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青の魔人<4>

 (わたし)とフェトヒは団長(だんちょう)(そば)駈寄(かけよ)る。


 (すで)四人(よにん)隊長(たいちょう)(たお)されてしまった。 

 ジョルジの(ちから)(わたし)想像(そうぞう)(はる)かに()えている。

 3000の(へい)全滅(ぜんめつ)させたというのも(うなず)けた。

 魔導(まどう)での攻撃(こうげき)()いが、身体能力(しんたいのうりょく)防御(ぼうぎょ)(りょく)異常(いじょう)(たか)いのだ。


(やつ)(よろい)には『四冠(ケセド)』の魔導(まどう)(つう)じない! しかも再生能力(さいせいのうりょく)もある! 武器主体(ぶきしゅたい)攻撃(こうげき)切替(きりか)え、深入(ふかい)りせず包囲(ほうい)しろ! ――(わたし)がやる! それまで時間(じかん)(かせ)いでくれ!」


 団長(だんちょう)(こえ)(ひび)(わた)った。

 それを()いたイスメト、セルカン、ベラトの三人(さんにん)武器(ぶき)(かま)えながら前進(ぜんしん)し、包囲網(ほういもう)(せば)める。


 三人(さんにん)(かこ)まれたジョルジは、素早(すばや)四方(しほう)見回(みまわ)した。

 まるで動物(どうぶつ)逃道(にげみち)(さが)していかのような(うご)きだ。


魔導(まどう)完全(かんぜん)無効化(むこうか)されるのですか?」


「いや、無効化(むこうか)ではない。減殺(げんさい)されるのだ。本来(ほんらい)(ちから)三割(さんわり)がいいところだ。オメルの『瑾摎(きんきゅう)』なら、一瞬(いっしゅん)でジョルジを(つぶ)せたはずだ。それが身体(からだ)(おおう)うだけで、かなりの時間(じかん)(よう)していただろう」


「あの(よろい)効果(こうか)阻害(そがい)していたということですか?」


「そういうことだ。――イドリスのものも(おな)じなんだ」


 ()われてみれば(たし)かに、以前見(いぜんみ)た『瑾摎(きんきゅう)』は、一息(ひといき)(てき)埋潰(うめつぶ)していた()がする。

 『四冠(ケセド)』の魔導(まどう)(つう)じないなら、団長以外(だんちょういがい)(もの)魔導(まどう)使物(つかいもの)にならない。

 しかも物理攻撃(ぶつりこうげき)損傷(そんしょう)(あた)えても、再生(さいせい)されれば意味(いみ)がない。


 つまり(たの)みは団長(だんちょう)魔導(まどう)と、そして、(わたし)武器(ぶき)だけということだ。

 団長(だんちょう)帝国(ていこく)でも数少(かずすく)ない『三冠(ビナル)』の魔導師(まどうし)であり、照応(しょうおう)する元素(げんそ)(かみなり)である。


副長(ふくちょう)、しばらく指揮(しき)(たの)む」


 団長(だんちょう)は、(こし)()げていた愛用(あいよう)武器(ぶき)()にとり、()()じられた。

 すると全身(ぜんしん)が、ほんのりと(あお)(かがや)(はじ)める。

 充典(ドルヨル)(はい)られたのだ。


 団長(だんちょう)武器(ぶき)、それは『把剣(はけん)』と()ばれる非常(ひじょう)特殊(とくしゅ)なものである。


 通常(つうじょう)(けん)のような(つか)はなく、弓形(ゆみがた)(やいば)だけで形成(けいせい)された(けん)で、(やいば)(ひと)前腕(ぜんわん)ほどの(なが)さがある。

 (やいば)()中央(ちゅうおう)には持手(もちて)となる(あな)があり、そこに(ゆび)()れて(にぎ)る。

 つまり、(にぎ)った(こぶし)(うえ)弓形(ゆみがた)(やいば)()っている(かたち)となる。


 (おも)攻撃態様(こうげきたいよう)は、(てき)(なぐ)るように()ることであり、また両端(りょうたん)にある(するど)刃先(はさき)()すこともできる。

 戦術(せんじゅつ)独特(どくとく)で、騎士(きし)一般(いっぱん)(もち)いる剣術(けんじゅつ)とは(まった)(こと)なり、格闘戦(かくとうせん)における拳術(けんじゅつ)応用(おうよう)したものだそうだ。


