』

手紙には、ただそれだけが書いてあった。



 「ユウ様、ワナです。 行ってはいけません!」

身支度を始めた僕にヴォルフとリリィが必死に訴える。

「ヴィー! 何してるのよ?! あなたも止めなさいよ!!」

ヴィーは黙って僕を見ている。


 「ユウ様、そうですぞ! お気持ちはありがたいですが、子爵であるユウ様と衛士達では命の重さが違いますぞ!」

その言葉に僕が振り返り、ドルーと向き合った。

「本当にそうでしょうか!? 命の重さは誰も皆、同じはずです!」

声をあげた僕の顔を、目に涙を浮かべながら、ヴィーが見上げた。


 「こうなってしまったら、ユウ様は何を言ってもダメなのです。私達はユウ様をいかにお守りするかを考えるだけなのです。」

僕はヴィーを抱きよせて髪を優しく撫でた。

「ありがとうヴィー。でも僕も無謀なことはしないつもりだ。そして今後、簡単に手を出されなくなる方法も考えてみたんだ。聞いてくれ。」


 僕は、ヴォルフ、ヴィー、リリィに影の手を加えて、作戦を伝えた。

そしてこの件を、帰途のロメル殿下にも至急伝えてもらうことにした。


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