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ヘタレの勇者に成りたがり<3>

 バシャル滅亡(めつぼう)!!!


 ヒュリアとタヴシャンは目玉(めだま)飛出(とびで)るくらい(おどろ)いてます。

 そりゃそうですよね。

 魂露(イクシル)のときとは(くら)べものにならない大問題(だいもんだい)ですから。


 でもですね、すでに(ぼく)、この惨劇(さんげき)回避(かいひ)する方法(ほうほう)()つけてるのです。

 (じつ)備考欄(びこうらん)のヒントの(なか)にジョルジの状況(じょうきょう)にピッタリ()てはまるのがありまして。

 それがこちら。


英雄願望(えいゆうがんぼう)のモヤシ(おこと)には(にく)()べさせる』


 英雄願望(えいゆうがんぼう)があって、ヒュリアに()わせれば、ひょろひょろ、つまりもやし(おとこ)

 そして一番(いちばん)()()は“(にく)”が苦手(にがて)ってことでした。


 つまりこのヒントの()いたいことは、エズくほど苦手(にがて)(にく)()べることができれば、ちゃんと統一化(とういつか)完成(かんせい)して、ジョルジは英雄(えいゆう)になれるってことじゃないかって(おも)うんですよね。

 ただ問題(もんだい)は、変身(へんしん)しちゃうほど苦手(にがて)(にく)をどうやって()べさせるかです。


「まぎらわしいんで、(べつ)世界(せかい)から()たジョルジを『ジョビジ』、バシャルのジョルジを『ジョバシ』と()ぶことにしましょうか」


 『ジョビジ』はジョルジビジター、『ジョバシ』はジョルジバシャルの(りゃく)です。


「なんだそりゃ、ホント名付(なづ)けの才能(さいのう)ねぇなぁ、てめぇは。余計(よけい)混乱(こんらん)しそうだぜ」


 アティシュリの心底(しんそこ)馬鹿(ばか)にした(かん)じの視線(しせん)が、(ぼく)精神(せいしん)にクリティカルヒットします。

 ツクモノメンタルガ、200サガッタ。


「い、いいじゃないすか……、区別(くべつ)さえつけば……」


 タヴシャンさんはニヤニヤしてますし、ヒュリアは(あきら)めた(かん)じで(かた)をすくめます。

 ヒュ、ヒュリアまで……。


 そんなにネーミングセンス()いかなぁ。

 まあ(たし)かに、ゲームのキャラ名決(めいき)めるときの定番(ていばん)は『ツクエモン』とか『味付(あじつ)けモクツ』だったけどさぁ……。


 ああ、もう、ダルいわぁ!

 いいんだよ、こんなんセンス()くたって!

 名前(なまえ)つけんのがヘタだって、()にゃあしないんだから!

 いや、()んでんですけどねっ!


 ()取直(とりなお)して、(はなし)(もど)しましょう。


「――ところで、アティシュリさん、この(よろい)って部分的(ぶぶんてき)解除(かいじょ)できないんすかねぇ?」


「ああっ? (たし)出来(でき)るはずだぜぇ。(ひと)()うときなんざ、顔出(かおだ)さなきゃなんねぇだろ。フェルハトが(かぶと)部分(ぶぶん)だけを解除(かいじょ)して(きゃく)()ってんのを、よく()かけたもんだ」


「そうですか。だったらまず、『ジョビジ』(くん)(ほう)(かぶと)解除(かいじょ)してもらって、(にく)()べてもらいましょうかね」


「はぁ? 何言(なにい)ってんだ、てめぇ」


「あのですね、『耶代(やしろ)』がジョルジ(くん)に、(にく)()べさせろって()ってんですよ」


(にく)()わせるだと……? そりゃあどういうことだ?!」


「まあこれは(ぼく)予想(よそう)なんすけど、『耶代(やしろ)』は、二人(ふたり)のジョルジの(ちが)いは、(にく)()べられるかどうかだって()いたいんじゃないかって(おも)うんですよね」


 アティシュリは(あな)()くほど(ぼく)(かお)()つめてきます。

 そして、にょーって(さけ)びながら、両手(りょうて)(あたま)をかきむしりました。


「ああっ! くそがっ! まったくよぉ! てめぇの(はなし)()いてると、真面目(まじめ)にバシャルの行末(ゆくすえ)(あん)じてる(おれ)がバカみてぇに(おも)えるぜっ! (にく)()えるかどうかに、バシャルの命運(めいうん)がかかってるだと! ふざけた(はなし)だなっ!」