 (すき)()いて()げようとするジョルジに、二本(にほん)短剣(たんけん)(かま)えたイスメトが、(おそ)いかかった。

 (かれ)(はし)りながら、短剣(たんけん)(こおり)元素(げんそ)を『沾漸(せんぜん)』させた。


 (こおり)元素(げんそ)(まと)い、(しろ)(ひか)短剣(たんけん)は、(きた)えられた(はがね)さえ容易(ようい)切裂(きりさ)くことができる。

 また、(やいば)()れた箇所(かしょ)には氷魔導(ひょうまどう)の『凍砕(とうさい)』の(わざ)(はたら)き、部分的(ぶぶんてき)に、対象(たいしょう)(こお)らせ、同時(どうじ)粉砕(ふんさい)する。


 さらにイスメトは『亢躰術(こうたいじゅつ)』の『捷塁(しょうるい)』の(わざ)身体速度(しんたいそくど)上昇(じょうしょう)させていた。

 一般(いっぱん)騎士(きし)ならば身体(からだ)(こわ)しかねない(はや)さでジョルジに肉迫(にくはく)し、肉眼(にくがん)では(とら)えきれない斬撃(ざんげき)()りつけていく。


 ジョルジはイスメトを(つか)まえようとするが()(くぐ)られ、四方八方(しほうはっぽう)から斬撃(ざんげき)()びせられた。

 ただそんな激烈(げきれつ)攻撃(こうげき)でさえ、ジョルジの(あお)(よろい)(きず)をつけることはできていなかった。


 イスメトが攻撃(こうげき)から一旦外(いったんはず)れると、間髪入(かんはついれず)れず左右(さゆう)からセルカンとベラトが連携(れんけい)して攻撃(こうげき)(くわ)える。

 風魔導(ふうまどう)沾漸(せんぜん)され(みどり)(ひか)るセルカンの(けん)には、『剥擂(はくらい)』の(わざ)(はたら)いている。

 『剥擂(はくらい)』をうけた箇所(かしょ)は、(かぜ)元素(げんそ)(えぐ)りとられ、(ふか)傷痕(きずあと)(のこ)るのだが、もちろん(あお)(よろい)には効果(こうか)がない。


 一方(いっぽう)、ベラトは(けん)()るいながら、時折(ときおり)至近距離(しきんきょり)で『炎弾(えんだん)』を打込(うちこ)んでいるが、やはりこれも(うで)振払(ふりはら)われてしまっていた。

 (かれ)三人(さんにん)だけでは、包囲網(ほういもう)(やぶ)られるのも時間(じかん)問題(もんだい)だろう。

 だが四人(よにん)なら、当然(とうぜん)三人(さんにん)よりは(なが)時間(じかん)(かせ)げるはずだ。


援護(えんご)するわ!」


 (こし)()げていた愛用(あいよう)武器(ぶき)()き、(わたし)包囲網(ほういもう)(くわ)わった。

 

 (わたし)が『誉武式(よぶしき)』に合格(ごうかく)し、騎士(きし)になれた理由(りゆう)、それは剣術(けんじゅつ)魔導(まどう)(みと)められたからではない。

 ユルダクル()(つた)わる()武器(ぶき)(あつか)いに習熟(しゅうじゅく)していたからだ。


 その武器(ぶき)は、『(じゅう)』と()ばれている。


 元々(もともと)魔族(まぞく)使(つか)っていた武器(ぶき)だったが、『災厄(さいやく)(とき)以降(いこう)私達(わたしたち)人間(にんげん)(つた)わった。

 『炸薬(さくやく)』によって(ちい)さな金属(きんぞく)(たま)()ち、(てき)(たお)すもので、弓矢(ゆみや)よりも(はるか)かに殺傷力(さっしょうりょく)(たか)い。

 

 本来(ほんらい)ならもっと(ひろ)まっていて()いはずなのだが、人間社会(にんげんしゃかい)には『災厄(さいやく)(とき)』の(とき)出回(でまわった)った(ぶん)しか(のこ)っていない。

 なぜなら、分解(ぶんかい)構造(こうぞう)解析(かいせき)してはみたが、成造(せいぞう)には高度(こうど)技術(ぎじゅつ)必要(ひつよう)であり、人間(にんげん)錬金術師(れんきんじゅつし)では再現(さいげん)不可能(ふかのう)だということが判明(はんめい)したからだ。


