表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/52

オラつくあの娘は炎の龍なのです<2>

 (いそ)いで『調理(ちょうり)』の機能(きのう)使(つか)い、自分(じぶん)右掌(みぎてのひら)に、キャラメルを具現化(ぐげんか)しました。


「あのぉ、すいませぇん」


「ああん?!」


 (おんな)()(いま)にも結界(けっかい)をなぐりつけそうな(いきお)いで、キッツい視線(しせん)()けてきます。


(あま)いもの、お()きですかぁ?」


 (おんな)()(うご)きが、ピタッと()まりました。


「――あ、(あま)いもの……、だとぉ……」


 ()(まえ)にキャラメルを差出(さしだ)します。

 (あお)いタレ()が、キャラメルに(くぎ)づけになりした。


「そ、そりゃ、なんだっ?!」


「キャラメルっていう、とぉっても(あま)くて美味(おい)しい、お菓子(かし)なんですよぉ」


「キ、キャラメル……?!」


「はい、ヒュリア、()べてみて」


 ヒュリアにキャラメルを一粒(ひとつぶ)(わた)します。

 ヒュリアは(くび)(かし)げ、キャラメルを不思議(ふしぎ)そうに観察(かんさつ)してましたが、仮面(かめん)(した)から(くち)()れました。


「――(あま)いっ?! 美味(おい)しいっ!! こんな菓子(かし)(はじ)めて()べたぞ、ツクモ!」


 キャラメルの美味(おい)しさに身震(みぶる)いするヒュリア。

 (おんな)()(くち)から、よだれが(なが)()ちてます。


「どうですぅ? これでも()べながら、落着(おちつ)いてお(はなし)しませんかぁ?」


 ()をむきだしにした(おんな)()は、(へび)みたいにシャーシャー()いながら、キャラメルと(ぼく)交互(こうご)に、にらみつけてきます。


「いかがですかぁ?」


 ダメ()しにキャラメルをつまんで、(かお)(まえ)()ってやりました。


 突然(とつぜん)野獣(やじゅう)のように咆哮(ほうこう)した(おんな)()は、(そら)見上(みあ)げ、(おお)きく(くち)()けます。

 すると(くち)から猛烈(もうれつ)(ほのお)噴上(ふきあ)がり、(はる)上空(じょうくう)()えていきました。

 (ぼく)とヒュリアは(なに)()こったのかわからずに、(ほのお)()えた(あと)も、しばらく夜空(よぞら)(なが)めることになりました。


「ちっ! やり(くち)()にいらねぇが、てめぇの(さく)()ってやる。結界(けっかい)()けっ」


 (おんな)()は、よだれを()でふきながら、命令(めいれい)してきました。


「――はい、はぁい」


 とりあえず、ギリギリでピンチ回避(かいひ)できました。

 このシチュに、あのヒント、正解(せいかい)だったようですな。


「こんな(やつ)()れて大丈夫(だいじょうぶ)なのか、ツクモ」


 ヒュリアは心配(しんぱい)そうです。


「たぶん、大丈夫(だいじょうぶ)だと(おも)うよ」


 オペ(にい)さんのヒントにあるからには、きっとこの(おんな)()、かなり重要人物(じゅうようじんぶつ)なんだと(おも)います。

 ならばとにかく、(はなし)()いてみないと。

 結界(けっかい)()かれると、(おんな)()警戒(けいかい)する様子(ようす)()く、すたすたと敷地(しきち)(なか)(はい)ってきました。


 (ぼく)結界(けっかい)をすぐに再発動(さいはつどう)させ、(あと)()います。

 するとヒュリアが(おんな)()(まえ)()ちふさがり、(けん)切先(きっさき)()きつけました。

 二人(ふたり)はしばらく、(ほのお)のエフェクトを背負(せおい)いながら(にら)()います。