 はいはい、ご愁傷様(しゅうしょうさま)です。


「てめぇ、そりゃマジで()ってやがんのかっ?!」


「まあ『耶代(やしろ)』が()ってんだから、マジなんじゃないすかね」


 アティシュリはまた、にょーと(さけ)んで(あたま)()きむしりました。


「まあ、(もの)(ため)しってなもんだから、とにかく、やってみましょうか」


 (ぼく)()()ったままでいる『ジョビジ』に(かた)りかけます。


「えーと、(きみ)、お肉食(にくた)べられますかぁ?」


「ニク……」


「いや、せっかく(つく)った料理(りょうり)なんで、()めないうちに()べてもらえたら(うれ)しいかも」


 テーブルの(うえ)のステーキを指差(ゆびさ)します。

 『ジョビジ』は、つられるようにテーブルまで(ある)いていき、ステーキの(まえ)(こし)()ろしました。

 そしてフォークとナイフを()()ってステーキを一口大(ひとくちだい)()り、(くち)(はこ)びます。

 当然(とうぜん)顔面(がんめん)(おお)っている(かぶと)()べることを拒否(きょひ)るのでして。


 『ジョビジ』は、なんとか()べようとして口元(くちもと)(にく)をこすりつけてますが、どうにもなりません。

 しびれを()らし、またあの()たけびを()げると、フォークとナイフを(かべ)()げつけました。


 タヴシャンの(かお)(よこ)を、もの(すご)(いきお)いで()んだフォークとナイフは、(かべ)深々(ふかぶか)()()さります。

 タヴシャンは、ヒッと(こえ)()げ、椅子(いす)から(ころ)()ちました。


 イライラして立上(たちあ)がろうとする『ジョビジ』の(かた)をポンポンと(たた)くようにして()しとどめます。

 攻撃(こうげき)間違(まちが)われないように細心(さいしん)注意(ちゅうい)(はら)わなければなりません。


 まあでも、たとえ攻撃(こうげき)されたとしても、(いた)くも(かゆ)くもないんですけどね。

 『耶代(やしろ)』の(なか)じゃ、『耶宰(やさい)』への攻撃(こうげき)(すべ)無効(むこう)になりますんで。

 ただ、ヒュリアやタヴシャンにまで被害(ひがい)(およ)ぶのは()けなくちゃいけません。


「はいはい、ちょっと落着(おちつ)こうねぇ。まずは顔面(がんめん)(おお)っている(かぶと)をとってみようか」


 提案(ていあん)()いた『ジョビジ』は、両手(りょうて)(ほほ)のあたりを()さえて持上(もちあ)げ、(かぶと)()ごうとしました。

 もちろん無理(むり)()まってます。

 ()(かん)じでもわかりますけど、(よろい)(かぶと)一体化(いったいか)してますからね。


「それじゃ()げないと(おも)うよ。たぶんなんだけど、物理的(ぶつりてき)()ぐんじゃなくて、()ごうとする意志(いし)重要(じゅうよう)なんじゃないかな?」


 それを()いて(なに)かを(さと)った(かん)じの『ジョビジ』は背筋(せすじ)をピンと()ばして(しず)かになりました。

 たぶん精神(せいしん)集中(しゅうちゅう)させ(はじ)めたんでしょう。

 しかし、かなりの時間(じかん)そうしてたんですが、(なに)()こりません。

 『ジョビジ』は、キレ気味(ぎみ)にまた()たけびを()げました。


(なん)()げないんですかねぇ?」


「そうだなぁ、(なに)かが解除(かいじょ)する意志(いし)妨害(ぼうがい)してんだと(おも)うけどよ……」


 アティシュリも(くび)をひねります。


「『ジョバシ』の(ほう)(にく)()べたくなくて、邪魔(じゃま)してるんじゃないか?」


「おおっ! なるほど! きっとそれだ!」


 ヒュリアのご明察(めいさつ)(おそ)()ります。


「――もしもぉし、たぶん(こころ)片隅(かたすみ)(ふる)えてるだろうバシャルのジョルジ(くん)! ()こえますかぁ?!」


 ジョルジの(うしろ)()って、(あたま)(うえ)から『ジョバシ』の(ほう)(かた)りかけてみました。


(きみ)(にく)()べたくない気持(きもち)ちは、よぉくわかるよ。(ぼく)()きてるときは、パクチーとかセロリとか()べられなかったからね。でもさ、もし(きみ)(にく)をこの(さき)完全拒否(かんぜんきょひ)するなら、統一化(とういつか)不完全(ふかんぜん)のままで、最後(さいご)には大爆発(だいばくはつ)ってことになるわけじゃん。そしたら、バシャル滅亡(めつぼう)人類全滅(じんるいぜつめつ)てなことになるわけだけど。(きみ)()ったよね、英雄(えいゆう)になって(こま)ってる(ひと)や、(ひど)()にあってる(ひと)(たす)けたいって。このままだと、(きみ)自身(じしん)が、バシャルの(ひと)(ひど)()にあわせることになるんじゃないの? それで()いわけ?」