 現状(げんじょう)帝国全体(ていこくぜんたい)確認(かくにん)されている(じゅう)(かず)は100(ちょう)未満(みまん)とされている。

 その(うえ)、1000(ねん)という歳月(さいげつ)経年劣化(けいねんれっか)し、武器(ぶき)として使物(つかいもの)になるのは、さらにその(いち)二割(にわり)程度(ていど)なのだ。


 そんな貴重(きちょう)(じゅう)(ひと)つが、()がユルダクル()代々伝(だいだいつた)わっていた。

 しかも先祖(せんぞ)手入(ていれ)れが行届(いきとど)いており、現役(げんえき)使(つか)うことができる。


 (わたし)(おさな)(ころ)武器愛好家(ぶきあいこうか)だった(ちち)より、(じゅう)(あつか)いの手解(てほど)きを()け、その仕組(しくみ)みや使用法(しようほう)精通(せいつう)していた。

 また(たま)については、資金(しきん)伝手(つて)さえあれば西(にし)大陸(たいりく)にある黒妖精(くろようせい)(くに)ザナートから輸入(ゆにゅう)できたので、射撃(しゃげき)修練(くんれん)事欠(ことか)くことはなかった。


 そしていつしか(わたし)は、十代前半(じゅうだいぜんはん)で、直線距離(ちょくせんきょり)で30クルシュ(ちか)(はな)れた(まと)にも命中(めいちゅう)させることができる技量(ぎりょう)獲得(かくとく)していたのだ。


 しかし、ジョルジの(あお)(よろい)(たい)しては、どんなに(じゅう)物理的攻撃力ぶつりてきこうげきりょく(すぐ)れているとしても、損傷(そんしょう)(あた)えるのは(むずか)しいだろう。


 ただ、それは通常(つうじょう)物理攻撃(ぶつりこうげき)という前提(ぜんてい)での(はなし)ではある。


 通常(つうじょう)でない攻撃(こうげき)なら?

 (よろい)破壊(はかい)できるかもしれない。


 近年(きんねん)、ザナートでは特殊(とくしゅ)兵器(へいき)開発(かいはつ)されていた。

 それは『魔導弾(まどうだん)』と()ばれるものである。


 武器(ぶき)などに沾漸(せんぜん)された元素(げんそ)(ちから)は、術者(じゅつしゃ)恃気(エスラル)()きたり、意志(いし)中断(ちゅうだん)されれば、効果(こうか)()くなる。

 しかし魔導弾(まどうだん)一度(いちど)沾漸(せんぜん)させると、術者(じゅつしゃ)意志(いし)から独立(どくりつ)し、数年間(すうねんかん)それを保持(ほじ)することができるのだ。


 これは画期的(かっきてき)なことである。

 なぜなら、自分(じぶん)の『冠位(ジルヴェ)』や元素照応性(げんそしょうおうせい)制限(せいげん)されることなく、他人(たにん)沾漸(せんぜん)させた、あらゆる元素(げんそ)(たま)(じゅう)()つことができるからだ。

 なので(わたし)はアザットとの(いくさ)(そな)えて、魔導弾(まどうだん)大量(たいりょう)輸入(ゆにゅう)したのだった。


 魔導弾(まどうだん)具体的(ぐたいてき)取扱(とりあつか)(かた)(つぎ)(とお)りだ。

 まずあらかじめ『三冠(ビナル)』で(ほのお)照応性(しょうおうせい)()魔導師(まどうし)(たの)んで、魔導弾(まどうだん)に『三冠(ビナル)』の(ほのお)(ちから)沾漸(せんぜん)してもらっておく。

 そうすれば、(わたし)のように『四冠(ケセド)』で照応性(しょうおうせい)(かみなり)魔導師(まどうし)でも、その(たま)使(つか)うことで、自分(じぶん)より『冠位(ジルヴェ)』が(うえ)で、照応性(しょうおうせい)(こと)なる炎魔導(えんまどう)攻撃(こうげき)(てき)(くわ)えることができる、というわけだ。


