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魔導が好調の鬱陶しい

 これでヒュリアの(てき)(たたか)えんじゃねぇ?

 しかも治癒術(ちゆじゅつ)もあるじゃん!

 マジ(うれ)しいんだけど!


 つまり、こうやって盟友(めいゆう)登録(とうろく)してけば、(ぼく)(ちから)はどんどん()えていくってことですよね。


 だけど問題(もんだい)があります。

 それは耶代(やしろ)からの指示(しじ)がないと登録(とうろく)ができないところです。

 僕発信(ぼくはっしん)登録(とうろく)したいと(おも)っても、方法(ほうほう)がどこにも見当(みあ)たらないのです。

 つまり(すべ)て『耶代(やしろ)』だのみってことです。


 なんかムカつく。

 でも(いま)はとにかく、ヒュリアに報告(ほうこく)しときましょう。


「ヒュリア! なんか炎魔導術(えんまどうじゅつ)治癒術(ちゆじゅつ)取得(しゅとく)しちゃったんだけど! しかも、どっちも『四冠(ケセド)』だってさ! これで(きみ)(やく)()てるかもしれないよ!」


 ヒュリアは意味(いみ)がわからないようで、(かお)が?マークになってます。


「たぶん、『盟友登録(めいゆうとうろく)』の効果(こうか)だと(おも)うんだ」


「そんなことが本当(ほんとう)にあるのか……? 『四冠(ケセド)』といえば中級(ちゅうきゅう)魔導師(まどうし)だぞ」


 困惑気味(こんわくぎみ)のヒュリア。

 まあ(しん)じられなくて当然(とうぜん)でしょうね。

 だってさっきまで家事(かじ)しかできない、メイド地縛霊(じばくれい)だったんですから。


 魔導(まどう)(ちから)ってものは、()まれながらに(ひと)(そな)わっているのですが、最初(さいしょ)は『十冠(マルクト)』か、『九冠(エソド)』クラスだそうです。

 その程度(ていど)だと魔導師(まどうし)といえるほどの(ちから)()せません。

 炎摩導(えんまどう)ならせいぜい、指先(ゆびさき)()をともすぐらいだそうです。

 100(えん)ライターと(おな)じですな。


 魔導師(まどうし)()ばれるには、(すく)なくとも『六冠(テハレト)』まで導迪(デレフ)成長(せいちょう)させなければなりません。

 そのためには本人(ほんにん)才能(さいのう)努力(どりょく)必要(ひつよう)なのです。

 だから高位(こうい)魔導師(まどうし)目指(めざ)(ひと)は、そりゃもう、()()()しんで修練(しゅうれん)するんだそうです。


 もし、昨日(きのう)まで(まった)使(つか)えなかった(やつ)が、いきなり『四冠(ケセド)』になったって()いたら、真面目(まじめ)修練(しゅうれん)してる(ひと)は、絶対(ぜったい)ブチギレるでしょうね。


中級(ちゅうきゅう)魔導師(まどうし)っていうと、どのくらいの(ちから)なのかな?」


「だいたい標準(ひょうじゅん)魔導師(まどうし)は『五冠(ゲブラ)』だから、それより(うえ)といういことになる。(くに)要職(ようしょく)()くこともできる、かなり有用(ゆうよう)存在(そんざい)()っていい」


 ヒュリアの(はなし)では、今現在(いまげんざい)魔導(まどう)最高位(さいこうい)である『一冠(ケテル)』の魔導師(まどうし)はいないそうです。

 公式(こうしき)に、一番高位(いちばんこうい)(みと)められている魔導師(まどうし)は『正統魔導国(せいとうまどうこく)オクル』の三統括(さんとうかつ)()ばれる三人(さんにん)で、『二冠(コクマ)』だそうです。


「そもそも『一冠(ケテル)』の魔導師(まどうし)存在(そんざい)できないと()われてるんだ。『一冠(ケテル)』になると、霊核(ドゥル)がその(ちから)()えられず自壊(じかい)し、(ひと)()んでしまうらしい」


「じゃあ、(いま)まで『一冠(ケテル)』になった(ひと)は、いないってこと?」


「いいや、(わたし)()るかぎり、一人(ひとり)だけいる。聖師(せいし)フゼイフェだ」


「ああ、そゆことなのねぇ」


「ただ、それは人間(にんげん)限定(げんてい)したときの(はなし)でね。妖精族(ビレイ)(ふく)めると、人数(にんずう)()えると(おも)う。(かれ)らは魔導(まどう)との親和性(しんわせい)(たか)いからね。――(じつ)賢者(けんじゃ)アイダンも『一冠(ケテル)』だったという(はなし)だ」


