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木々開花、良い!<6>

 (つぎ)()、しっかり回復(かいふく)したヒュリアは、心配(しんぱい)かけたことを(あやま)ってくれました。


 でもホント、無事(ぶじ)()かった。

 フェルハトさんのおかげです。

 どうか成仏(じょうぶつ)してください。

 南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)……。

 おまえもな、ってつっこまれそうですけどね。


 自分(じぶん)(たす)けてくれた(ひと)がフェルハトだと()ったヒュリアは、ものすごぉく(くや)しがってます。

 色々(いろいろ)()きたかったみたいです。

 彼女(かのじょ)にとってフェルハトは、まさに英雄(ヒーロー)なんでしょう。


 『魂露(イクシル)』の方は、『倉庫(そうこ)』の(なか)でも、ずっと振動(しんどう)(つづ)けています。

 しかし、どういう原理(げんり)振動(しんどう)(つづ)いてるんでしょうかね。

 無味無臭(むみむしゅう)()()(みず)()わらないのに、ホント不思議(ふしぎ)液体(えきたい)です。


「キャファメフぅぅぅぅ、うにぇっ、うにぇっ……」


 部屋(へや)(すみ)から(みょう)(こえ)()こえてきます。


 アティシュリが(ゆか)(すわ)りこんで()いているのです。

 ()ちた(なみだ)(ゆか)にキャラメルの()()いてます。


 ずっと()ないふりしてたんですけど、なんとかしろってヒュリアに()合図(あいず)されたので、仕方(しかた)なく(こえ)をかけました。


「――アティシュリさん、この(さき)、ああいう危険(きけん)なことがないよう、ちゃんと事前(じぜん)説明(せつめい)してくださいね。それが約束(やくそく)できるなら、キャラメルの(のこ)り、支給(しきゅう)してもいいですよ」


 ドラゴン救済(きゅうさい)プログラムを発動(はつどう)しました。


「ふぉんにょかっ?!」


 ガバッと(かお)()げるアティシュリ。

 ()げた(いきお)いで(なみだ)鼻水(はなみず)飛散(とびち)ります。


 きちゃないなぁ。


「――する、するぅ。絶対(ぜったい)するぅ!!!」


 ふにゃっと(わら)ったアティシュリは身体(からだ)をくねらせながら立上(たちあ)がります。

 ときどき(かる)いんだよな、この現金(げんきん)ドラゴン。


「いいでしょう。それと、お手伝(てつだ)いしてくれれば、キャラメルの(ほか)にチーズケーキもつけますよ」


「チーズ、ケ、ケーキだとぉ、な、なんだそりゃ?」


牛乳(ぎゅうにゅう)発酵(はっこう)させて(つく)った固形分(こけいぶん)砂糖(さとう)(たまご)なんかを()ぜて()いたお菓子(かし)ですよ。甘味(あまみ)だけでなく、ほのかな酸味(さんみ)塩味(えんみ)なんかも(あじ)わえちゃう、ちょっと大人(おとな)逸品(いっぴん)なんす」


牛乳(ぎゅうにゅう)発酵(はっこう)させた固形分(こけいぶん)? そりゃ“ペイニル”のことか? ペイニルで(あま)菓子(かし)(つく)るなんて(はじ)めて()いたぜ。――チーズケーキかぁ、一体(いったい)どんな(あじ)なんだ……?」


 どうやらバシャルではチーズを、ペイニルって()うみたいですね。


 『倉庫(そうこ)』の(なか)牛乳(ぎゅうにゅう)がたくさんあるんで、『調理(ちょうり)』の機能(きのう)でチーズを(つく)ろうとしたんです。

 そしたら『調理(ちょうり)では(つく)れません』という表示(ひょうじ)()ました。


 なんでかなと(おも)ってあれこれ(かんが)えてみたとき、牛乳(ぎゅうにゅう)発酵過程(はっこうかてい)問題(もんだい)がありそうだなと()づきました。

 たぶん、『耶代(やしろ)』の(ちから)だけじゃ()りなくて、菌類(きんるい)()()りる必要(ひつよう)があるから『調理(ちょうり)』だけじゃできないんじゃないかなと。

 