 でも、ヒュリアが(けん)(おさ)め、(みち)をあけることで、(たたか)いは()わりを()げたのでした。

 (おんな)()(ほう)も、フンと()っただけで、ヒュリアに(たい)して(なに)かすることはありませんでした。


 ヒヤヒヤもんですぜ。

 (おんな)(たたか)い、(こえ)ぇよ……。


「さあ、どうぞ、どうぞ」


 (おんな)()顔色(かおいろ)(うかが)いながら案内(あんない)します。

 ログハウスに(はい)ると、(おんな)()無遠慮(ぶえんりょ)椅子(いす)(すわ)り、ふんぞり(かえ)りました。

 (ぼく)は、速攻(そっこう)(さら)()せたキャラメルとハーブ(ちゃ)()し、対面(たいめん)(すわ)ります。

 ヒュリアは、()ったまま不貞腐(ふてくさ)れた(かん)じで(かべ)()りかかってます。


 (おんな)()はキャラメルを一粒(ひとつぶ)取上(とりあ)観察(かんさつ)した(あと)、ゆっくりと(くち)にいれました。


「にゅぉーっ!!!」


 (へん)(さけ)(ごえ)をあげた(おんな)()は、(のこ)りのキャラメル全部(ぜんぶ)一気(いっき)(くち)(なが)()みます。


「うま、うま、にゅふふ……」


 今度(こんど)(へん)(つぶや)きをいれながら、キャラメルをかみしめ、酔払(よっぱら)いみたいに、ふやけた()みを()かべてます。

 そして()()わると、お(ちゃ)一口飲(ひとくちの)んでプハーと(いき)()きました。


「うめぇなぁ、このぉ……、(なん)だぁ……?」


「――キャラメルです」


「そう、それだっ! このキャラメルってもんは絶品(ぜっぴん)だな! もうねぇのか?!」 


「ありますけど、その(まえ)に、どちら(さま)なのか(おし)えていただきたいんですけど?」


「あん? ああ、(おれ)か……」


 そこで(おんな)()(ぼく)らを見回(みまわ)し、()まずそうに(あたま)()きました。


「ふん、まあ、いいか……。(おれ)()は、アティシュリ。“アレヴェジダルハ”だ」


 ヒュリアは突然(とつぜん)(あせ)った(かん)じで身体(からだ)()こします。


「“アレヴェジダルハ”……。『古代(こだい)ウガリタ()』で、(ほのお)霊龍(れいりゅう)という意味(いみ)になる……? まさか、あなたは『八大霊龍(はちだいれいりゅう)』の御一人(おひとり)なのですか?!」


 いつのまにかヒュリアの口調(くちょう)敬語(けいご)になってます。


「ちっ、よく勉強(べんきょう)してるな、お(めぇ)……」


 アティシュリはまた()まずそうに(あたま)をかきました。

 そして、すぐに(ひら)(なお)った(かん)じで(うで)()み、ドヤポーズを()めます。


「わかっちまったなら仕方(しかた)がねぇ! ――その(とお)りよ! 『炎摩(えんま)()』を()けつぐ(ほのお)(りゅう)とは、まさにこの俺様(おれさま)のことだ!」


 ヒュリアは(いそ)いでアティシュリの(そば)(ひざまず)きます。

 そして(ふか)(あたま)()げました。


「――最前(さいぜん)までの非礼(ひれい)、ひらにご容赦(ようしゃ)ください」


 えっ!

 (ほのお)(りゅう)?!

 てことは、この()、ドラゴンなの?!


 (たし)かに、(くち)から火柱(ひばしら)あげる人間(にんげん)なんているわけないですけど。

 でも、()()は、渋谷系(しぶやけい)ギャルなんですよねぇ。


 (ひと)姿(すがた)にもなれるってわけですか。

 さすが異世界(いせかい)、アガるわぁ。


 けど、なんでこの姿(すがた)をチョイスしたんでしょ?

 ドラゴン界隈(かいわい)じゃ、渋谷系(しぶやけい)流行(はや)ってる?