 だからフゼイフェさんも、アイダンさんも三傑(さんけつ)として(みと)められてて、聖師(せいし)とか賢者(けんじゃ)なんていう(たい)そうな(ふた)()がついてるんですね。


「そういうわけで、魔導師(まどうし)(たか)みを目指(めざ)人間(にんげん)(みな)聖師(せいし)フゼイフェを尊敬(そんけい)してやまない。『聖政天授国(せいせいてんじゅこく)マリフェト』の国民(こくみん)などは、地母神様(じぼしんさま)霊龍様(れいりゅうさま)同様(どうよう)信仰(しんこう)しているんだ」


 『正統魔導(せいとうまどう)(こく)オクル』はアイダンの弟子(でし)が、『聖政天授(せいせいてんじゅ)(こく)マリフェト』はフゼイフェの養女(ようじょ)()てたんだそうです。


「ところがだ、(もっと)賢者(けんじゃ)聖師(せいし)敬意(けいい)(はら)うべき魔導王国(まどうおうこく)オクルは、なぜか微妙(びみょう)態度(たいど)でね。賢者(けんじゃ)のことも聖師(せいし)のことも、どこか軽視(けいし)している雰囲気(ふんいき)がある。(なん)らかの政治的思惑(せいじてきおもわく)があるのかもしれないが、理由(りゆう)(さだ)かではないんだ」


 ()()ちないようで(くび)(かしげ)てるヒュリア。

 まあ、(くに)政治(せいじ)なんて大人(おとな)事情(じじょう)雁字搦(がんじがら)めですからね。


 そんなことより、いい機会(きかい)なんで、ずっと()になってことを()いてみようと(おも)います。


「えーと、そのぉ……、ヒュリアは以前(いぜん)魔導(まどう)使(つか)えてたんでしょ?」


「ああ」


「『三冠(ビナル)』だったら、オクルのお(えら)いさんの(ひと)(した)ってことだよね。かなりスゴいことなんじゃないの?」


「うん、まあ、そうだね……。当時(とうじ)(わたし)は『氷刃(ひょうじん)皇女(おうじょ)』なんて()ばれて、いい()になっていたんだ。今思(いまおも)うと(かお)から()()そうなほど()ずかしくなるよ」


 両手(りょうて)(かお)(かく)すヒュリア。

 大丈夫(だいじょうぶ)だよ、って(あたま)をポンポンしたくなりますね。


 魔導師(まどうし)には『元素照応性(げんそしょうおうせい)』ってものがあり、原則(げんそく)一個人(いちこじん)使役(しえき)できる元素(げんそ)一種類(いっしゅるい)(かぎ)られるそうです。

 つまり(ほのお)元素(げんそ)使役(しえき)できるなら、その(ほか)(こおり)とか(みず)元素(げんそ)使(つか)えません。

 『氷刃(ひょうじん)』って()うからには、以前(いぜん)ヒュリアは(こおり)元素魔導(げんそまどう)使(つか)えてたんでしょう。


「それでぇ……、ちょっと()きにくいんだけどぉ……」


「なんだ、(わたし)(きみ)(なか)だ。かしこまることはないぞ」


 (わたし)(きみ)(なか)……。

 甘美(かんび)(ひび)き……。


「――断迪刑(だんじゃくけい)って(いた)かった?」


 刑罰(けいばつ)()けたって()いてから、ずっと(こころ)がモヤモヤしてました。

 こういうのはホント、気分(きぶん)(わる)くなります。


「いいや、(くすり)をもられ、(ねむ)っている(あいだ)執行(しっこう)されたから、(いた)みも(なに)(かん)じなかった。(わたし)魔導(まどう)(おそ)れたケメットとメシフが(めい)じたのだろう」


 権力(けんりょく)にとりつかれた人間(にんげん)って、ホントどうしょもない(やつ)らですよね。


「メシフのことを傲慢(ごうまん)(ののし)りはしたが、(むかし)(わたし)も、かなり傲慢(ごうまん)だったと()わざるを()ない。自分(じぶん)魔導(まどう)過信(かしん)して、未熟(みじゅく)(もの)見下(みくだ)していたんだ。自分(じぶん)こそが(つぎ)英雄(えいゆう)だと自惚(うぬぼ)れてもいた。だが魔導(まどう)(うしな)い、周囲(しゅうい)から(さげす)んだ()()けられて(はじ)めて、それまで見下(みくだ)してきた人達(ひとたち)気持(きも)ちがわかるようになった。だから(いま)はこう(かんが)えている。きっと(かみ)が、(かれ)らの気持(きも)理解(りかい)させるために、(わたし)から魔導(まどう)(うば)ったんだとね」


 ()統治者(とうちしゃ)になるには、できるだけ(おお)くの(ひと)(きも)ちを理解(りかい)できなければならないってことでしょうか。


 (わか)いのに(たい)したもんだ、ヒュリア!