 そんで『耶代(やしろ)』の機能(きのう)(なか)にある『化成(かせい)』に注目(ちゅうもく)したのです。

 漢字(かんじ)から推測(すいそく)したんですけど、説明(せつめい)()たら、やっぱりでした。


生物由来(せいぶつゆらい)酵素(こうそ)によって物質(ぶっしつ)変化(へんか)させるもの。ただし材料(ざいりょう)時間(じかん)必要(ひつよう)である』


 これで牛乳(ぎゅうにゅう)発酵(はっこう)させればチーズがつくれることが()かりました。

 多少時間(たしょうじかん)はかかりますが、醤油(しょうゆ)味噌(みそ)なんかもできるに(ちが)いありません。

 あと、トイレの排泄物(はいせつぶつ)もこれで発酵(はっこう)させて、堆肥(たいひ)にします。

 そんで、出来上(できあ)がった堆肥(たいひ)は『配置(はいち)』の機能(きのう)敷地(しきち)(そと)移動(いどう)させるんです。


 『配置(はいち)』の説明(せつめい)は、こんな(かん)じです。


耶代内(やしろない)にある物品(ぶっぴん)転置(てんち)、もしくは敷地外(しきちがい)への移動(いどう)(おこな)うもの』


 堆肥(たいひ)にしちゃえば、環境(かんきょう)汚染(おせん)することもないし、植物(しょっくぶつ)栄養(えいよう)にもなりますしね。

 耶代(やしろ)機能(きのう)、よく(かんが)えてあります。


 さすが隠者様(いんじゃさま)、クールだねぇ。


「ああ、()かってきたぜぇ……、チーズケーキの(あじ)がよぉ……。じゅる、じゅる……。塩味(えんみ)酸味(さんみ)が、甘味(かんみ)引立(ひきた)てるってわけよ……。じゅる、じゅる……」


 アティシュリは、チーズケーキのマボロシを(あじ)わってるようですな。

 キャラメルのおあずけを()ってるせいで、ハイになってんでしょう。

 (ゆか)()まった(なみだ)(よだれ)追加(ついか)されて、(ちい)さな(いけ)ができちゃいました。


 どんぐりがハマる(まえ)に、(みみ)(そば)でパンパン()(たた)いて、美味(おい)しい(ゆめ)世界(せかい)から現実(げんじつ)連戻(つれもど)します。

 ビクッとしたアティシュリは、()きたばかりみたいに()をこすって、あたりを見回(みまわ)しました。


「――お手伝(てつだ)いしてくれますかねぇ?」


 ()いかけられてハッとしたアティシュリは、(あわ)てて(むね)をたたきます。


「お、おう、まかしとけ!」


 ボケ気味(ぎみ)のドラゴンに(あき)れながら、『倉庫(そうこ)』しまっておいた『魂露(イクシル)』を取出(とりだ)しました。

 もちろん酒盃(ゴブレット)から振動(しんどう)(つた)わってきます。


「――結局(けっきょく)、この『魂露(イクシル)』って、どう使(つか)うもんなんですか?」


 (つく)れたのはいいですが、使用法(しようほう)(まった)くわからないのです。


特別(とくべつ)方法(ほうほう)なんてものはねぇぜ。普通(ふつう)(みず)植物(しょくぶつ)にやるときみてぇにすりゃあいいのよ」


「でも、あれだけたくさんあるヤルタクチュに、たったこれだけの『魂露(イクシル)』で()ります?」


問題(もんだい)ねぇ、この一杯(いっぱい)十分(じゅうぶん)だ。――ここのヤルタクチュは元々(もともと)一本(いっぽん)親株(おやかぶ)から()えて(もり)になぅたんだ。だからその親株(おやかぶ)魂露(イクシル)(あた)えりゃ、森全体(もりぜんたい)(もと)(もど)るだろうぜ」