 六席(ろくせき)から首席(しゅせき)までの勇者(ゆうしゃ)全員(ぜんいん)、『三冠(ビナル)』の魔導師(まどうし)である。

 (ほか)にも『三冠(ビナル)』の魔導師(まどうし)はいるが、(わたし)(した)しくしているのは勇者(ゆうしゃ)(うち)二人(ふたり)だけだ。

 一人(ひとり)はもちろん団長(だんちょう)、もう一人(ひとり)二席(にせき)勇者(ゆうしゃ)である氷魔導(ひょうまどう)使手(つかいて)“バクシュ・ルズガルグル”だ。


 バクシュは()さくな人物(じんぶつ)で、(わたし)魔導弾(まどうだん)の『沾漸(せんぜん)』を(たの)むと(こころよ)引受(ひきう)けてくれた。

 もちろん団長(だんちょう)からも雷魔導弾(らいまどうだん)十分(じゅうぶん)頂戴(ちょうだい)している。  

 なので(いま)(じゅう)回転式弾倉(かいてんしきだんそう)(なか)には四発(よんぱつ)雷魔導弾(らいまどうだん)一発(いっぱつ)氷魔導(ひょうまどう)(だん)(はい)っていた。


 きっと、この特殊(とくしゅ)魔導弾(まどうだん)という兵器(へいき)なら、ジョルジに通用(つうよう)するのではないだろうか。


 ベラトが(けん)突出(つきだ)しながら、身体(からだ)ごとジョルジに突進(とっしん)する。

 剣先(けんさき)はジョルジの(はら)直撃(ちょくげき)するが、(よろい)硬度(こうど)表面(ひょうめん)(なめ)らかさによって上滑(うわすべ)りし、ベラト自身(じしん)がジョルジに(あたま)から体当(たいあた)たりする格好(かっこう)になった。


 ベラトを身体(からだ)受止(うけと)めたジョルジは、()んだ両手(りょうて)背中(せなか)(たた)きつける。

 (はげ)しく地面(じめん)()ちつけられて()()くベラト。

 その(あたま)踏潰(ふみつぶ)そうとジョルジは右脚(みぎあし)()げた。


 (わたし)はそれを阻止(そし)するため、ジョルジの(ひだり)(かた)()った。


 (するど)銃声(じゅうせい)(もり)(とどろ)く。

 銃声(じゅうせい)(かさ)なるようにジョルジが(ひく)(うな)った。


 雷魔導弾(らいまどうだん)(よろい)破壊(はかい)し、内側(うちがわ)にあるジョルジの肉体(にくたい)にまで損傷(そんしょう)(あた)えたのだ。

 破壊(はかい)できたのは、赤子(あかご)指先(ゆびさき)ほどの範囲(はんい)ではあるが、そこから(かす)かに()飛散(とびち)るのを確認(かくにん)した。

 雷魔導(らいまどう)沾漸(せんぜん)(わざ)は、『震捶(しんすい)』と()ばれ、攻撃部分(こうげきぶぶん)感電(かんでん)させ、破砕(はさい)するのだ。


 (おも)った(とお)魔導弾(まどうだん)通用(つうよう)した。

 すぐさま(わたし)は、(のこ)りの雷魔導弾(らいまどうだん)全弾(ぜんだん)、できる(かぎ)(まと)(しぼ)って、ジョルジの左肩(ひだりかた)()()んだ。


 連続(れんぞく)して魔導弾(まどうだん)()たった部分(ぶぶん)破砕(はさい)されると、(わず)かだが先程(さきほど)よりも(あな)(おお)きく(ひろ)がる。

 もちろん飛散(とびち)()(りょう)と、ジョルジの唸声(うなりごえ)(おお)きくなった。


「イスメト! (ひだり)(かた)(よろい)破壊(はかい)したわ、そこを(ねら)って!」


承知(しょうち)


 イスメトは『捷塁(しょうるい)』の(わざ)何度(なんど)上進(じょうしん)させ、さらに速度(そくど)()げ、ジョルジの左側(ひだりがわ)から攻撃(こうげき)をしかけた。

 『捷塁(しょうるい)』を一回(いっかい)上進(じょうしん)させる(たび)に、普段(ふだん)状態(じょうたい)から10(ぶん)の1ずつ速度(そくど)()がっていく。


 ()れないと(むずか)しいが、亢躰術(こうたいじゅつ)使(つか)(たび)に、術者(じゅつしゃ)下腹部(かふくぶ)が、ほのかな薄紫(うすむらさき)(ひかり)(はな)つのを()ることができる。

