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第二十九話 鬼ごっこ試験後

「情けない。どいつもこいつも全くダメじゃないか」


 試験の後で一番荒れていたのはフォルカス先生です。

 そりゃ僕らは全くダメだったのかもしれませんが、怒ったって何もいいことなんかありはしませんよ。


「シャネタン。お前はクラスメートを邪魔する暇なんてなかったはずだ」


「トオフだって、ムルムルを投げたンだ」


「うるさいッ!」


 フォルカス先生は教卓を叩いてシャネタンの弁明を退けます。


「オズズとニースは、攻撃することに夢中になってその場に留まりすぎだ。このゲームの本質は妨害じゃない。追いかけること、探すことだ」


「はい」


 ニース君がうなだれて返事をします。オズズもニース君の様子をみて、大きな体を少しでも小さく見えるように背中を丸めています。


「ミスティとゾーイとクリームヒルト、お前達はよく動いていたが詰めが甘い。最後は味方を犠牲にしてでも目標を達成することを覚えろ」


 どうやらクリームヒルト達はもう一歩のところで、惜しくも失敗したようですね。


「ほんと、こんな調子で次の試験が心配です」


 次の試験?


 さっきまで怒っていたのは演技だったのか、急にシャンとしたフォルカス先生。


「まだ説明していなかったので説明します。この試験は実地試験。課外活動となります。最近魔族領の外で暮して居ている極一部の者達との連絡が途絶えることが急増しています。軍も動いてはいるのですが、なにせ人間達の生活圏に進入するので誰も彼もが調査に行くことは困難です。そこで、士官学校にも依頼が来ました」


 そこでフォルカス先生は言葉を区切り、教室の中を見渡します。


「学生の中で潜入調査に向いた者はいないかと」


 魔族のほとんどのは魔族領。この魔王城を中心とした、人間の国ではないエリアで生活をしていますが、一部の魔族は古くからの土地を大事にし、人間から隠れてひっそりと生活しています。


「戦争だよ! 戦争しようぜ。そして人間を滅ぼせば問題ねェよ」


「黙りなさい」


 シャネタンの言葉に、再び教卓を叩くフォルカス先生。


「今回は少数精鋭です。戦闘力は必要ありません。隠密行動が出来る者、特に人間達の中にまぎれることが出来る者が必要です。トオフ君、行ってくれますね?」


 うわ面倒。まず僕ですか?

 他のメンバーを聞いた後で返事をしたい。ですがそんなことを言い出しにくく。


「わかりました」


「次、次点で角も小さく肌も人間に近いクリームヒルトさん、お願いできますか?」


「はい! 行きます」


 元気のいいクリームヒルトの返事。


「次、サルーノ。現地で合流した魔族が強情な場合も想定されます。君の話術が役に立つかもしれません」


「ボクでよければ、謹んでお受けいたします」


「よし、あとは――」


「わたし、わたし! わたしも行きたいです!」


 手を上げたのはゾーイ=ピンロイド。確かに彼女の接合魔術は汎用性があり役にたつことがあるかもしれないが。


「ゾーイ、今回は少数精鋭だ。すまないがお前は留守番だ」


「ちぇーせっかくサルーノ様の邪魔者がいない外出だったのに。ザンネン」


 チラッっとシャネタンを見るゾーイ。見えない火花が飛んでいます。


「オホン。それと私も責任者として同行する。行きは徒歩だが帰りは私の転移魔法が頼りだ。緊急時に使用する場合もあるのでくれぐれも私からはぐれるな。そして最後にお前達だけでは心細いのでもう一人だけ……入ってきなさい」


 フォルカス先生が教室の入り口を向き、みんなの視線も教室の入り口を見る、ドアがひらき、注目を浴びながら一人の生徒がフォルカス先生の横に並ぶ。


「自己紹介を」


「はい」


 うやうやしく一礼。


「ヘカティーニ=サンダルフォンと申します。逃げるのも隠れるのも得意です。よろしくお願いします」


「彼女は生徒ではあるが、私と同じ伯爵級だ。みな敬意をもってせっするように」


「うふふ。ヘカティーニとお呼び下さい。仲良くしましょ」


 早い再会となったヘカティーニさん、僕はヘカティーニさんが一瞬僕を見たような気がして、少し背筋が寒くなった。


「明朝から出発する、長期になることも予想されるので今名前を挙げた者は準備をしておけ。私はいないが代わりの者が授業をするので、留守番だった者も気を引き締めておくように。以上解散」

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