圧政は終わり……
この一件を境に、アリアの増長はなりを潜めた。
元々、本質は善人だった彼女は、少し気が強い所はあるが、正義感が強く、面倒見のいい優等生として、徐々に周りの生徒から慕われるようになる。
それはそれで、嫉妬から更なる敵を招くことになるのだが、それ以上に味方も増えていった。
色々なことがいい方向に回り出した、アリアの学園生活。
だが、中には困ったこともあった。
頼りになる人気者となったアリアの周りには、常に多くの生徒が集まってくる。
そんな彼等に対して、笑顔で応対するアリア。
だがよく見ると、こめかみに汗が滴り、さりげなくクロスされた脚は、時折何かを堪えるようにギュッと力が入る。
(も、漏れちゃう……っ! もう、漏れちゃうぅっ!)
休み時間の度に人に囲まれるせいで、トイレに行けないことが増えたのだ。
限界近くなっても『トイレに行きたい』と言えない悪癖だけは、治らなかった。
やがて、アリアはチラチラと、切迫した視線を『彼女』に送り出した。
(助けてっ……漏れちゃうっ……助けてっ……!)
――エルナっっ!!
「はぁ……しょうがないわね……アリア! ちょっと付き合って!」
「え、えぇっ! いいわよっ! みんな、ちょっとゴメンねっ!」
ぱっと見冷静、だが内心では一目散にエルナの元へ向かうアリア。
「……手のかかる子と、親友になっちゃったわね……」
「エルナっ、トイレっ、は、は、早く……っ!」
「はいはい、もうちょっと我慢してねー」
「はぁっ、はぁっ……うぅっ!? あ、あ、あっ!」
呆れつつも、エルナはどこか嬉しそうに、アリアを連れてトイレに急いだ。