 なので、下腹部(かふくぶ)注視(ちゅうし)していれば、(わざ)発動(はつどう)()かるのだ。

 

 イスメトはジョルジに急迫(きゅうはく)左肩(ひだりかた)(あな)(ねら)ったが、(あお)(よろい)一呼吸(ひとこきゅう)のうちに(あな)修復(しゅうふく)してしまっていた。

 せっかく攻略(こうりゃく)糸口(いとぐち)()つけたと(おも)ったが、修復(しゅうふく)(はや)すぎる。

 これでは()(ほどこ)しようがない。


 絶望的(ぜつぼうてき)気持(きも)ちになったとき、天佑(てんゆう)のように団長(だんちょう)(こえ)()こえてきた。


「すまん、()たせたな。(みな)(すこ)(やす)んでくれ」


 団長(だんちょう)は、ゆっくりとジョルジの(まえ)(すす)()た。

 ジョルジは、まるで(ひさ)しぶりに()った知合(しりあ)いのように(ちか)づいてくる団長(だんちょう)戸惑(とまど)い、(うご)きを()めている。

 私達(わたしたち)啞然(あぜん)として、様子(ようす)見守(みまも)った。


「ジョルジ・エシャルメン、(わたし)は、お(まえ)のような(もの)()っていた。――イドリスと皇女(おうじょ)がいない(むな)しさを、お(まえ)ならば()たしてくれそうだ……」


 団長(だんちょう)は、まるで(あい)告白(こくはく)のように、(かた)られる。

 (わたし)(こころ)にジョルジに(たい)する嫉妬心(しっとしん)()きあがった。


「イドリスの(よろい)(つぶ)すために()んだ(わざ)、『雷蛇穿(らいじゃせん)』。お(まえ)(ため)させてもらう」


 宣告(せんこく)するやいなや、(ゆる)やかに(ひか)っていた団長(だんちょう)全身(ぜんしん)(はげ)しく(かがや)いた。

 すると、その(かがや)きから紺色(こんいろ)(かみなり)元素(げんそ)が、(こま)かい(つぶ)(かたち)無数(むすう)()()し、(まわ)りに()かんだ。


 『雷弾(らいだん)』の(わざ)()ているが(おお)きさと(かず)(ちが)う。

 通常(つうじょう)元素弾(げんそだん)は、(ひと)(こぶし)ほどになるが、その(つぶ)指先(ゆびさき)ほどの(おお)きさしかない。

 もしそれぞれの(つぶ)通常(つうじょう)雷弾(らいだん)匹敵(ひってき)する威力(いりょく)()っているとするなら、団長(だんちょう)は『発動(はつどう)態様(たいよう)』を相当修練(そうとうしゅうれん)されたに(ちが)いない。


 だが、それ以上(いじょう)問題(もんだい)なのは、あの(かず)だ。

 きっと数百(すうひゃく)はあるだろう。

 元素弾(げんそだん)率導(テシュヴィク)(あやつ)るには、自分(じぶん)意志(いし)をそれぞれの(たま)配分(はいぶん)する必要(ひつよう)がある。


 一般(いっぱん)魔導師(まどうし)(あやつ)れるのは2、3()であり、(おお)くても5、6()限度(げんど)だろう。

 数百(すうひゃく)元素弾(げんそだん)率導(テシュヴィク)しようとすれば、発狂死(はっきょうし)しても、おかしくないのだ。


 団長(だんちょう)一体(いったい)どういう修練(しゅうれん)をされたのだろうか、想像(そうぞう)すると(おそ)ろしくなる。


 把剣(はけん)(にぎ)った右腕(みきうで)(たか)(かか)げられる。

 すると()らばるように()いていた(かみなり)(つぶ)は、把剣(はけん)のすぐ(うえ)宙空(ちゅうくう)(あつ)まって一列(いちれつ)(なら)び、まるで(へび)のようにくねり(はじ)めたのだ。

