表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/52

龍とはらすかす姫<6>

「ちょ、ちょっと! 正面突破(しょうめんとっぱ)って、ホント大丈夫(だいじょうぶ)なの、ヒュリア?!」


 (たよ)りになりそうなのは、ユニスの護衛官(ごえいかん)だっていうアレクシアさんですけど。

 麻痺(まひ)してますよね。

 だとすれば結局(けっきょく)一人(ひとり)盗賊(とうぞく)相手(あいて)にしなきゃならないわけで。


 しかもタニョさんとユニスを(まも)りながらでしょ。

 マジ()んでねぇか、これ。


(ほか)手段(しゅだん)がない以上(いじょう)、やるしかない」


 (うし)ろを振返(ふりかえ)るヒュリア。

 抜穴(ぬけあな)から生還(せいかん)したユニスとアレクシアさんが、(かお)をこわばらせてます。


「なるだけ(わたし)(うしろ)から(はな)れないように。――アレクシア殿(どの)、あなたは護衛官(ごえいかん)だと()いている。(たたか)えますか?」


「まだ麻痺(まひ)(やく)効果(こうか)(のこ)っているので、通常(つうじょう)の5割程度(わりていど)(ちから)しか()せませんが、なんとかしてみせます」


結構(けっこう)。では、ユニスさんを(まも)ることだけに専念(せんねん)してください。(みち)(わたし)切開(きりひら)きます」


 そのときヒュリアの右肩(みぎかた)(うえ)に、ふっと(ちい)さな(かげ)(あらわ)れました。

 昧昧鼬(セヘルクルナス)(もど)ってきたようです。


 ククククと()いてますけど、ドラゴン(ねえ)さんがいないと(なに)()ってるのかわかりません。

 ヒュリアは昧昧鼬(セヘルクルナス)()()むのを()って(かた)りかけます。


抜穴作戦(ぬけあなさくせん)失敗(しっぱい)した。正面突破(しょうめんとっぱ)脱出(だっしゅつ)することになったとチェフチリク様達(さまたち)(つた)えてくれ」


 ヒュリアの言葉(ことば)()いた昧昧鼬(セヘルクルナス)は、またクッキクッキと()くと、すぐに姿(すがた)()しました。

 昧昧鼬(セヘルクルナス)がいなくなるのを見届(みとど)けたヒュリアは、(くび)(うし)ろに()をまわし、首飾(くびかざ)りを(はず)します。


「それと、これを(わた)しておきます」


 首飾(くびかざ)りをアレクシアに手渡(てわた)そうとするヒュリア。


(なに)してんの、ヒュリア?!」


 (ぼく)(こえ)()げるとユニスとアレクシアさんは、ぎょっとしました。

 まあ、首飾(くびかざ)りがしゃべれば、そりゃ(おどろ)きますわな。


「ツクモ、二人(ふたり)(まも)って()しい」


大丈夫(だいじょぶ)なの、ヒュリア? 実質(じっしつ)(たたか)えるの、君一人(きみひとり)なんだよ。(ぼく)一緒(いっしょ)(ほう)がいいんじゃない?」


心配(しんぱい)するな、ツクモ。(わたし)にはクズムスがある」


「ヒュリアの(けん)腕前(うでまえ)()ってるけど、あの(かず)だよ? それに、まだ()えるよ、あいつら」


(わたし)元勇者(もとゆうしゃ)だという(こと)(わす)れたのか?」


 冗談(じょうだん)めかすヒュリア。

 これから(たたか)いが(はじ)まりそうなのに、この余裕(よゆう)(かん)じ……。

 相当自信(そうとうじしん)ありと()ました。


「――わかった、(きみ)(しん)じるよ」


 (ぼく)見下(みお)ろすヒュリアは、ふっと(わら)うと、首飾(くびかざ)りをアレクシアさんの(てのひら)()きました。