 な、わけないか。


 まあとにかく、すげぇワクワクするのは(たし)かです。

 ああ、ドラゴンの姿(すがた)()てぇよぉ……。 


「おおよ、わかりゃいい。んで、てめぇは何者(なにもん)だ?」


(わたし)は、聖騎士団帝国(せいきしだんていこく)第一皇女(だいいちおうじょ)、ヒュリア・ウル・エスクリムジと(もう)します」


「エスクリムジだと?。じゃあ、チラックの小僧(こぞう)血筋(ちすじ)だな……。その(かお)、てっきり魔人(まじん)(たぐい)かと(おも)ったぜ」


「これは失礼(しつれい)しました」


 ヒュリアが仮面(かめん)をはずします。

 アティシュリは彼女(かのじょ)素顔(すがお)興味深(きょうみぶか)げに(のぞ)()みました。


「その赤銅(しゃくどう)(ひとみ)……、“アトルカリンジャ”だな」


 ヒュリアが(いき)()みます。


「アトルカリンジャ……? (はじ)めて()言葉(ことば)です……」


「ふん、そうか……。アトルカリンジャってぇのは『迂遠(うえん)()きて、(むし)(なお)(もの)』って意味(いみ)()けられた名前(なまえ)だぜ」


 それを()いたヒュリアは、右拳(みぎこぶし)(くち)()て、(だま)りこんでしまいました。


「――んで、耗霊(もうりょう)、てめぇの()は?」


「ぼ、(ぼく)ですか? (ぼく)はツクモって()います」


「ツクモ……? あまり()かねぇ(おと)(ひび)きだな。――まぁいい。それで、てめぇ、マジで自分(じぶん)を『耶宰(やさい)』だって()うのか?」


「はい、そうみたいです」


「そのくせ『耶代(やしろ)』の術者(じゅつしゃ)()らねぇってか?」


「はい、そういう(ひと)がいるんなら(やま)ほど()きたいことがあるんすけどねぇ」


 一緒(いっしょ)に、(やま)ほど文句(もんく)()ってやる。


「ちっ! よくわからねぇ……。(たし)かに『耶代(やしろ)』の儀方(ぎほう)は、(あら)たに(つく)られたもんだから、予想(よそう)もしねぇ反動(はんどう)があってもおかしくはねぇが……」


 アティシュリが(あたま)をかきむしります。


(あら)たに(つく)られたって、どうゆうことですか?」


 アティシュリは(こた)えずに、(から)になった(さら)指差(ゆびさ)します。


「――おかわり」


「はいはぁい、ただいまぁ」


 (いそ)いでおかわりのキャラメルを具現化(ぐげんか)しました。


「うま、うま、にゃはは……」


 キャラメルを()べるアティシュリは、ご満悦(まんえつ)です。

 よっぽど()()ったんでしょう。


「えーと、それで、(あたら)しく(つく)られた、というのは……?」


「うん? ああ、そのことか。『耶代(やしろ)』の儀方(ぎほう)(おれ)のダチが(つく)ったんだよ」


「その御友達(おともだち)っていうのは、以前(いぜん)ここにあった屋敷(やしき)持主(もちぬし)ってことですか?」


「ああ、そうよ。ビルルルってんだ」


隠者(いんじゃ)ビルルル?!」


 (だま)っていたヒュリアが(こえ)()げます。


「かかっ、人間(にんげん)どもは、隠者(いんじゃ)とかいって(あが)めやがるが、あいつはただの変態女(へんたいおんな)だぜっ」


 アティシュリはイタズラ小僧(こぞう)のように(わら)います。


隠者(いんじゃ)……、ビルルルさん……?」


 お(なか)(くだ)したような名前(なまえ)です。

 (くび)(かし)げてる(ぼく)に、ヒュリアがビルルルのことを説明(せつめい)してくれました。


隠者(いんじゃ)ビルルルは災厄(さいやく)(とき)に、三傑(さんけつ)後方支援(こうほうしえん)をしていた“ビレイ”の女性(じょせい)なんだ。錬金術(れんきんじゅつ)(ひい)でていて、武器(ぶき)薬品(やくひん)などを(つく)っていたらしい。ただ戦後(せんご)人前(ひとまえ)()るのを(きら)い、ひっそりと()らしていたと()いている」


「――つまりそれが、ここなんだよ」


 アティシュリが人差(ひとさ)(ゆび)でテーブルをこつこつと(たた)きます。


「そうでしたか……、ならばこの不思議(ふしぎ)小屋(こや)のことも納得(なっとく)できます。(わたし)錬金術(れんきんじゅつ)()ほどきをしてくれた師匠(ししょう)からも、そのような(はなし)()いたことがあります。(いのち)()物体(ぶったい)を、魔導(まどう)により擬似生命体(ぎじせいめいたい)とする(じゅつ)隠者(いんじゃ)完成(かんせい)させたと」


 疑似生命体(ぎじせいめいたい)……。

 なるほどね、だから『耶代(やしろ)』に意志(いし)があるってわけですね。

 (ほか)にも色々(いろいろ)わからないことがあったので、質問(しつもん)(つづ)けます。


「えーと、ビレイってのは……?」


「ちっ、てめぇは(なに)()らなぇんだな、ツクモ。ビレイってのは、『ウガリタ()』で“(まこと)(ひと)”って意味(いみ)だが、人間達(にんげんたち)からは妖精(ようせい)って()ばれてる。つまり妖精族(ようせいぞく)ってことだ……」


 アティシュリの説明(せつめい)によると、妖精族(ビレイ)は、(みみ)(とが)ってて、人間(にんげん)よりも美形(びけい)でスタイルが()く、寿命(じゅみょう)(なが)くて、魔導(まどう)得意(とくい)なんだそうです。


 はい、もうおわかりですね。

 そう、エルフです。 

 オペ(にい)さんもエルフがいるって()ってましたから。

 地球(ちきゅう)ならエルフだけど、バシャルじゃビレイってわけですか。


 ドラゴンにエルフ!