 まさに『雷蛇(らいじゃ)』である。


 そして、さながら開始(かいし)()げる(かね)()つかのように、団長(だんちょう)はジョルジに()かって右腕(みぎうで)振下(ふりお)ろした。  

 すると()(はな)たれた紺色(こんいろ)(へび)は、猛然(もうぜん)獲物(えもの)突進(とっしん)していったのだ。


 雷蛇(らいじゃ)(たた)()とそうとするジョルジの(うで)(かわ)しながら素早(すばや)()びまわる。

 しばらくすると、(へび)翻弄(ほんろう)されるジョルジに、(あせ)りの(いろ)()(はじ)める。


 それを見計(みはか)らったように、(いま)まで()じろぎせずジョルジを()つめていた団長(だんちょう)が、突如(とつじょ)として攻撃(こうげき)(くわ)わった。

 団長(だんちょう)参戦(さんせん)により、集中力(しゅうちゅうりょく)(みだ)されるジョルジ。


 雷蛇(らいじゃ)は、その(こころ)(すき)見逃(みのが)さず、ついにジョルジ右胸(みぎむね)()らいついた。


 (わたし)はそこで、団長(だんちょう)がこの(わざ)()んだ意図(いと)(おも)(いた)った。


 ジョルジの(よろい)は『三冠(ビナル)』の魔導(まどう)(きず)つきはするが、すぐに再生(さいせい)してしまう。

 といういことは、連続(れんぞく)(おな)箇所(かしょ)元素弾(げんそだん)()(つづ)けて再生(さいせい)阻止(そし)すれば、内側(うちがわ)肉体(にくたい)確実(かくじつ)攻撃(こうげき)することができる。

 この事実(じじつ)先程(さきほど)(じゅう)での攻撃(こうげき)証明(しょうめい)されている。

 

 さすがは団長(だんちょう)

 イドリスとの(たたか)いで(よろい)弱点(じゃくていん)見抜(みぬ)いていたのだ。

 おそらくこの状況(じょうきょう)団長(だんちょう)(おも)(えが)いた(とお)りの展開(てんかい)(ちが)いない。


 だが、そうは()っても、この魔導(まどう)常人(じょうじん)には真似(まね)できない。

 実行(じっこう)するには、(おそ)ろしいほど強靭(きょうじん)精神(せいしん)大量(たいりょう)恃気(エスラル)必要(ひつよう)になるからだ。


 (かみなり)(つぶ)連続(れんぞく)して右胸(みぎむね)(おな)部分(ぶぶん)()たり(つづ)ける。 

 当然(とうぜん)(よろい)再生(さいせい)()いつかず、(あな)(ひろ)がり(はじ)めた。

 もちろん(へび)(つぶ)(あたま)から(じゅん)()たることで(かず)()らし、(なが)さが(みじか)くなっていく。


 ジョルジは(くる)しげな唸声(うなりごえ)()げながら(へび)(つか)もうとするが、その(たび)団長(だんちょう)攻撃(こうげき)をしかけてくるので成功(せいこう)していない。


 時間(じかん)()つほど、(よろい)(なか)にある肉体(にくたい)への影響(えいきょう)(おお)きくなっていく。

 皮膚(ひふ)(やぶ)れ、(にく)をえぐり、(あな)から()があふれ、地面(じめん)(したた)った。

 

 ジョルジがまた、森全体(もりぜんたい)()るがすほどの()たけびを()げる。

 しかしそれは、従前(じゅうぜん)(いか)りと苛立(いらだ)ちから(はっ)せられた威嚇(いかく)(こえ)ではなく、苦痛(くつう)恐怖(きょうふ)からくる悲鳴(ひめい)のように()こえた。


 ジョルジは、(よろい)(へび)(あいだ)強引(ごういん)左手(ひだりて)差入(さしい)れる。

 (むね)()たっていた(つぶ)を、左手(ひだりて)籠手(こて)(ふせ)ぐためだ。


 (みじか)くなった雷蛇(らいじゃ)は、最後(さいご)(ちから)でジョルジの籠手(こて)(あな)()け、消失(しょうしつ)していった。

 しかし雷蛇(らいじゃ)()けた(あな)掌大(てのひらだい)にまで(ひろ)がり、そこから(のぞ)(むね)皮膚(ひふ)は、雷魔導(らいまどう)効果(こうか)で、()け、()かれ、(ひど)有様(ありさま)になっていた。