 不安(ふあん)そうに(ぼく)()てるユニスとアレクシアさんの(かお)視界一杯(しかいいっぱい)(ひろ)がります。

 ここは、とりあえず不安(ふあん)解消(かいしょう)するため、挨拶(あいさつ)しときましょうか。


「どうも(はじ)めまして、アレクシアさん、ユニスちゃん。(ぼく)はツクモって()います。どうぞよろしく」


「は、はあ、これはご丁寧(ていねい)に……」


 アレクシアさんが、ぎこちない(かん)じで(あたま)()げました。

 ユニスは、うわぁぁって()いながら人差(ひとさ)(ゆび)でつついてきます。

 ()いてる二人(ふたり)に、ヒュリアが説明(せつめい)してくれました。


「ツクモは魔導(まどう)(あやつ)(つよ)霊体(れいたい)で、その宝石(ほうせき)(なか)(はい)っています。()っていれば、(かなら)(まも)ってくれるでしょう」


 盗賊(とうぞく)のことなんか(まったく)()にぜず、(やつ)らに()()けたまま(はな)すヒュリア。

 さすがに背後(はいご)から怒声(どせい)()んできました。 


「て、てめぇ、何者(なにもん)だっ?!」


 ()ると、リーダーらしき盗賊(とうぞく)(まえ)()きていました。

 しかも盗賊(とうぞく)(かず)が、さっきの(ばい)以上(いじょう)()えています。


 だけど多勢(たぜい)無勢(ぶぜい)のはずなのに、なぜか(おそ)ってきません。

 怒鳴(どな)ってきたリーダーも、どこかオドオドしています。


 なんでだろって観察(かんさつ)すると、盗賊達(とうぞくたち)がヒュリアの(かお)を、まじまじと()てるのに()づきました。

 これってたぶん、あの仮面(かめん)にビビってるんでしょうね。


 薄暗(うすぐら)洞窟(どうくつ)(なか)、いきなり(あら)れた正体不明(しょうたいふめい)(みどり)仮面(かめん)

 魔人(まじん)とか化物(ばけもの)(たぐい)かって(うたぐ)って警戒(けいかい)するのも当然(とうぜん)です。


 (やつ)らがビビってることに()づいたヒュリアは、両手(りょうて)(まえ)に、だらりと()らし、(うつむ)きかげんになって、(した)から(にら)みつけます。

 (まえ)(おし)えてあげたジャパニーズユウレイスタイルです。 


酒場(さかば)老夫婦(ろうふうふ)耗霊(もうりょう)(たの)まれ、その(うら)みを()らすためにやってきた(もの)だ」


 (かす)れた(ひく)(こえ)(おど)かし、追打(おいう)ちをかけます。

 全員(ぜんいん)(そろ)って、ぎょっとする盗賊達(とうぞくたち)


 うむ……。

 どうやらこいつら全員(ぜんいん)(かお)(こわ)いだけの雑魚(ざこ)キャラみたいです。

 あのくらいの(おど)文句(もんく)じゃ、いまどき小学生(しょうがくせい)だってビビりませんて。

 こりゃ逆立(さかだ)ちしたってヒュリアに(かな)わないでしょう。


 まんまとヒュリアの(おど)かしにハマったリーダーは、あたふたしながら周囲(しゅうい)見回(みまわ)し、部下(ぶか)命令(めいれい)します。


「ふ、ふざけやがってぇ! おい、やっちまえ!」


 リーダーの(そば)にいた(した)()三人(さんにん)が、(おれ)たちかなって(かお)見合(みあ)わせました。

 躊躇(ためら)ってる三人(さんにん)をリーダーが(にら)みつけます。

 三人(さんにん)溜息(ためいき)()いた(あと)()()ずと(けん)()きます。

 そして、へっぴり(ごし)で、ヒュリアに()かっていったのでした。


 正面(しょうめん)から垂直(すいちょく)()りつけてきた一番手(いちばんて)盗賊(とうぞく)(けん)を、半身(はんみ)になったヒュリアは、ふわりと(かわ)します。