 しばらくすると、ふいに(かぶと)部分(ぶぶん)消失(しょうしつ)し、生身(なまみ)(かお)(あらわ)れました。

 説得成功(せっとくせいこう)のようです。


 (かぶと)(した)から(あらわ)れた(かお)は、ヒュリアに(おび)えていた少女(しょうじょ)ように弱々(よわよわ)しいものではなく、精悍(せいかん)だけれど(ふか)(かな)しみをたたえた青年(せいねん)のものでした。


 (ぼく)は『倉庫(そうこ)』からフォークとナイフを(あらた)めて取出(とりだ)して手渡(てわた)しました。

 それを受取(うけと)った『ジョビジ』は(あらた)めて(にく)()り、(くち)(はこ)びます。


「ウマイ……」


 (にく)()みしめる『ジョビジ』の()から、なぜか大粒(おおつぶ)(なみだ)がこぼれます。


「トウサン……、カアサン……、パンドラ……、タスケラレ……、ナクテゴ……、メン……」


 ()()えた途端(とたん)、フォークとナイフが()から(はな)れてテーブルに()ち、()んだ金属音(きんぞくおん)(ひび)(わた)りました。

 そして、おなじみの(なま)りが(もど)ってきます。 


「――オ、オラ、なぬすてたっけ?」


 ジョルジは()(まえ)にステーキがあることに()づくと、また気持(きも)(わる)くなったのか、(くち)両手(りょうて)()さえました。

 ところが、それが(あお)(よろい)()だと()づき、(こえ)()げます。 


「てほぉっ! なじょしたぁっ?!」


 椅子(いす)から立上(たちあ)がり、自分(じぶん)身体(からだ)見回(みまわ)すジョルジ。

 (くび)から(うえ)だけ生身(なまみ)で、身体(からだ)(あお)(よろい)なのを()り、アワアワしてます。


「ジョルジ、どうやら、お(めぇ)暴走(ぼうそう)()める手段(しゅだん)()つかったようだ……」


 アティシュリは、つかつかとジョルジの(まえ)()き、その(かお)見上(みあ)げます。

 そして、ビビってるジョルジの(むね)人差(ひとさ)(ゆび)()きつけると、容赦(ようしゃ)ない死刑宣告(しけいせんこく)(くだ)したのでした。


「お(めぇ)今日(きょう)から(かなら)ず、一日一度(いちにちいちど)(にく)()え。いいな」


「てほっ、そ、そいなごど()われても……」


「もし、これを(やぶ)ったら……」


 ドラゴン(ねえ)さんは人差(ひとさ)(ゆび)(こぶし)()え、ジョルジに(かる)(はら)パンを()らわせます。


「――爆発(ばくはつ)して()ぬよりも(おそ)ろしい最後(さいご)()ってると(おも)えよ」


「てほぉぉぉぉっ!!!!」


 こうしてジョルジは絶望的(ぜつぼうてき)悲鳴(ひめい)()げることになったのでした。

 めでたし、めでたし。


「それでだなツクモ、こいつを当分(とうぶん)ここに()いて肉料理(にくりょうり)()わせてやってくれるか?」


「まあ(ぼく)(べつ)(かま)いませんけど……」


 でも、このアティシュリの提案(ていあん)真向(まっこう)から反対(はんたい)する人物(じんぶつ)が、いらっしゃいまして。


(わたし)は、ひょろひょろ(おとこ)をここに()くことを(ゆる)すつもりはないからな、ツクモ!」


 ()完全(かんぜん)にキマっちゃってるヒュリア。

 (こわ)いって。


「おい、ヒュリア。ジョルジの具合(ぐあい)にゃあ、バシャルの命運(めいうん)がかかってんだぜ。こいつをここで保護(ほご)しなかったら、またどこかで暴走(ぼうそう)しちまうだろうが」


「だったら、アティシュリ(さま)御自分(ごじぶん)御住(おす)まいに()れていって、保護(ほご)なさればいいじゃありませんかっ!」


「お(めぇ)、さっきから(なに)をそんなにムキになってんだよ。らしくねぇなぁ。いいじゃねぇか、一人(ひとり)ぐらい住人(じゅうにん)()えたってよ」


「いいえ、ダメなものはダメです! こんな女男(おんなおとこ)()らすなど、まったくもってお(ことわ)りですっ! ――いいか、ツクモ、拒否的防衛圏きょひてきぼうえいけん死守(ししゅ)するんだ、わかったな!」


 ()()てるように()ったヒュリアは、(せき)()って(そと)飛出(とびだ)していきました。

 

 おいおい、拒否的防衛圏きょひてきぼうえいけんって(なん)なのさ……?