「なるほど。――じゃあ、その親株(おやかぶ)はどこにあるんですかね?」


(たし)かビルルルが最初(さいしょ)(たね)()えたのは小屋(こや)右側(みぎがわ)だったはずだ」


 アティシュリに案内(あんない)されて、その場所(ばしょ)にいってみます。

 そこから(もり)(なが)めてみると、(たし)かに一際(ひときわ)(ふと)くて(たか)()があるのに()づきました。


「あれですかね」


「だろうな」


「そんじゃ、アティシュリ(さま)、お(ねが)いします」


 『魂露(イクシル)』を手渡(てわた)します。


「これが手伝(てつだ)いってわけか?」


「その(とお)りです。(ぼく)敷地(しきち)から()られないし、ヒュリアは()べられちゃうじゃないですか」


 結界(けっかい)一時的(いちじてき)解除(かいじょ)されるのを()て、(くち)(とが)らせるアティシュリ。


「ほらほら、チーズケーキが()ってますって。(たの)みますよぉ」


「ちっ、世界(せかい)守護者(しゅごしゃ)である(おれ)使(つか)いパシリにしやがって。マジでムカつく耗霊(もうりょう)だぜ……」


 ぶつぶつ文句(もんく)()いながらアティシュリは敷地(しきち)()ていき、親株(おやかぶ)へと()かっていきました。

 (もり)(なか)にアティシュリが()えて、しばらく()ったときです。

 突然(とつぜん)視界(しかい)がパッと(あか)るくなったような(かん)じがしました。


「ツクモ、これは……」


 ヒュリアも()づいたようで、()をパチパチさせながら(まわ)りを見回(みまわ)してます。


 特段(とくだん)(なに)かが()わったというわけではないんです。

 ただ、(いま)までの(もり)よりも、色鮮(いろあざ)やかというか……、なんというか……。

 (はじ)めてコンタクトつけたとき、みたいな。


 チャイムが()って、羅針眼(らしんがん)立上(たちあ)がります。


任務(にんむ)達成(たっせい)されました』


 視界(しかい)中央(ちゅうおう)青文字(あおもじ)で、これが表示(ひょうじ)されたのです。


 よっしゃぁっ!

 任務達成(にんむたっせい)

 (なん)報酬(ほうしゅう)もらえんのかっ?!


 また(あたら)しい魔導(まどう)取得(しゅとく)したとか?

 インペリオ!とかクルーシオ!とか杖使(つえつか)って(とな)えたいよねぇ。


 強力(きょうりょく)神器(じんき)()(はい)るとか?

 エクスカリバー!とかグングニール!とか(さけ)んで()めポーズしたいよねぇ。


 だげど、羅針眼(らしんがん)は、うんともすんとも状態(じょうたい)です。


 (なん)もないんかい?

 (うそ)でしょ。

 あんなに苦労(くろう)させてといて。


 『耶代(やしろ)』さんよぉ!

 どうなってんだぁ、ああん?!


 羅針眼(らしんがん)()かって悪態(あくたい)()いてると、アティシュリが(もど)って()ました。


「うまくいったみてぇだな。あいつも(わる)(ゆめ)から()めたみたぇだったぜ」


 親株(おやかぶ)(ほう)振返(ふりかえ)るアティシュリ。


「じゃあ、もう(ひと)()べないんですよね?」


「ああ。結界(けっかい)()いてみろ」


 半信半疑(はんしんはんぎ)でしたが、アティシュリを(しん)じて結界(けっかい)()いてみました。

 これまでずっと『耶代(やしろ)』を(まも)ってくれた、薄青(うすあお)いドームが消失(しょうしつ)していきます。


 これまで結界(けっかい)解除(かいじょ)一瞬(いっしゅん)でしたが、完全(かんぜん)()えると、(そと)空気(くうき)一斉(いっせい)(なが)()んでくるのがわかりました。

 もうすぐ(ふゆ)なのに、とても(さわ)やかな新緑(しんりょく)(かお)りがします。


「ヒュリア、(そと)()てみろ」


「は、はい……」


 ヒュリアは、アティシュリに(うなが)され、(おそ)(おそ)空地(あきち)(あし)踏入(ふみい)れます。

 そして、あまり(おと)()てないよう警戒(けいかい)しながら(しず)かに(ある)き、空地(あきち)中央付近(ちゅうおうふきん)までたどり()きました。


「ツクモ! 大丈夫(だいじょうぶ)のようだ!」


 こちらを振返(ふりかえ)り、にこやかに(さけ)ぶヒュリア。

 なんだか(うれ)しそうです。

 まあ、10日以上(かいじょう)結界(けっかい)(なか)にいたんですからね。

 開放感(かいほうかん)(あじ)わってるんでしょう。


 そこでまたチャイムが()り、羅針眼(らしんがん)立上(たちあ)がります。


 おう、やっときたな羅針眼(らしんがん)さんよぉ。

 さあさあ、一体(いったい)(なに)をくれるんだい?


