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第三十二話 三人とも

 隠蔽魔法。外から見るとこうも完璧で実戦的だとは恐れ入りました。


『キミ。私達は隠れてるから時間稼ぎお願いできるかしら? ああ声は出さなくて大丈夫だよ。今脳内に直接話しかけているから、それと思考を読むわけでもないから安心してね、言葉を脳で話すイメージよやってみて』


『こうですか? というかヘカティーニさん余裕ですね?』


 声を使う会話より早い思念の会話。一瞬で情報のやりとりが行われる。


『トオフ無理をするな』

『トオフ君。頼りにしてるよ』

『うふふ。これでキミの実力が見れそうだ』


 ハルトの剣。

 ナイフの男は索敵と陽動。

 杖の男は魔法。なるほど、だいたい分かった。


 ハルトと言ったか、こいつが勇者らしいが僕の感触では残り二人も同じようなもの。恐らく勇者の条件のようなものは残り二人も満たしているのだろう、役割として勇者とそれ以外を分けているような印象。


 つまり全員がチート持ち。

 なんの能力かは知りませんが封じさせてもらいましょう。


「チートオフ」


 クリームヒルトは止めましたし、これであとはゆっくり料理をするだけ。


『援護する』


 サルーノ君が魔力で形成した弾を放つ。

 完全な死角。タイミングも良かった。


 多分偶然でしょう。あるいは魔族になって僕と行動するようになって多少は戦闘勘が良くなっていたのかもしれません。


 クリームヒルトがハルトをかばうように飛び出して直撃。

 腕がちぎれ、胸部ににも大きな傷が。

 あああれは死にましたね。


 仕方の無いことです。いつかは始末しなければいけないと思っていましたし、いいのです。別に。


 ああおかしいな。視界がぼやけていきます。足に力が入りません。

 音が聞こえません。


 薄暗い視界の半分が地面です。横に倒れているのかもしれません。


 ヘカティーニさんがナイフの男を蹴り飛ばしています。

 サルーノ君はハルトの剣を必死に避けています。

 先生の顔が近い、何かを叫んでいるようですが良く聞こえません。


 僕の記憶は、そこで途切れました。


 ――――――。




 眩しさに目が痛む。

 とっても静かなのに、自分の鼓動の音がうるさい。


 見えたのは良く知っている天井です。

 違和感はすぐに消えます。いつもの感覚。いつものベットの感触。

 落ち着く香り。家の匂いです。


 僕はベットで寝ていました。


 ガチャンと音がして、音の方を振り向くとティンベーヌがこれ以上ない間抜けな顔をしています。

 どうしたそんな驚いた顔をして、花瓶を落としたのか?

 やれやれどうしてお前はそんなにアホなんですか。

 ホントしょうがない馬鹿弟子ですね。

 同じ四天王でもユリやタケミカヅチさんとお前は全然違いますね。


「ごじゅじんざばーーー」


 奇声をあげて走ってきたティンベーヌが、僕に飛びかかろうとして急停止。

 そっと僕の手を握って言います。


「大丈夫ですか? どこか痛いところはありませんか?」


「ふん。ねーよ」


 今度こそ僕にダイブしてきたティンベーヌの頭を撫でながら、僕は少し整理します。


 死にかけたか、名付けの代償だろう。

 生きていたのだからそれはいい。問題は僕の正体がどの程度バレたのかだな。

 同行していた皆が助けてくれたのでしょう。昏睡したことで名付けがバレているのは仕方ない。

 それがどの程度広まったか。

 

 あとはクリームヒルトですね。恐らく死んでいるはずですが、妙な感触です。まだうっすらと繋がっている感覚もあります。気のせいかもしれないほど微弱ですけど。

 感傷? いや僕に限ってそんな馬鹿な。


 クリームヒルトがハルトと協力していたことについて、僕にあれこれ聴かれるでしょう、憶測も飛び交っているかもしれません。


 実に面倒です。

 あーやれやれ。


「ティン。先生やヘカティーニさん、サルーノ君は無事なのか?」


「ご主人様まずは落ち着いて下さい。お三方は無事です。それと色々聞きたいこともあるでしょうし、私も色々お話したいのですけど、まずはご主人様に会ってほしいお方がいるのです」


 なんだかティンの様子がおかしい。えらいかしこまっているというか。

「実はご主人様が起きたら、すぐにお連れするようにと言われているのです。……魔王様に」

XXXX視点


「XXXXどうしてお主は魔法を命中させることが出来ないと思う?」


 ヒゲを風になびかせながら師匠がアタシに聞きます。

 そんなことアタシにはわかりません。アタシはうつむいて答えます。


「アタシに才能がないから」


 魔法なんて嫌いです。でも魔法が仕えなかればアタシに行く場所なんてありません。


(ああ、アタシこれ知ってる。知ってるというか)


「いいかXXXX。おぬしの魔法が当たらないのはおぬしが優しすぎるからじゃ。破壊を嫌い、殺生を嫌うからじゃ。己の魔法の恐ろしさをよくわかっておる。賢い子じゃ」


(師匠はそう言ってアタシの頭をなでた。懐かしい)


(アタシは死んだ。ハルト君をかばって死んだ。これは走馬灯? 違うわね。これが勇者様がアタシににくれた能力、死者蘇生でも肉体保存でもない、ひとつの永遠の形)


「おい、どうして泣いておる。どこか痛いのか?」


「違う。違うの師匠」


 アタシは死んだ。でも返ってきた。まだ勇者様や僧侶ちゃんと出会う前。

 なら、やり直してみせる。今度こそ誰も死なせない。

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