 あんたについてくぜ!


 (ふか)(いき)()いたヒュリアは、自嘲気味(じちょうぎみ)(わら)います。


「ところでツクモ、()かったら(きみ)術法(じゅつほう)()せてくれないか」


「あっ、そうだね。そんじゃ治癒(ちゆ)(じゅつ)から、いってみようか。ついでに(きみ)(あし)(きず)(なお)しちゃえば一石二鳥(いっせきにちょう)ってわけだし。――じゃあ、ちょっと()せてみて」


 ヒュリアの太腿(ふともも)(きず)はまだ(なお)っていません。

 ならばこの(さい)治癒(ちゆ)(じゅつ)完治(かんち)させてしまいましょう。


 てなわけで、早速実践(さっそくじっせん)しようとしたんですが、いきなりコンプラにひっかかりそうな事案(じあん)発生(はっせい)してしまいましてぇ……。

 普段(ふだん)包帯(ほうたい)()えるときは、ズボンを巻上(まきあ)げて処置(しょち)してるんですけどぉ……。

 今日(きょう)は、そうくるかぁ……。


 さっさとズボンを()()てたヒュリアが、セクシーなパンツ姿(すがた)披露(ひろう)してくれとるわけです。


「あのさ、全部脱(ぜんぶぬ)がなくてもいいんだよ」


 一応(いちおう)()()らしながら(つた)えます。


「いいや、魔導(まどう)(はじ)めて実践(じっせん)するんだ。なるだけ不要(ふよう)なものは(のぞ)いておいた(ほう)がいい」


 と、皇女様(おうじょさま)(おっしゃ)りまして……。

 (たし)かに()いでくれた(ほう)が、処置(しょち)はしやすいんですけど……。

 

 はぁぁ、(まった)くぅぅ……。

 どうして、この()はこうも簡単(かんたん)()ぐんでしょうかねぇ……。


 お風呂(ふろ)(はい)った(あと)なんかも、全裸(ぜんら)でウロつくし。

 服着(ふくき)るようにお(ねが)いしても、(あせ)がひくまでは()るべきでないとか()うてるし。


 裸族(らぞく)なのか? 

 ()せつけてるのか?


 (ぼく)としては、(こま)るというか、(うれ)しいというか。

 いや、(うれ)しいってのは(ちが)うか。


 椅子(いす)(すわ)ると上着(うわぎ)(すそ)からのぞく魅惑(みわく)三角地帯(さんかくちたい)がより強調(きょうちょう)されまして……。

 なんかこう全裸(ぜんら)よりも、エロさが()すというか、なんというか……。

 そこに()がいかないように治癒(ちゆ)(じゅつ)全集中(ぜんしゅうちゅう)しなくてはいけません。


 はい、集中(しゅうちゅう)集中(しゅうちゅう)


 包帯(ほうたい)()ると、傷口(きずぐち)赤黒(あかぐろ)さが(つよ)くなっていました。

 壊死(えし)(すす)んでるのかもしれません。

 

「えーと、どうすればいいのかな?」


 (いま)までは(なに)(かんが)えずに『耶代(やしろ)』の機能(きのう)家事全般(かじぜんぱん)儀方(ぎほう)使(つか)えてました。

 たぶん『耶代(やしろ)』がバックアップしてくれてたんでしょう。

 でもこれは『耶代(やしろ)』を(かい)しない、僕個人(ぼくこじん)(ちから)なので、(いま)まで(どお)りでいいのかどうか……。


「これまでと(おな)じようにやってみてくれ。(なに)しろ耗霊(もうりょう)魔導(まどう)使(つか)うなんて(はじ)めて()るからね」


「わかったよ」


 とりあえず異世界(いせかい)アニメで()たように傷口(きずぐち)()をかざし、(なお)れって(ねん)じてみました。

 だけど、いくら()っても(なに)()こりません。


「うむ、上手(うま)くいかないようだね。――魔導師(まどうし)(はじ)めて修練(しゅうれん)する場合(ばあい)(さき)自分(じぶん)霊核(ドゥル)状態(じょうたい)確認(かくにん)するんだが……。死者(ししゃ)には霊核(ドゥル)()いしな……」


