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なんでできないの

作者: さとう あか

閲覧ありがとうございます。




なんでできないの。




そう言われて、身がすくむのを今でも覚えている。


当時は親はただ理由が知りたかっただけなのだと思っていた。

これは、今も昔も私にとってできないことを責める言葉だった。




なんでできないの。



そう言われるたびに私はできないことを責められ、こんな事もできないのかという母の嘲りを感じた。

悲しさと悔しさ、そして言葉にできない感情がぐるぐる回って結局でていくことはなかった。


母はいつも私がそうなった状態を、なにも言うことがないと判断してしているようなのでここでお話しは終わる。




なんでできないの。




そう言われて今回は違うと言った。

できなかったが次はきちんとできる。

今回は初めてで失敗してしまっただけ、失敗した原因も分かっているから大丈夫。


この時の私は誇らしかった。

だって、母の望む解答が出せたように思ったからだ。


しかし、母は違っていたようだった。

なんでそんな口答えをするのかと言った。

私は口答えをしたつもりはなかった。


しかし、母は口答えだと思っている。

ああ、母の求めていたものはこういう事ではないのか。

私が黙って従順にしている事が母の望んでいたものだったのか。


唐突にそう思い至った。


それからも母は私になんでできないのと聞いて来ることがあった。

私は黙ってそれを聞いている。

なにも言わないでいる私をみて母はどう思ったのかは分からないが、なにも言ってくることはなかったので多分これが正解なのではないかと思う。



そうして年月が経ち、私は成人し社会人になった。

母は何度か入退院をして、少し弱っているものの実家で暮らしていた。


以前とは違う。

そうである。

母も年をとり以前のように動けなくなった、目も老眼が進んでいる。

家のなかでも壁伝いに動き、取り付けた手すりを使っている。


以前のようにできないということはわかっている。

わかってはいるのだが、私は母にこの言葉を言わずにはいられなかった。




なんでできないの。



だって体は以前のように動かないし、体力だって衰えている。

手先だって以前のように動くわけではない。


でも私は言う。




なんでできないの。




これはあなたが私にいったこと。

忘れてはいないよね?


だからあなたも私の言うこと黙って聞いてね?

私はそうしていたよ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


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