 異世界(いせかい)らしくなってきましたよぉ!


 さらに妖精族(ビレイ)は、“サフ”と“ロシュ”という二系統(にけいとう)()かれているそうです。

 両者(りょうしゃ)(おお)まかな(ちが)いは(みっ)つ。


 (ひと)()は、(はだ)(いろ)です。

 サフは白色(はくしょく)、ロシュは褐色(かっしょく)です。 

 (ふた)()は、(おも)生活(せいかつ)場所(ばしょ)で、サフは(もり)、ロシュは地下(ちか)です。

 (みっ)()得意(とくい)魔導(まどう)で、サフは(ほのお)(こおり)などの元素(げんそ)使役(しえき)する元素魔導(げんそまどう)(じゅつ)で、ロシュは錬金(れんきん)(じゅつ)です。


 てことは、サフはライトエルフ、ロシュはダークエルフもしくはドワーフってことになるんでしょうか。

 まあドワーフはダークエルフが、(なま)った名前(なまえ)ともいわれてますからね。

 バシャルの人間(にんげん)は、サフを白妖精(しろようせい)、ロシュを黒妖精(くろようせい)()んでるそうです。


 ところで、ちょっとややこしいですが、『魔導(まどう)』っていう言葉(ことば)には、(ふた)つの意味(いみ)があります。

 (ひろ)意味(いみ)では、元素魔導術(げんそまどうじゅつ)とか錬金術(れんきんじゅつ)とかを全部含(ぜんぶふく)めた魔導(まどう)全体(ぜんたい)のことを(あらわ)します。

 (せま)意味(いみ)では、元素魔導(げんそまどう)(じゅつ)のことだけを(あらわ)します。


 魔導(もどう)元々(もともと)元素魔導(げんそまどう)(じゅつ)から(はじ)まって、そこから枝分(えだわ)かれして発展(はってん)していったからだそうです。

 バシャルの人達(ひとたち)は、あんまりキチンと区別(くべつ)してないらしく、ケースバイケースでとらえるしかないってヒュリアが()ってました。


「ビルルルはサフの(おんな)、アイダンはロシュの(おんな)だった……。みんな()っちまったがな……」


「アティシュリ(さま)三傑(さんけつ)ともお知合(しりあ)いなのですね」


 ヒュリアの()が、あこがれのアイドルに()ったようにキラキラしてます。


「たりめぇだろ。(おれ)たち八大霊龍(はちだいれいりゅう)は、あいつらと一緒(いっしょ)に『(くろ)災媼(さいおう)』と(たたか)ったんだからな。でもよ、どいつもこいつも()わり(もの)だったぜ。――ビルルルは変態女(へんたいおんな)、フェルハトはお調子者(ちょうしもの)、フゼイフェは堅物(かたぶつ)、エフラトンは放蕩者(ほうとうもの)。まあ、アイダンだけが唯一(ゆいつ)まともだったかもしれねぇな」


 (たし)か、アイダンは賢者(けんじゃ)で、フェルハトは英雄(えいゆう)、フゼイフェが聖師(せいし)でしたよね。

 それで隠者(いんじゃ)がビルルル……、じゃあ、エフラトンて?


太祖帝(たいそてい)フェルハト(さま)(くわ)しい(ひと)となりもご存知(ごぞんじ)なのでしょうか?」


「フェルハトか……。あいつはお調子者(ちょうしもの)だが、()けっぴろげでよ、(だれ)とでも()(へだ)てなくつき()う、(あった)かい野郎(やろう)だったな。――んで、お(めぇ)(おな)赤銅(しゃくどう)(ひとみ)()つアトルカリンジャだったぜ」


太祖帝(たいそてい)(さま)が……、(わたし)(おな)じ……」


 ヒュリアが絶句(ぜっく)します。


「『災厄(さいやく)(とき)』は、バシャルにとっちゃ最悪(さいあく)(いくさ)だった。だがよ、あいつらと一緒(いっしょ)にいられたことは、(おれ)にとっちゃ(たの)しく(なつ)かしい(おも)()でもあるのよ……」


 アティシュリは後頭部(こうとうぶ)()()み、記憶(きおく)にひたるように()()じました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