 そのまま、そいつの首元(くびもと)あたりをクズムスで水平(すいへい)()(はら)い、背後(はいご)へと()けました。


 (なに)()こったのかわからない様子(ようす)盗賊(とうぞく)は、もう一度斬(いちどき)りかかるために(うしろ)振返(ふりかえ)ります。

 でもその途端(とたん)(くび)身体(からだ)からずれて、()ちていったのでした。


 切口(きりくち)から大量(たいりょう)()噴上(ふきあ)がり、(あたま)地面(じめん)(ころ)がります。

 (つづ)いて、()()()らす身体(からだ)が、(くず)れるように(たお)れていきました。


 ()りかかる()()けながら、(つぎ)(てき)()かって飄々(ひょうひょう)(ある)くヒュリア。


 二番手(にばんて)(やつ)が、バットを()るように(よこ)から(あたま)()りつけてきたのを、しゃがんで(かわ)した彼女(かのじょ)は、立上(たちあ)がる(いきおい)いに(まか)せて、そいつの(のど)にクズムスを突刺(つきさ)し、すぐに引抜(ひきぬ)きます。


 ()(あふ)れてくる(のど)()()さえる盗賊(とうぞく)

 そして自分(じぶん)()(しん)じられないような表情(ひょうじょう)()かべ(たお)れたのでした。


 三番手(さんばんて)絶叫(ぜっきょう)しながら、ヒュリアの左肩口(ひだりかたぐち)(ななめ)めに()りかかってきました。

 ヒュリアは、相手(あいて)切先(きっさき)受止(うけとめ)めずに、クズムスの(しのぎ)(すべ)らせて(なが)し、(うえ)から()さえ、(いきお)いを(ころ)しながら身体(からだ)左回(ひだりまわ)りに半回転(はんかいてん)させます。

 半回転(はんかいてん)したことで、二人(ふたり)一瞬(いっしゅん)至近距離(しきんきょり)(かた)(なら)べることになります。


 ヒュリアはそこから、振下(ふりお)ろしきって(ちから)(うしな)った盗賊(とうぞく)(けん)(うえ)(すべ)らせるようにクズムスを(はし)らせ、一気(いっき)身体(からだ)逆回転(ぎゃくかいてん)させます。

 そしてその(いきお)いで、盗賊(とうぞく)左腕(ひだりうで)ごと脇腹(わきばら)切裂(きりさ)き、(うしろ)()けたのでした。


 ()られた左腕(ひだりうで)(にぎ)っていた(けん)から、ぶら()がり、脇腹(わきばら)からは()噴出(ふきだ)します。

 こうして三番手(さんばんて)も、(まえ)二人(ふたり)(あと)()うように(たお)れていったのです。


 ホント、(こわ)いぐらいに(あざ)やかな剣捌(けんさば)き。

 さすがは二席(にせき)勇者(ゆうしゃ)


 でも今回(こんかい)一番驚(いちばんおどろ)いたのは、(たたか)ってる(あいだ)(けん)(けん)がぶつかって火花(ひばな)()らすなんてことが(まった)()かったことなんです。

 もちろんクズムスがこすれたり、(かぜ)()(おと)(かす)かに()こえたんですよ。


 時代劇(じだいげき)とかチャンバラを()てると、相手(あいて)攻撃(こうげき)(ふせ)ぐために自分(じぶん)(けん)打合(うちあわ)せることよくありますよね。

 でも、ヒュリアは一度(いちど)もそれをしませんでした。

 だからほとんど(おと)がしなかったわけです。


 背筋(せすじ)(さむ)くなるような(けん)()えです。

 トゥガイと(たたか)ったときの(あつ)さが、(まった)くありません。

 ヒュリアと盗賊達(とうぞくたち)力量(りきりょう)雲泥(うんでい)()があるってことなんでしょうかね。


 (いき)()らすこともなく、クズムスを()って、こびりついた()(はら)()とすヒュリア。

 呆然(ぼうぜん)としている盗賊達(とうぞくたち)尻目(しりめ)に、すたすたと死体(したい)(ちか)づき、(けん)二本拾(にほんひろ)()げると、アレクシアさんとタニョさんに(わた)しました。