 ところが中央(ちゅうおう)(あら)われた文章(ぶんしょう)は、これでした。


(あたら)しい任務(にんむ)があります』


 へっ?

 (あたら)しい『任務(にんむ)』ですとっ?! 

 報酬(ほうしゅう)じゃなくて?

 やり()えたばかりですぜ。


 『任務(にんむ)』の項目(こうもく)()()けます。

 (たし)かに以前(いぜん)とは(ちが)文章(ぶんしょう)表示(ひょうじ)されていました。


任務(にんむ)耶卿(やきょう)による『霊器(れいき)』の成造(せいぞう)完遂(かんすい)させる』


 『霊器(れいき)』を成造(せいぞう)する?

 『耶卿(やきょう)』が?

 つまり、ヒュリアに『霊器(れいき)』を(つく)れって()ってるわけ?


 空地(あきち)(たの)しそうに散歩(さんぽ)してるヒュリアが()(はい)ります。


 またこんなことをお(ねが)いをしなきゃなんないのかよ……。

 『耶代(やしろ)』さん、殺生(せっしょう)でんがな。


 (あたま)(かか)えてると、()(まえ)地面(じめん)が、なぜが盛上(もりあ)がってきました。 

 そして、そこから巨大(きょだい)不気味(ぶきみ)なものが()てきたのです。


「うわぁぁぁっ!」


 (おも)わず尻餅(しりもち)ついちゃいます。

 本来(ほんらい)(おど)かすのは、こっちの役目(やくめ)なのに。


「おう、(めずら)しい(きゃく)()たじゃねぇか」


 アティシュリは、やってきた“それ”を面白(おもしろ)そうに(なが)めてます。


 地面(じめん)から(あら)われたものの正体(しょうたい)

 それは、巨大(きょだい)赤黒(あかぐろ)(むし)でした。

 低学年(ていがくねん)児童(じどう)くらいの(おお)きさがあります。


「なんなんすか、こいつ?!」 


(あり)だ」


(あり)?! こんなにデカいのに?!」


「もちろん普通(ふつう)(あり)じゃねぇ。『妖蟲(ボクボジェイ)』の一種(いっしゅ)で『城蟻(ディヴィク)』ってやつだ」

 

 『妖蟲(ボクボジェイ)』っていうのは、『妖物(グルヌシュ)』の(むし)バージョンです。


「その城蟻(ディヴィク)が、なんで(きゅう)()たんですか?!」


 (むし)(べつ)苦手(にがて)じゃないんですけど、こんなにデカいと、さすがにキモ(こわ)いです。


(おれ)()るかよ。――でもまあ、ヤルタクチュが人喰(ひとく)いをやめたんで、この(あた)りを自由(じゆう)(うご)けるようになったからじゃねぇか。人喰(ひとくい)って()ったって、人間(にんげん)だけを()ってたわけじゃねぇだろうしな。()(もん)なら、(なん)でも養分(ようぶん)にしちまえるんだからよ」


 城蟻(ディヴィク)はアティシュリの(ほう)(かお)()け、(ひと)(うで)でも簡単(かんたん)()みちぎりそうなアゴを打合(うちあわ)わせて、ガチガチと(おと)()てました。


「――ほう、耶代(やしろ)()ばれて()たってのか」


 (あり)会話(かいわ)してんの?

 さすがドラゴン。

 いやそれより、耶代(やしろ)()ばれた?

 どゆこと?


「おいっ、ツ、ツクモ、な、なんだ、それはっ?!


 (もど)ってきたヒュリアは、アティシュリの(うし)ろに(かく)れて、城蟻(ディヴィク)様子(ようす)をうかがってます。


 なんだ、それは、ってか?

