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~さらわれて異世界にやって来ました~

 初めての投稿です。コミック原作者を夢みて書き始めた話ですが、投稿方法が分からず、ネット検索してこのサイトを見つけました。投稿にあたっての注意事項がきちんと守れているか、投稿フォームの入力にミスは無いか、ドキドキしながらの投稿です。

 異世界転移ものですが、作者・私が土木系の公務員ですので,公共土木事業やまちづくりなど、専門分野のことを書くことで少しでも差別化を図った話になればと思っています。

※R6年12月完結したのを機会に、誤字脱字・てにおは修正しています。エピソード追加等はしていません。(番外編を追加掲載する都合上、『連載中』と表示させてもらっています。)


  プロローグ


 地下室へ続く暗い階段を下りていくと、何やら声が聞こえてくる。階段下の重い扉を押し開くと、薄暗い室内に大勢の男がいる。聞こえてきたのは、この男たちが一斉に何かを唱えている声だった。

 石造りの地下室は薄暗く、奥行きがよくわからない。薄明りの中で、全身を包むように黒布をかぶった十数人の男が車座に座り、中心に一人の男が座っている。

 車座の男たちが一斉に唱えているのは、読経のようにも怪しい呪文のようにも聞こえる。中央に座る男は呪文を唱えず、布きれで目隠しをしてうつむいていた。そして男の額には、何かの文字が書かれた札が張り付けられていた。


 しばらくすると、黙ってうつむいていた中央の男が「はっ」と何かに気付いたように顔を上げた。

「いました! 適合しそうな者を見つけました。」

すると奥の暗がりから、

「よし‥‥連れてこい。」

指示を出したのは、青白い顔の痩せた男だった。男の顔には、幾つもの蛇の刺青があった。 


 

      

  異世界地域づくり 

 


 「あー、午前中から疲れたなぁ。」

いくら手伝い要員とはいえ便利に使いすぎだろう。

僕、山田ユウは、大学で土木工学を学び、親の勧め(頼み)もあり県内の市役所に就職した。僕が配属されたのは新設の「地域づくり課」。

 地方創生の政策に関わるのかと思っていたが、新設課であったため市役所内の他の部課の手伝いをすることの方が多く、市役所中から人手がほしい時にお呼びがかかった。

 僕が採用されてから三年。今では様々な施策を手掛けているのだが、これまでの習慣のとおり人手が必要になるとお呼びが掛かる。今日は生活環境課の応援で、市内の清掃活動で集められたゴミの回収作業を手伝わされた。


 「いろいろなことが経験できて、いいじゃないか。」

 上司の取って付けた様なフォローに愚痴を言いながらも、それなりに楽しくやってきた。プライベートでは彼女もできたし、順調だと思っていた。昨日までは‥‥。

 市役所に勤めるようになって直ぐの時から、約三年間付き合ってきた彼女に昨日フラれたのだ。

「郷里に帰る」と言っていたが、噂によるとどうやら結婚するらしい。


 「‥‥結婚するってことは、しばらく前から二股掛けられてたのか‥‥」

 午前中の仕事が終わって市役所に隣接した公園のベンチに座ると、ため息とともに独り言が出てしまった。

 よく考えてみれば、そもそも僕の人生はそんなにうまくいく訳がないのだ。

 あの時から‥‥。


 落ち込んでいる時など、決まって思い出す事がある。僕が情けなかったために死なせてしまった兄ちゃん‥‥。情けない自分の過去。これを思い出すと、小学生のあの時から人生をやり直したくなる。


          ◇


 僕は物心がついた頃から、いつも兄ちゃんと一緒だった。そして兄ちゃんは、いつも僕の手を引いてどこにでも連れて行ってくれた。

 あの日も兄ちゃんに連れられて近くのため池に釣りに出かけた。釣りを始めてからしばらくした時、風で飛ばされた僕の帽子を追いかけて、兄ちゃんは池に落ちた。

池は思いの外、深かった。

 溺れる兄ちゃんを見て怖くなった僕は、助けを呼ぶこともできずに、その場にへたり込んでしまった。

ようやく気を取り直して、助けを呼びに走ったのだが‥‥。

兄ちゃんは助からなかった。


 彼女にフラれた昨日のこと。兄ちゃんを助けられなかった子供の頃のこと。そんなことを考えていると、自分が嫌になってきた。

「どこか遠くへ、行ってしまいたいなぁ‥‥」

思わずそんな独り言が出てしまった時だった。      

  


 「‥‥では、我と共に来てくだされ。」

声を掛けられたような気がして、声のする方へ振り向いた。いつの間にかベンチで眠ってしまったのだろうか? 変な夢を見ているようだ。僕の座っているベンチの周りは霧に包まれていて、目の前に現れた黒ずくめの男に声をかけられたのだ。

 男は布切れで目隠しをして、額に変な文字が書かれた札?を張り付けている。怪しいというより‥‥変だ。

「別に、いいですけど。‥‥でも、どこに行くんですか?」

僕は、何の気なしにそう答えた。どうせ夢みたいだし。


 そんな僕に、男は握手を求めて手を伸ばしてきた。手を取られながら目の前に近づいてきた男を改めてよく見ると、変というよりも不気味な気がしてきた。一見「修行僧?」みたいに見えたが、それよりもっと禍々しいような気がしてきた。

僕はベンチの背もたれに張り付くように後ずさりしながら、さっきの返事を後悔した。


 すると突然、握手をしている僕の手の平から何かが「ズブッ」と入って来たように感じた。

「うわっ!」

 驚いて、男の手を振りほどこうとしたけれど離れない。手の平から入ってくる何かは勢いを増し、まるで生き物のようにズブズブと入ってくる。痛みはあまり感じないが、腕の中に何かが入って来ているのだ。僕は、あまりの気持ち悪さに、手を振りほどこうとして振り回したが離れない。

 その何かは、ズルズルと手の中を脈打ちながら昇ってくるようで、ひじ、肩、首を通り、そして最後は頭の中へ、ズルズルと入ってきたように感じた。それが頭に到達したとき、突然、何が入ってきたのか分かったような気がした。

僕が見たことのない映像が、頭に浮かんできたのだ。


 暗い石造りの部屋の中で車座に座って呪文を唱える男たち。その中央に座っている男は、目の前にいるこの男のようだ。額に変な札も貼っているし‥‥。部屋の奥の暗がりから叱責するような声が聞こえる。

「探せ! 扉を繋ぐ力を持つ者を見つけろ! 回廊が維持出来ている間に連れてくるのだ。」


 突然浮かんだこの映像は、この男に何かをズブズブ入れられたから見えていると感じる‥‥。だとすると、繋いだ手から入れられたものは‥‥記憶? 情報?

 このような状況、情報が流れ込んでくる状況は、何か似たような経験があるような気がする‥‥!


 そうだ、これはパソコンやスマホでデータやアプリを取得する時の‥‥ダウンロードに似ている。

 

ページ構成を少し直しました。



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