 アレクシアさんとタニョさんは、(おどろ)きと恐怖(きょうふ)入混(いりま)じった表情(ひょうじょう)でヒュリアを()つめ、()()ずと(けん)受取(うけと)ります。


 まあ、無理(むり)もないすよね。

 わずかな時間(じかん)で、三人(さんにん)(たお)したのに、息切(いきぎ)(ひと)つせずに平然(へいぜん)としてるんですから。


 いつのまにか地響(じひび)きも()み、しんと(しず)まりかえる洞窟(どうくつ)

 その(しず)けさとヒュリアが()にまとう(しず)けさが(かさ)なって、空間全体(くうかんぜんたい)()てついてしまったかのようです。


「ビ、ビ、ビビってんじゃ、ね、ねえぞ! か、(かず)はこっちが(おお)いんだ! い、い、一斉(いっせい)にかかるんだよっ!」


 リーダーが静寂(せいじゃく)(やぶ)ります。

 自分(じぶん)もビビってるくせに、(まわ)りの部下(ぶか)にツバを()ばしながら命令(めいれい)してます。

 だけどもちろん誰一人(だれひとり)(したが)(もの)はいません。


 ヒュリアは自分(じぶん)(ほう)から盗賊達(とうぞくたち)()かって、一歩(いっぽ)(すす)みます。

 すると盗賊達(とうぞくたち)全員(ぜんいん)一歩(いっぽ)(うしろ)へさがります。

 彼女(かのじょ)二歩(にほ)(すす)むと、盗賊達(とうぞくたち)二歩(にほ)さがります……。


 なんだ、こりゃ?

 コントか?


「――お(まえ)らじゃ()てっこねぇって」


 盗賊達(とうぞくたち)(うし)ろから野太(のぶと)(こえ)がしました。


 ガタイの()大男(おおおとこ)十人(じゅうにん)ほど(まえ)(すす)()てきます。

 ()(かん)じ、みんな2メーター以上(いじょう)背丈(せたけ)がありそうです。

 それと、(ひたい)(ほほ)には緑色(みどりいろ)刺青(いれずみ)がほどこされてます。


 こいつらが(れい)のキュペクバルって奴等(やつら)でしょう。


「す、すいません、フセインさん。あいつ(みょう)(わざ)使(つか)いやがって……」


 盗賊(とうぞく)のリーダーは、キュペクバルの先頭(せんとう)()つ、さらに一回(ひとまわ)(おお)きな(おとこ)にぺこぺこしてます。

 このフセインってやつが(しん)のヘッドってことなんでしょう。


 フセインの右目(みぎめ)には(かわ)眼帯(がんたい)がかかってますが、(ひら)いている左目(ひだりめ)(かえる)みたいにギョロギョロしています。

 そのギョロ()軽蔑(けいべつ)するようにヒュリアを見下(みお)ろしました。

 背丈(せたけ)がヒュリアの1.5(ばい)ぐらいあるんですよ。


「お(まえ)剣術(けんじゅつ)俺達(おれたち)(いや)というほど()てきたもんだな。(てき)(うご)きを先読(さきよ)みして剣筋(けんすじ)(かわ)し、(けん)(いきお)いを(ころ)した(あと)反撃(はんげき)する。小汚(こぎた)ねぇやり(くち)だよなぁ。戦士(せんし)としての(ほこ)りを()たねぇ帝国(ていこく)玉無(たまな)騎士(きし)(さま)がお使(つか)いになるもんだ」