 そうです、こいつは、(へん)(むし)さんです。 

 もしかして、(むし)、ダメなのかな。


城蟻(ディヴィク)っていう(あり)の『妖蟲(ボクボジェイ)』だってさ」


「どうでもいいから、はやく追払(おいはら)ってくれ!」


 ヒュリアが怒鳴(どな)ります。


 そう()われてもねぇ。

 どうやって追払(おいはら)えばいいんだろ。


 城蟻(ディヴィク)が、今度(こんど)(ぼく)()かってアゴを打合(うちあ)わせました。

 (なに)()ってるんでしょうけど、もちろんわかりません。


「よろこんで(はたら)かせてもらうそうだ」


 アティシュリが通訳(つうやく)してくれます。


 (はたら)く?

 わけがわからず、城蟻(ディヴィク)見下(みお)ろします。

 よく()ると意外(いがい)とカワイイ()をしてますね。


「ツクモぉ! いいから、はやくどっかやってぇ!」


 ヒュリアが()きべそをかきだしました。


 なんか()い。

 (おんな)()っぽいヒュリア、もうちょっと()てたい。


 そのときまたチャイム(おん)()り、羅針眼(らしんがん)立上(たちあ)がります。

 今日(きょう)、『耶代(やしろ)』さん、フル稼働(かどう)ですな。


城蟻(ディヴィク)を『請負(うけおい)登録(とうろく)』してください。登録(とうろく)には『請負役(うけおいやく)』に接触(せっしょく)して、『締印(ていいん)』を()わす必要(ひつよう)があります』


 へっ?

 『請負(うけおい)登録(とうろく)』? 

 人間関係(にんげんかんけい)面倒(めんどう)なんで、『盟友(めいゆう)』と一緒(いっしょ)()けてきたヤツです。

 アティシュリ(さま)に、ずっと()(つか)ってたせいで、すっかり(わす)れていました。


 とりあえず『請負(うけおい)』の(らん)(ひら)き、その説明(せつめい)()てみました。


『『耶代(やしろ)』の外部(がいぶ)において、『耶卿(やきょう)』の目的達成(もくてきたっせい)のために必要(ひつよう)作業(さぎょう)がある場合(ばあい)代行(だいこう)する(もの)を『請負役(うけおいやく)』として登録(とうろく)し、使役(しえき)するもの』


 なるほど。

 『耶代(やしろ)』の(そと)(なに)かやらなきゃならないときでも、(ぼく)(そと)()られません。

 だから、それを()わりにやってもらうわけですね。

  

 うへっ、こんな便利(べんり)機能(きのう)だったなんて。

 もっと(はや)説明(せつめい)()とけば()かった。

 まあでも、結局(けっきょく)使(つか)えなかったか。

 ヤルタクチュが(もと)(もど)って(はじ)めて、『請負役(うけおいやく)』が()れるようになったんだもんね。

 

 ところで『締印(ていいん)』てのは(なん)でしょう?

 説明(せつめい)()てみます。


『『締盟(ていめい)契約(けいやく)』の成立時(せいりつじ)(たが)いの身体(からだ)恃気(エスラル)(えが)かれる五芒星(ごぼうせい)(がた)紋様(もんよう)。『恃絆(エスラルウスル)』の(つな)がりを(しめ)(あかし)


 『締盟契約(ていめいけいやく)』?

 『恃絆(エスラルウスル)

 また新しい用語(ようご)です。

 面倒(めんど)くさいので、アティシュリに()きましょう。


「あのぉ、ちょっといいですかねぇ、アティシュリさん」


「うわっ、また()たな、てめぇのソレ」


 アティシュリは、あからさまに(いや)(かお)してます。


今度(こんど)は、どんな厄介(やっかい)ごとだ?」


 疫病神(やくびょうがみ)みたいに()わないで()しいなあ。

 まあ地縛霊(じばくれい)()たようなもんか……。 


「『締盟契約(ていめいけいやく)』って(なん)なんすかね?」


「ははぁん、なるほどな。『耶代(やしろ)』が城蟻(ディヴィク)を『請負役(うけおいやく)』にしろって()ってきたってわけだな」


「ええ、そうなんです。なんでわかったんですか?」


以前(いぜん)の『耶代(やしろ)』んときにも『請負役(うけおいやく)』がいたんだよ」


「そうだったんですね」

 