「ったく、あいつはどうしちまったんだ。(おれ)(たい)してあんなに反抗的(はんこうてき)になるのは、(はじ)めて()ったとき以来(いらい)だぜ……」


 さすがのアティシュリも、(こま)った(かん)じで(あたま)()いてます。


「うふっ、(わか)くて可愛(かわい)(おとこ)()()たから()れてるですよぉ」


 (くち)()()てて(ふく)(わら)いするタヴシャン。


 でたでた、近所(きんじょ)のお節介(せっかい)おばさんコメント。

 やっぱ、ときどきオバンくさいんだよなぁ、このダークエルフ。


「オ、オラのせいだべ……」


 ジョルジは、完全(かんぜん)にサゲ状態(じょうたい)です。


 これって(ぼく)()くしかないんだよねぇ。 

 こういうのホントは苦手(にがて)なんだけど……。


「ちょっと()てきます」


 ヒュリアを()って(そと)()ます。


 屋敷(やしき)(まわ)りを(さが)して(まわ)ると、ヤルタクチュの親株(おやかぶ)()えるところに、ヒュリアが体育座(たいくずわ)りしているのをみつけました。

 おでこを(ひざ)つけて、(かお)()せています。

 

 (そと)はすっきりとした青空(あおぞら)(ひろ)がり、清々(すがすが)しい(かぜ)がそよいでいます。

 その(かぜ)がヤルタクチュの()()らし、そしてヒュリアの(かみ)(やわ)らかく()でていきます。

 もうすぐお(ひる)です。


「ヒュリア」


 ()んでも(かお)()げません。

 仕方(しかた)なく(よこ)(こし)をおろします。

 (だま)ったままでいると、彼女(かのじょ)(ほう)(くち)(ひら)きました。


「なんで(かみ)(わたし)復体鎧(チフトベンゼル)をくださらなかったんだろう。あの(ちから)があれば、(いのち)()とさずにすんだ人達(ひとたち)がいたはずなんだ……。あんな、ひょろひょろの女男(おんなおとこ)なんかに……」


「――まあ、ジョルジ(くん)()きであの(ちから)()()れたわけじゃないみたいだしさ。むしろ相当酷(そうとうひど)()にあってきたんだと(おも)うよ。それに下手(へた)すればバシャルを滅亡(めつぼう)させかねないわけでしょ。英雄(えいゆう)になりたいなんていう正義感(せいぎかん)()ってる(ぶん)精神的(せいしんてき)に、かなり(まい)ってんじゃない?」


 ヒュリアは(かお)()げると、こっちに向直(むきなお)ります。


(わたし)(べつ)に、あいつを(きら)ってるわけじゃないんだ。ただ……」


(しょう)()わない?」


 こくりと(うなず)くヒュリア。


「――ところで話変(はなしか)わるけどさ、ヒュリアって皇帝(こうてい)になったら、たくさんの臣下(しんか)(かこ)まれることになるよね」


「ああ……、たぶん、そうなるだろうな」


臣下(しんか)にもいろんな(やつ)がいるよね。たとえば、性格(せいかく)とか態度(たいど)とか、すげぇ(わる)んだけど、(うし)ろに帝国(ていこく)(ささ)えてる勢力(せいりょく)がついてるような貴族(きぞく)臣下(しんか)になったとき、ヒュリアはどうするの? さっさとそいつを排除(はいじょ)しちゃう?」


「いや、なんとか上手(うま)くやっていくしかないだろう。排除(はいじょ)すれば内乱(ないらん)(まね)くことになりかねない。結局(けっきょく)、ツケは国民(こくみん)にまわることになるからな」


