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~異世界で代官になったので、領地を経営します➁~

完結を機会に誤字脱字・てにおは修正をしています。


       ◇    ◇


 翌日、僕はヴィーとヴォルフを連れて森に入り、少し山にも登ってみることにした。目的は新たな食料資源の発掘と、小高いところから領内を見渡したいと思ったのだ。


 「この木は、秋になると実がなるです。そのまま食べると渋いけど、干しておくと甘くなるです。」

「この草は、さっき見た薬草とよく似ているけど、違うです。」

 森の中をヴィーの説明を聞きながら歩く。 スマホでの記録も忘れない。

 直ぐに収穫できるものは、ヴォルフに帰り道で収穫してもらうことにしよう。などと考えていると先を歩くヴィーが何かに驚いて立ち止まった。


 「キャー!「森ダコ」です。気を付けるです。」

 ヴィーが指さす先を見ると、木の枝にタコが絡みついている。

 (タコ‥‥だよなぁ、森の中だけど。)

 元の世界で海にいたタコが、森の木の上にいる。僕が不思議そうな顔をしていると、ヴィーが説明してくれた。

 森ダコは普段は木の実や虫などを食べているが、繁殖期が近くなると人や獣の血を吸うそうだ。木の上から落ちてきて、絡み付いて血を吸う‥‥。ヴィーは鳥肌の立った二の腕をこすりながら説明してくれた。さすがのヴォルフも「俺も、森ダコだけはダメです。」とのこと。

 (でも、タコだよなぁ‥‥)


 「よし。捕まえていこう。」

「えーっ!」

「やめましょうよ!」

 僕の提案は、思いっきり否定されてしまったので、

「じゃあいいよ。自分でやるから‥‥。」

 僕が木に登って、森ダコを枝から引き剥がして降りてきた。布袋に詰めようとするが、なかなか足がうねうね抵抗して袋に収まらない。

「ひ、ひぃぃっ!」

 大きな体に似合わない悲鳴を上げながら、ウォルフが手伝ってくれて、森ダコは無事に捕獲できた。


  紐で口を閉じた袋の中、うぞうぞ動くのを見ながら僕が満足そうにしていると、

「ご主人様、こんなの捕まえて、どうするですか?」

 ヴィーが、顔をひきつらせて聞いてきた。

「とりあえず‥‥食べてみるけど。」

「えーっ!」

「やめてください!」

 再び二人は、悲鳴を上げて否定する。

 嫌がる二人をしり目に、僕は袋をつかみ上げ、「はい、持ってきて」とヴォルフに渡す。ヴォルフは、それをしぶしぶ背中の背負子に入れた。そして袋の紐がほどけていないか、途中何度も確認していた。


 「あの岩の上から、領内が見下ろせそうです。」

 ヴォルフが、山の斜面から岩が突き出て視界が開けているところを見つけたので、そこから領内を見渡すことにした。


  岩の上に座って見下ろすと、領内が一望できるばかりか、ファーレの街まで一望することが出来た。

「わーっ、見晴らしがいいです。ファーレのお城も見えるです。」

「ホントだ。川を挟んでいるだけで、ファーレの街とうちの領地は近いんですね。」

「ホントだね。」


 僕は、二人と一緒に領内を見まわしながら、以前から気になっていることを思い出していた。

(ウルドは、「以前は豊かな土地で、農作物の収穫も多かった。」 ということだったよな。広い農地が川沿いにあるけど‥‥。)

 僕はもう一度、ファーレの街とウルド領を見渡した。今、僕らがいる小高い山を中心とする山地と川に挟まれた間の土地がウルド領だ。川に沿って横長の楕円形で、ファーレの市街地より少し広いくらいだ。

心優しい先々代の公爵が、ウルド側にも大きな堤防を作ってくれた。それ以前、他国の領土だった頃は、ファーレ側には大きな堤防、ウルド側は形ばかりの小さな堤防だった。という話を聞いた。


 ということは、大きな堤防を作ってもらう前は、ウルド側は度々洪水被害にあっていたのだろうか? 「以前は、豊かな農地だったが、今は瘦せてしまった」 という話だったけど…。

あれ? 何か似たような話があったなぁ‥‥。それに学生の時、ゼミの仲間と東北の治水対策の現地を見に行った所は…、確か普段は水田として使っていて、洪水の時には……)


 「そうか! そういうことか!」

 突然立ち上がって叫んだ僕に驚いて、岩の上から転げ落ちそうになるヴィーを、ヴォルフが慌てて捕まえながら、

「ユウ様、何か思いつかれたのですか?」

「ああ‥‥、でも、すぐにどうにか出来るものじゃない‥‥。」

 僕の推測の通りならば、ウルド領の耕作地が「以前は豊かだった」ことも納得がいく。そういえば現在のファーレン公爵領は、他国から手に入れた土地を、王家からファーレン公爵が賜ったと聞いた。


 ウルド領には、他国に支配されていた頃から、大きな都市だった対岸のファーレの街を守る役割があったのだ。


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