「てめぇが『請負(うけおい)』を()らなかったってことは、結局(けっきょく)また『耶代(やしろ)』から命令(めいれい)されたわけだな」


「いや、命令(めいれい)ってほど(つよ)くはないですよ」


()たようなもんだろが」


 (あき)れたように(くび)()るアティシュリ


「まぁいい。(いま)んとこ(がい)はねぇしな。――『請負(うけおい)』ってのは『締盟契約(ていめいけいやく)』と、ほとんど(おな)じもんだ。つまり『妖物(グルヌシュ)』と契約(けいやく)して使役(しえき)する術法(じゅつほう)のことよ」


 つまり、テイムってことですな。


「じゃあ『恃絆(エスラルウスル)』ってのは?」


「『恃絆(エスラルウスル)』は術者(じゅつしゃ)と『締盟獣(ていめいじゅう)』を(つな)恃気(エスラル)(いと)みてぇなもんだ。()には()えねぇけどな」


「それで、なんか身体(からだ)()れて締印(ていいん)をかわせってことらしいんですけど」


「そうだ。『妖物(グルヌシュ)』と『締盟契約(ていめいけいやく)』するには、使役(しえき)しようとする『妖物(グルヌシュ)』に()れて、恃気(エスラル)交流(こうりゅう)させることが必要(ひつよう)なんだ。交流(こうりゅう)がうまくいけば、お(たが)いの身体(からだ)締印(ていいん)()ばれる紋様(もんよう)()かぶのよ。――まあ、とりあえずやってみ。実践(じっせん)するのが一番早(いちばんはえ)ぇぞ」


「これ(さわ)るんですかぁ?」


 ()可愛(かわい)いけど、あのアゴがマジ(こえ)ぇのよ。

 でも、仕方(しかた)ないかぁ。


 右手(みぎて)をゆっくり城蟻(ディヴィク)(ちか)づけます。

 いつ()みつかれるかってヒヤヒヤしてましたが、城蟻(ディヴィク)(うご)かずにいました。


 ゆっくりと城蟻(ディヴィク)のおでこに(てのひら)()てます。

 プラスチックみたいな感触(かんしょく)です。

 すると(てのひら)薄青色(うすあおいろ)(ひか)って、そこから城蟻(ディヴィク)恃気(エスラル)(なが)れこんでいきます。

 そのすぐ(あと)今度(こんど)(ぼく)(なか)城蟻(ディヴィク)から恃気(エスラル)(なが)れこんできたのでした。

 これが交流(こうりゅう)ってやつなんでしょうか。


 交流(こうりゅう)()えた(あと)()(はな)してみると、城蟻(ディヴィク)のおでこと(ぼく)(てのひら)(あお)五芒星(ごぼうせい)(かがや)いていました。

 どちらの五芒星(ごぼうせい)も、しばらく(ひか)っていましたが、そのうち()えていきました。


「それでよし。城蟻(ディヴィク)は『請負役(うけおいやく)』になったぜ」


 アティシュリの言葉(ことば)に、かぶせるようにチャイム(おん)がなりました。

 羅針眼(らしんがん)からの報告(ほうこく)です。


城蟻(ディヴィク)請負(うけおい)登録(とうろく)完了(かんりょう)しました』

城蟻(ディヴィク)に『搬入(はんにゅう)』の資格(しかく)付与(ふよ)しました』


そこで『請負(うけおい)』の(らん)(ひら)いてみると、城蟻(ディヴィク)名前(なまえ)表示(ひようじ)されていました。


城蟻(ディヴィク):1』


 数字(すうじ)は、たぶんですけど、個体数(こたいすう)でしょうかね。

 つまり(かず)()やせるのかもしれません。


 でも、これで()わり?

 なんか物足(ものた)りないっすねぇ。


「で、(きみ)(なに)をしてくれるのだね?」


 城蟻(ディヴィク)()いかけると、また(れい)(こわ)そうなアゴを、ガチガチやりました。

 もちろん、意味(いみ)はわかりません。


「よろしく、だそうだ」


 アティシュリが(やく)してくれます。

 もしかしてこれが任務(にんむ)報酬(ほうしゅう)なんでしょうか。

 ものすごぉく(そん)した気分(きぶん)です。

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