「ホントに? 上手(うまく)くやっていく自信(じしん)ある? クズムスで、ぶったぎったりしない?」


「――自信(じしん)は……、()い……」


「ハハハ、だよね。じゃあさ、ジョルジ(くん)練習(れんしゅう)するってのはどうかな。(しょう)()わない(やつ)(ちか)くにいても、なんとかやっていくためのさ」


 ヒュリアは(かか)えてる(ひざ)にまた、おでこを()けて(かお)()せ、(だま)りこみます。


「――やっぱ、無理(むり)かな?」


 唐突(とうとつ)にガバっと(かお)()げ、(そら)見上(みあ)げるヒュリア。

 彼女(かのじょ)は、そのまま両手(りょうて)(ひろ)げ、(おお)きく深呼吸(しんこきゅう)をしました。


「はぁっ、そうだな。(きみ)()うとおりだ、ツクモ。国家(こっか)舵取(かじと)りとは、そんなに(あま)いものではない。清廉(せいれん)(もの)だけを採用(さいよう)し、汚濁(おじょく)(もの)切捨(きりす)てていけば(くに)(かなら)立行(たちゆ)かなくなるだろう。もちろん(ぎゃく)(おな)じだ。清濁(せいだく)()わせて(おさ)めることができなければ、皇帝(こうてい)になどなれるはずがない」


 はにかんだ笑顔(えがお)()せるヒュリア。

 キューティー!って(さけ)びたくなりますな。


子供(こども)じみた振舞(ふるま)いだった……。(きみ)には世話(せわ)になりっぱなしだな、ツクモ……。すまなかった……」


「いや、(ぼく)のことは全然気(ぜんせんき)にしないでいいからね。それより、ジョルジ(くん)が、しばらくここにいても大丈夫(だいじょうぶ)()いのかな?」


「ああ、逗留(とうりゅう)(みと)めよう。――(あと)でアティシュリ(さま)(あやま)っておかねばならないな……」


「ジョルジ(くん)にもね」


「――そうだな」


「ほんじゃ(はなし)がまとまったとこで、(なか)(もど)ろうよ。もうすぐお(ひる)だし」


 でもヒュリアは(こし)()げません。


「ツクモ……、(わたし)からも(はなし)があるんだが……」


「えーと、(なん)でしょうかぁ……」


 なんだ、なんだ、深刻(しんこく)(はなし)っぽいぞ。

 (めし)がまずいとか、掃除(そうじ)不十分(ふじゅうぶん)とか?

 まさか、焦臭(こげくさ)いのをどうにかしろとでも……。


「――トゥガイ(たち)撃退(げきたい)したが、(わたし)への追討(ついとう)()わったわけではない」


 なんだ、そっちの(はなし)か。

 ちょっと安心(あんしん)


帝国(ていこく)は、(はや)ければ一月後(ひとつきご)に、ここへ騎士団(きしだん)派遣(はけん)してくる可能性(かのうせい)がある」


 うへっ!

 全然(ぜんぜん)安心(あんしん)じゃなかった!


「メシフは(わたし)(ころ)すことに執着(しゅうちゃく)しているから、可能性(かのうせい)はかなり(たか)いと()ていい」


「どの程度(ていど)規模(きぼ)になるのかな……?」


「アティシュリ(さま)のことを計算(けいさん)にいれて(ぐん)編制(へんせい)するだろうから、(すく)なくとも騎士団(きしだん)(ふた)つ、兵数(へいすう)にして1(まん)考慮(こうりょ)すべきだろう」


「1(まん)!」


 こんな丸太小屋(まるたごや)にぃ?

 家政婦(かせいふ)みたいな地縛霊(じばくれい)にぃ?

 1(まん)?!

 (うそ)でしょ?!


「アティシュリ(さま)は、もちろん(たたか)われないだろうから、(すべ)(わたし)(きみ)対処(たいしょ)することになる。(いま)のうちに(なん)らかの()()っておかないと、かなり(きび)しい状況(じょうきょう)(おちい)ることは間違(まちが)いないだろう。――どうだツクモ、(なに)妙案(みょうあん)が、あれば()かせてくれないか?」


「いやぁ、いきなり()われても……。すぐには(おも)いつかないなぁ」


「うむ、(たし)かにそうだ……。すぐにみつかるなら苦労(くろう)はいらないからな。ただ『耶代(やしろ)』が(なに)()ってないかと(おも)ってね」


羅針眼(らしんがん)』でヒントを(たし)かめますが、それらしきものは見当(みあ)たりません。


「まだ(すこ)時間(じかん)はあるが、なるだけ(はや)対応(たいおう)()めなければならない。ツクモも、どうするか(かんが)えておいて()しい」


 いや、(こま)った。

 こりゃ死活問題(しかつもんだい)ですよ。

 どうすんのよ、耶代(やしろ)さん。

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