 ヒュリアは(くち)(こぶし)()てて、(かんが)()んでます。


霊核(ドゥル)ってさ、霊器(れいき)(おな)じってことにはならないのかな?」


「なるほど……。(きみ)本体(ほんたい)霊器(れいき)にあるんだったね……。(たし)かに(れい)宿(やど)るという意味(いみ)で、霊器(れいき)霊核(ドゥル)類似(るいじ)している。ならばまずは、自分(じぶん)内面世界(ないめんせかい)にある霊器(れいき)とのつながりを()つけてみてくれ」


霊器(れいき)とのつながりかぁ……」


 言葉(ことば)意味(いみ)はわかりますが、具体的(ぐたいてき)にどうすればいいかさっぱりわかりません。

 仕方(しかた)なく()()じて、瞑想(めいそう)してみました。


 (まぶた)()けてっから()じられないだろうって?

 文学的表現ぶんがくてきひょうげんなのですよぉぉだっ。


 真暗(まっくら)(こころ)(なか)彷徨(さまよ)ってると、かなり(ふか)いところに、紫色(むらさきいろ)(ひか)るものを()つけました。

 (ちか)づくと『倉庫(そうこ)』にあるのと(おんな)涙滴型(るいてきがた)をした宝石(ほうせき)です。


 ただし、(おお)きさは(ぼく)三倍(さんばい)ぐらいあります。

 人間(にんげん)霊核(ドゥル)内面世界(ないめんせかい)では、かなり(おお)きいらしいです。


 ヒュリアに()いたら、これが霊器(れいき)との(つなが)がりってことで()いようでした。


 内側(うちがわ)をのぞいてみると、そこには(あお)(ひかり)粒子(りゅうし)(あか)(ひかり)粒子(りゅうし)無数(むすう)()()っています。

 (あお)いのが恃気(エスラル)(あか)いのが英気(マナ)だそうです。


恃気(エスラル)がどんなものか理解(りかい)できたなら、それが(てのひら)(あつ)まるように(みちび)くんだ。すると(てのひら)(あお)(ひか)(はじ)める。(つぎ)(きず)(なお)るように(ねん)じながら、恃気(エスラル)(きず)(そそ)ぐような動作(どうさ)(おも)(えが)いてみてくれ」


了解(りょうかい)


 指示(しじ)(したが)って、霊器(れいき)から恃気(エスラル)(てのひら)(みちび)きます。

 今度(こんど)はスムーズに(てのひら)恃気(エスラル)(あつ)まってっくれました。


 (てのひら)(あお)(ひか)ったところで(きず)(なお)るように(ねん)じます。

 すると(あか)英気(マナ)粒子(りゅうし)までもが(あつ)まってきます。

 そして両者(りょうしゃ)()ざり()い、(うす)赤紫(あかむらさき)(いろ)(ひかり)(はじ)めたのでした。


英気(マナ)()ざっちゃったけど、大丈夫(だいじょうぶ)なのかなっ?!」


「ああ、それで()いんだ。治癒術(ちゆじゅつ)には英気(マナ)必要(ひつよう)なんだよ」


 ビビってる(ぼく)安心(あんしん)させるように、ヒュリアは(ふか)(うなず)きます。


 最後(さいご)に、(ひか)ってる(てのひら)傷口(きずぐち)にかざし、恃気(エスラル)(そそ)いでるところを想像(そうぞう)しました。

 すると、薄紫(うすむらさき)(いろ)(ひかり)が、(みず)のように(てのひら)からトロトロと(きず)(なが)れこんでいったんです。

 そしてあるとき、傷口(きずぐち)一瞬(いっしゅん)紫色(むらさきいろ)(かがや)いたかと(おも)うと、すぐに()えました。


()てみろ、(なお)ってるぞ」


 満足(まんぞく)げなヒュリアの(かお)

 彼女(かのじょ)()(とお)り、あのひどい矢傷(やきず)は、きれいさっぱり()くなっていました。


 よっしゃあ!

 すっごいね、治癒(ちゆ)(じゅつ)

 (ぼく)もこれで魔導師(まどうし)だぜっ!