 フセインが(どく)づくと、(ほか)のキュペクバル(たち)一斉(いっせい)大笑(おおわら)いしました。


(のう)みその()わりにクソが()まったキュペ(ざる)使(つか)う、腕力(わんりょく)だけの無様(ぶざま)剣術(けんじゅつ)よりはましだ」


 ヒュリアが、吐捨(はきす)てるように()います。


 それを()いたキュペクバル(たち)(わら)(ごえ)がピタリと()みました。

 (かれ)らの(はげ)しい憎悪(ぞうお)のこもった視線(しせん)がヒュリアに(そそ)がれます。

 血走(ちばし)ったギョロ()(ほそ)めたフセインが口元(くちもと)(ゆが)ませました。


()ってくれるじゃねぇか、女騎士(おんなきし)さんよぉ。てめぇみたいな(やつ)をさんざんいたぶった(あと)で、(しり)肉棒(にくぼう)をつっこんで内臓(ないぞう)をかき(まわ)しながら(ころ)すのが(たの)しいんだよ。その(あせ)くせぇ股開(またひら)いて()っててくれや」


 キュペクバル(たち)がまた一斉(いっせい)(わら)いました。


 うわぁ、下品(げひん)(しも)ネタぶっこんできたよ。

 クズムスを(にぎ)るヒュリアの()(ちから)がこもるのを(かん)じました。


「ならばその貧弱(ひんじゃく)でドブ(くさ)肉棒(にくぼう)とやら、(すべ)斬落(きりお)として串焼(くしや)きにし、(えさ)として(ぶた)にくれてやろうか。――いや、そんな小汚(こぎたな)肉棒(にくぼう)(ぶた)にも迷惑(めいわく)だな」


 もう、ヒュリア。

 年頃(としごろ)(おんな)()が、はしたないこと()っちゃだめですって。

 (おも)わず噴出(ふきだ)しちゃったじゃん。


 忌々(いまいま)しそうに舌打(したう)したフセインは、(うしろ)(くび)(まわ)して怒鳴(どな)りました。


「おいっ! “(ケルテンケレ)”を一頭(いっとう)()れて()い!」


 ケルテンケレ?

 (なに)それ?

 ()いたことない単語(たんご)だね。

 ウガリタ()か?


 でも、それを()いたとき、ヒュリアの身体(からだ)がピクっと反応(はんのう)したんです。

 まさか動揺(どうよう)してるんでしょうか?


「フセインさん、(せま)洞窟(どうくつ)(なか)で、(ケルテンケレ)使(つか)うのはマズイんじゃねぇですか……」


 盗賊(とうぞく)のリーダーが、反論(はんろん)します。

 その途端(とたん)、フセインはリーダーの横面(よこっつら)をひっぱたきました。

 リーダーは()()んで、部下達(ぶかたち)にキャッチされます。


(おれ)(くち)ごたえすんのか? ああん?」


 リーダーは、ぶるぶると(くび)()ります。


「――ツクモ、注意(ちゅうい)してくれ。キュペクバルは(ケルテンケレ)(あや)つる技術(ぎじゅつ)()っている」


 ヒュリアの(こえ)(かた)いです。


(ケルテンケレ)って(なん)なの?」


(ケルテンケレ)基本的(きほんてき)には巨大(きょだい)蜥蜴(とかげ)のような生物(いきもの)だが、生息(せいそく)場所(ばしょ)交配(こうはい)によって(いく)つかの(しゅ)()かれている。それぞれに(こと)なる生態(せいたい)があるが、共通(きょうつう)する性質(せいしつ)として、攻撃力(こうげきりょく)防御力(ぼうぎょりょく)(すぐ)れ、魔導(まどう)(たい)して(たか)抵抗力(ていこうりょく)(そな)えている(てん)があげられるだろう。キュペクバルは、(ケルテンケレ)人工的(じんこうてき)交配(こうはい)させ、さらに強力(きょうりょく)新種(しんしゅ)をつくりだし、実戦(じっせん)配備(はいび)していた。帝国(ていこく)(なが)くキュペクバルを()()とせなかった原因(げんいん)(ひとつ)に、(ケルテンケレ)存在(そんざい)があるといえる」


