表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

111/163

~異世界で仲間を増やしていきます⑧~


「皆さん、お待たせしました。舞を再開します。」

事情を聞いた僕が司会進行を務めた。

3人娘がステージに立つことが出来るのかと心配したが、3人とも目を少し腫らしているものの、決意に満ちた表情をしていた。


   ♪ ♪ ♪

 音楽が始まると、ミクの歌声もヴィーとリリィのダンスも、素晴らしいものだった。その同じ舞台の後ろで舞うシリアからは、淡い光が渦を巻きながら立ち上っている。

そして踊りながらヴィー達は、水精に呼びかけていた。


「水精さん達、力を貸して下さいです。「道」を造りたいです。ここからセレス様の泉へ繋がる道を‥‥」  

「ばあちゃんを‥」

「テレス様を‥」

「セレスの泉へ送る道を!!」


 次の瞬間、

バシャバシャ

激しくため池の水面が波打つと、

そこから虹が立ち上った。


「うわーっ!」

「すごい虹だ!」

「こんな鮮やかな虹は見たことが無いよ!」

観客が湧き立つ中、ため池から立ち上った鮮やかな虹は、ぐんぐん延びていく。虹はセレスの泉の方向に向かって伸びていた。


   ◇


 その頃、セレスの泉では、少女の姿に戻ってしまったセレスが一人で泣いていた。

『テレスが‥‥、ああ、私のかわいいテレスが‥‥』

悲しみのあまり、力が弱まってしまったのだろうか。セレスは、少女の姿に戻ったばかりか、今にも消え入りそうに見える。


 そんなセレスに、水の郷の方から何やら聞こえて来た。それは人の耳には、ピシャピシャ、という水音にしか聞こえないだろう。しかしセレスには水音に交じって声が聞こえていた。

『‥‥ツクッテル』

『ミチ‥ヲ‥ツクッテル』

『ヨベッテ、イッテル』

その声がどんどん大きくなっていく。

『ヨベッテ、イッテル!』


 声に振り向いたセレスが立ち上がると、鮮やかな虹がこちらに向かって伸びてくるのが見える。

その虹が泉に到達すると同時に、今度はミク達の声が聞こえて来た。


「セレス様、呼んで!」

「ばあちゃんを!」

「テレス様を!」

「「呼んで――っ!!」」


 目を閉じてそれを聞いていたセレスが、かっ、と目を見開いて叫んだ。

『テレス! 私のかわいいテレス!! 私のもとへ来て‥‥ここへ来てーっ!!』


 次の瞬間、

ヒュゴーッ!

バサバサッ!

「キャーッ!」

「すごい風!」

水の郷に物凄い突風が吹き荒れた。


「すごい風だったわね、お母さん。」

強風に揺れたテントの中で、テレスの遺体を庇う様に抱きしめていたリタは、風が止んでから、テレスの顔を見て驚いた。


「こんなに‥‥、こんなに笑っているようなお顔だったかしら?」

テレスの顔は、とても幸せそうに笑っているように見えた。


   ◇   ◇



 数日後、ファーレの「菓子工房ミク」のテラス席では、ミクの声掛けで集まったヴィーとリリィの3人がお茶を飲んでいた。

「気がかりなことがあるから」というミクに呼ばれた2人も、同じ思いを抱えていたのだ。


「ばあちゃん、ちゃんとテレス様の所へ行けたのかなぁ‥‥」

「私も気になっているです。泉に行ってみるですか?」

「でも行ってみて、もしも、テレス様がお一人で泣いていたらと思うと‥‥」

「そうなのよねー‥‥」

3人は大きくため息をついた。


 その時、店にやって来ていた客同士の会話が聞こえてきた。

「‥‥東部領に、「セレスの泉」っていうきれいな泉があるんだけどさ‥‥」

「!!」

思わず3人娘が、聞き耳を立てた。


「この前、行商の途中で休憩に寄ったんだけど、本当にきれいなところでさ。‥‥でも、そこでちょっと変な物を見ちまってさ‥‥」

「何だよ。何を見たっていうんだよ?」

「それが‥‥泉の上に、大きな光がフワフワ漂っていて、その後を追いかける小さな光も見たんだよ。」

「ヤバそうな物なのか?」

「それが、良く分かんねえけど。何だかとっても暖かい感じの光でさ。2つの光を見ていると、何だか‥‥幸せな気分になるんだよなぁ。」

「へーっ‥‥」



「ふふふ‥‥」

「良かったのです。」

3人娘は、テーブルの上で互いの手を握り合って微笑んだ。


「近いうちに会いに行こう。セレス様とばあちゃんに。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