(わたし)(かんが)えはっ! 間違(まちが)って! いなかったなっ!」


 『捷塁(しょうるい)』を一瞬(いっしゅん)何段階(なんだんかい)上進(じょうしん)させ、攻撃(こうげき)速度(そくど)急上昇(きゅうじょうしょう)させた団長(だんちょう)は、両手(りょうて)把剣(はけん)正面(しょうめん)からジョルジに連続(れんぞく)()りつけていく。

 ジョルジは、あまりの(はや)さについていけず、咄嗟(とっさ)両前腕(りょうぜんわん)(かお)(まえ)交差(こうさ)させて身体(からだ)(まる)め、防御(ぼうぎょ)(かた)めた。


 団長(だんちょう)は、それを()()ると、唐突(とうとつ)攻撃(こうげき)方向(ほうこう)()えて右手(みぎて)把剣(はけん)振上(ふりあ)げ、ジョルジの(あたま)(ねら)った。

 意表(いひょう)()かれたジョルジは、(あたま)(まも)ろうと両腕(りょううで)をかざす。

 そこに(すき)()まれた。


 右手(みぎて)攻撃(こうげき)は、(おとり)だっのだ。


 (つくえ)(こぶし)(たた)くように、左手(ひだり)把剣(はけん)(はし)にある刃先(はさき)が、まだ再生(さいせい)しきれていないジョルジの右胸(みぎむね)(あな)突刺(つきさ)ささる。


 ついに本当(ほんとう)悲鳴(ひめい)がジョルジの(くち)から(ほとばし)った。


 ジョルジは突刺(つきさ)さった刃先(はさき)()くために素早(すばや)く、しゃがみこむ。

 傷口(きずぐち)から大量(たいりょう)()噴上(ふきあ)がった。


 しゃがんだ状態(じょうたい)から急速(きゅうそく)後方回転(こうほうかいてん)繰返(くりかえ)し、団長(だんちょう)から距離(きょり)をとったジョルジは、(きびす)(かえ)逃出(にげだ)した。


()がすな!」


 団長(だんちょう)号令(ごうれい)(ひび)く。

 イスメト、団長(だんちょう)、セルカン、(わたし)、フェトヒの(じゅん)(あと)()った。


 たとえ(よろい)再生(さいせい)しても、肉体(にくたい)についた(きず)(なお)らない。

 あれだけの()噴出(ふきだ)したのならば、治癒(ちゆ)(じゅつ)をかけない(かぎ)り、(よろい)(なか)でも出血(しゅっけつ)(つづ)く。

 ジョルジの(ちから)(よわ)め、(いのち)さえ(あや)うくするだろう。

 討伐(とうばつ)好機(こうき)である。


 (あん)(じょう)、ジョルジの(うご)きは(にぶ)っていき、(はし)速度(そくど)急速(きゅうそく)()ちてきていた。

 一方(いっぽう)()いかける私達(わたしたち)攻撃(こうげき)()(はげ)しくなっていった。

 (おお)きな痛手(いたで)(あた)えられていないが、消耗(しょうもう)させるには充分(じゅうぶん)だ。


 かなり(なが)(あいだ)、ジョルジは()(つづ)けた。

 だが(もり)は、どちらに()げても()わりはしない。

 どこまでも(くら)く、どこまでも(つめ)たい。

 ()げても、()げても、()(ひかり)()ることはない。


 (うん)見放(みはな)された人生(じんせい)(おな)じだ。

 最後(さいご)()きつく場所(ばしょ)墓場(はかば)である。


 だが、そんな(わたし)予想(よそう)(はん)し、突然(とつぜん)(もり)()れ、視界(しかい)(ひら)ける。

 (ふゆ)なのに(みどり)(くさ)(しげ)野原(のはら)(あらわ)れたのだ。


 (あたた)かな()(ひかり)()(そそ)ぐ、その野原(のはら)(おく)に、瀟洒(しょうしゃ)丸太小屋(まるたごや)()っていた。


 丸太小屋(まるたごや)(まえ)で、一人(ひとり)女性(じょせい)(けん)()っている。


 女性(じょせい)はジョルジと私達(わたしたち)()づくと、(けん)(かま)えた。

 (わす)れるはずのない(かがや)きが(わたし)脳裏(のうり)(つらぬ)く。

 彼女(かのじょ)(ひとみ)赤銅色(しゃくどういろ)(ひかり)(はな)っていたのだ。


「ヒュリア皇女(おうじょ)!」


 (わたし)(おも)わず(さけ)んだ。

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