「ありがとう、ツクモ」


 可憐(かれん)微笑(ほほえ)むヒュリア。

 てぇてぇなぁ。


「ならば、(つぎ)炎魔導(えんまどう)(ほう)()せてもらおうか」


 (ほのお)使(つか)うってことで、とりあえず(そと)()ます。

 おっと、安心(あんしん)してください、ズボン、はいてますよ。


元素魔導術(げんそまどうじゅつ)(おこな)うときに必要(ひつよう)なことを説明(せつめい)するよ」


 (くら)(そら)()かぶ(しろ)(つき)が、いつも(どお)(ぼく)らを()らします。


元素魔導術(げんそまどうじゅつ)には、治癒(ちゆ)(じゅつ)(くら)べたとき、(おお)きく(こと)なる(てん)があるんだ。それは元素(げんそ)姿(すがた)(つね)(こころ)(おも)()かべながら(おこな)うということなんだ。それを『心措(レシム)』という。これは魔導(まどう)基礎的(きそてき)作法(さほう)である、『施法(イジュラート)』の(ひと)つなんだ……」


 『心措(レシム)』とは、(じゅつ)実行中(じっこうちゅう)(つね)元素(げんそ)のイメージを(こころ)にもっておくことだそうです。

 たとえば炎魔導(えんまどう)なら、(ほのお)()えてるイメージです。

 イメージを途切(とぎ)れさせると周囲(しゅうい)元素(げんそ)反応(はんのう)しなくなり(ほのお)()えてしまうのです。 


「『施法(イジュラート)』には『心措(レシム)以外(いがい)にも、いくつか重要(じゅうよう)作法(さほう)がある。主要(しゅよう)なものを()げるなら『発動(はつどう)態様(たいよう)』、『()威勢(いせい)』、『率導(テシュヴィク)』、『充典(ドルヨル)』だ」


 『発動(はつどう)態様(たいよう)』は、恃気(エスラル)を『どのように発動(はつどう)させるのか』ということです。

 治癒(ちゆ)(じゅつ)のときに、(みず)(そそ)ぐような動作(どうさ)(おも)いうかべましたが、あれは治癒術(ちゆじゅつ)発動(はつどう)させるときに(もっと)もよく使(つか)われる態様(たいよう)だそうです。


 『発動(はつどう)態様(たいよう)』は、元素(げんそ)種類(しゅるい)術法(じゅつほう)(ちが)い、術者(じゅつしゃ)(この)みや(かんが)(かた)様々(さまざま)変化(へんか)します。

 たとえば元素(げんそ)(たま)のように()()す『元素弾(げんそだん)』という(わざ)があります。

 この(わざ)は、(ほのお)(こおり)などの元素(げんそ)ならできますが、(ひかり)(やみ)元素(げんそ)では、(たま)として撃出(うちだ)すという態様(たいよう)をとることができません。

 これは元素(げんそ)種類(しゅるい)からくる(ちが)いです。


(わたし)(おそ)った三人(さんにん)騎士(きし)魔導(まどう)(おぼ)えているか?。あのとき水魔導(すいまどう)使(つか)った(もの)がいただろう。あいつの水魔導(すいまどう)は、(みず)(たま)として撃出(うちだ)すのではなく、指先(ゆびさき)から持続的(じぞくてき)水流(すいりゅう)(はっ)し、その(ちから)()切断(せつだん)するというものだった。もちろん『水弾(すいだん)』とすることも可能(かのう)だし、その態様(たいよう)をとる魔導師(まどうし)(ほう)(おお)いかもしれない。これは術者(じゅつしゃ)(この)みによる(ちが)いとなる」


 ヒュリア教官(きょうかん)のお(はなし)、ためになるのでありますっ!

 敬礼(けいれい)


(つぎ)に『()威勢(いせい)』についてだが、これは(じゅつ)発動(はつどう)する『場所(ばしょ)』の問題(もんだい)になる。普通(ふつう)場所(ばしょ)と、火災(かさい)周囲(しゅうい)()えているような場所(ばしょ)では、炎摩導(えんまどう)使(つか)うとき、術者(じゅつしゃ)への負担(ふたん)(おお)きさ、(じゅつ)(つよ)さ、持続時間(じぞくじかん)(ちが)いが()る。子供(こども)でもわかるだろうが、当然(とうぜん)周囲(しゅうい)()えている場所(ばしょ)(ほう)炎摩導(えんまどう)使(つか)(もの)有利(ゆうり)となる。だから、たとえ『冠位(ジルヴェ)』が(ひく)くても、『()威勢(いせい)』によって、上位(じょうい)魔導師(まどうし)退(しりぞ)けることも可能(かのう)というわけだ」


 ヒュリア教官(きょうかん)、わかりやすいのであります!