「て、帝国(ていこく)は、“戦竜(イシュケルテンケレ)”を(すべ)処分(しょぶん)したと()いておるぞ!」


 (こえ)()げるタニョさん。

 いや、(ぼく)らに文句言(もんくい)われてもねぇ。


「ツクモ、とにかくユニスさん(たち)(たの)んだぞ」


(ケルテンケレ)()てるの?」


 フセイン(たち)()(ほこ)った(かん)じで、にやけてます。


(ケルテンケレ)()てきたなら、(わたし)がその注意(ちゅうい)()きつける。その(あいだ)になんとか脱出(だっしゅつ)して()しい」


「えっ?! (なに)それ?! それって()てないってことなの?!」


「タニョ殿(どの)!」


 ヒュリアは(ぼく)(こた)えず、タニョさんに()びかけました。


(なん)だ?」


「マリフェトの方々(かたがた)博愛(はくあい)精神(せいしん)()み、気高(けだか)(こころざい)をもたれていると()きますが、それは事実(じじつ)でしょうか?」


「もちろんだ」


 (くち)ひげをひねりながら(むね)()るタニョさん。


「それは重畳(ちょうじょう)。ならば、そこにいる女性達(じょせいたち)(まも)っていただけますね?」


「い、いや、そうは()ったが……」


「――いただけますよ、ねっ?!」


 有無(うむ)()わせない(つよ)口調(くちょう)でお(ねが)いするヒュリア。

 もう、お(ねが)いというより、命令(めいれい)ですね、これ。


「し、承知(しょうち)した……」


 完全(かんぜん)()わされた(かん)のあるタニョさん。


「よろしく、お(ねが)いします」


 タニョさんに()かって(かる)(あたま)()げるヒュリア。


「ヒュリア、本当(ほんとう)大丈夫(だいじょうぶ)なんだよね?! ()てるよね?!」


「タニョ殿(どの)援護(えんご)(たの)んだぞ、ツクモ」


「ちゃんと(こた)えようよ!」


「――できる(かぎ)りのことは、してみるつもりだ」


 振返(ふりかえ)ったヒュリアは、アレクシアさんの()にある(ぼく)()つめます。


 仮面(かめん)(した)表情(ひょうじょう)はわかりません。

 でも、相当(そうとう)ヤバい(かん)じが、タニョさんとの会話(かいわ)から(つた)わっていました。


 やっぱり(ぼく)(きみ)一緒(いっしょ)にいるべきじゃないのかい?

 そう()おうとしたとき、盗賊達(とうぞくたち)(うしろ)騒然(そうぜん)となります。

 そしてすぐに、人垣(ひとがき)()けながら、(おお)きな(かげ)(あらわ)れたのでした。


 ずんずんと二足歩行(にそくほこう)でやってきたそれは、動画(どうが)なんかで()てた恐竜(きょうりゅう)にそっくりです。

 ただ、ティラノサウルスみたいな如何(いか)にもって(かん)じのやつじゃなく、茶色(ちゃいろ)羽毛(うもう)()やした(にわとり)()たリアルなヤツでした。

 (にわとり)っていっても、(くち)はワニみたいで(するど)()が、ずらっと(なら)んでるし、足先(あしさき)には(おそ)ろしいカギ(づめ)()えます。


 そして(なに)より(おお)きさが(ちが)います。

 (ケルテンケレ)(あたま)は、フセインの背丈(せたけ)二倍近(にばいちか)(たか)さにあり、洞窟(どうくつ)天井(てんじょう)(とど)きそうなのでした。


 (ケルテンケレ)(あたま)()げ、(ちか)づいてきたフセインに(かお)()せます。

 フセインは、その(くび)(あたま)を、まるで(いぬ)でもあやすかのように()でまわしました。

 (ケルテンケレ)気持(きも)()さそうに()()じてます。

 そしてフセインが首筋(くびすじ)をポンポンと(たた)くと(ケルテンケレ)()()け、(あたま)()げました。


 フセインは、ヒュリアを指差(ゆびさ)し、ギッ、ギッ、ギッと(みょう)(こえ)()てます。

 (こえ)()いた(ケルテンケレ)は、目玉(めだま)をむき、(くち)(おお)きく(ひろ)げ、カラスのラスボスみたいな鳴声(なきごえ)()げました。

 そして唐突(とうとつ)(はし)()すと、ヒュリアへ突進(とっしん)していったのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