 敬礼(けいれい)


土魔導(どまどう)風魔導(ふうまどう)は、基本的(きほんてき)攻撃力(こうげきりょく)は、あまり(たか)くないが、『()威勢(いせい)』に(もっと)(めぐ)まれているために、(ほのお)(こおり)とも互角(ごかく)(たたか)える場合(ばあい)がある。(つち)空気(くうき)()場所(ばしょ)なんて滅多(めった)にないからな。――ヤルタクチュも、周囲(しゅうい)(つち)使(つか)うことで、騎士達(きしたち)魔導(まどう)()さえ()むことができていただろう?」


 ヒュリア教官(きょうかん)凛々(りり)しいのであります!

 敬礼(けいれい)


(つぎ)は『率導(テシュヴィク)』だ。これは発動後(はつどうご)(じゅつ)効果(こうか)を、使(つか)った(ぶん)恃気(エスラル)()きるまで、自在(じざい)(あやつ)るというものだ」


 ヒュリア教官(きょうかん)(うつ)しいのであります!

 敬礼(けいれい)


三人(さんにん)騎士(きし)のうちで、わかりやすいのは風魔導(ふうまどう)使(つか)った(もの)だろう。あいつは(かぜ)元素(げんそ)をまず旋風(つむじかぜ)として発動(はつどう)させた(あと)自在(じざい)(うご)かし、周囲(しゅうい)()粉砕(ふんさい)していた。あれが率導(テシュヴィク)だ。ヤルタクチュが土魔導(どまどう)発動後(はつどうご)に、(かべ)状態(じょうたい)になるように(つち)(あやつ)って攻撃(こうげき)(ふせ)いでいたのも(おな)じものだ」 


 ヒュリア教官(きょうかん)、エモいのであります!

 敬礼(けいれい)


「――ツクモ、(わたし)(はな)()わるたびに、直立不動(ちょくりつふどう)になって(ひたい)()をかざしているが、それは(なん)仕草(しぐさ)なんだ?」


 ちょっと(つめ)たいヒュリアの視線(しせん)


「これはニホンノトウキョウ(しき)敬礼(けいれい)なんだよ」


「なるほど、そういうことか。――(わたし)(はなし)敬意(けいい)をはらってくれるのはありがたいが、もうやらなくていいぞ。(すこ)鬱陶(うっとう)しい」 


 ごめんなさぁい、ケロケぇロ。


最後(さいご)充典(ドルヨル)について(はな)そう。これは恃気(エスラル)十分(じゅうぶん)()めてから発動(はつどう)させるというものだ。(おな)じ『炎弾(えんだん)』を()ちだす場合(ばあい)でも、すぐに()つより、恃気(エスラル)()めてから()った(ほう)が、威力(いりょく)格段(かくだん)(つよ)まるのは当然(とうぜん)だろう。ただし時間(じかん)がかかるのが欠点(けってん)だがね」


 なるほど、()()ちってことね。


「ここまでの炎魔導(えんまどう)(じゅつ)(なが)れを総括(そうかつ)してみよう。まず(こころ)(ほのお)心措(レシム)(うつ)し、恃気(エスラル)()などに(みちび)き、対象(たいしょう)()やすように(ねん)じ、炎弾(えんだん)などの(じゅつ)態様(たいよう)選択(せんたく)して(おも)(えが)く。そして発現(はつげん)した炎弾(えんだん)率導(テシュヴィク)(あやつ)り、(たま)軌道(きどう)変化(へんか)させるなどして攻撃(こうげき)するわけだ。さらに炎弾(えんだん)()(まえ)充典(ドルヨル)威力(いりょく)()すこともできる、という具合(ぐあい)だな」


「これって、いちいち(かんが)えるんだよね」


「そうだ。魔導師(まどうし)はこの判断(はんだん)一瞬(いっしゅん)で、できるように日々(ひび)修練(しゅうれん)している」


 うへっ!

 むつかしいっすねぇ!

 やっぱ現実(げんじつ)はラノベより大変(たいへん)だわ!


 そんな(ぼく)(こころ)()んだかのように、ヒュリアは悪戯(いたずら)っぽく微笑(ほほえ)みました。

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