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第二十七話 墜落

 差し出されたシャネタンの手。

 僕はその手に魔力が流れているのを感じ取った。


「ボイドスクライム」

 短く呪文を唱えたシャネタンが、窓枠を掴んでいた僕の手を触ろうとした。


 僕は瞬時に窓枠から手を離す。

 なんの呪文だか知らないが、直接触れた相手にしか作用しない魔法のようだ。


 

「クラスメートを攻撃してはいけねェルールは何処にもないぜ」


 そう言って、シャネタンは笑う。

 なるほど、確かに僕は飛べない。下には騎士()従騎士()の群れ。


 支えを失った僕の身体は落ちていく――。


 でも、……お前が攻撃してくることなんて予測の範囲内だよ。

 9名いて3名ぐらいしかクリア出来ない。


 だからこの試験。クラスメートは敵だろ?


 僕達の上、Cクラスは3名しかいないのだから。それと……。


 目立つ必要はないけど、コケにされるのは僕のプライドが許さない。

 僕の魔王軍秘密兵器としてのプライドが。


 僕は手にしたロープを握る。奪って隠蔽魔法をかけていたロープだ。


「ぐえー」


 ムルムル君の贅肉がロープできつく縛られる。彼の身体ならば窓枠よりも大きい。


 引っ張られたムルムル君が、窓枠にフタをするようにギュッと固定された。


 僕はロープの具合を引っ張って確かめて、登る。


「トオフ君! いつの間に!」

 もう1人の奴隷、サルーノが叫ぶ。

 サルーノ持っていたロープは自分達が使ったものだけではなかった。

 クリームヒルト達女子三人を先に行かせて、回収したロープ。


 なぜそんなことをするのか、後続を断つためだろう。

 だがそれはいい手段とは言えない。この試験、他人の足を引っ張ることに力を入れてもいいことなんてないはずだ。


 その程度考えればわかりそうなもの。


「サルーノ、先生からも言われたろ。ただ従うだけが奴隷じゃない。時には主をいさめろって」


 それと手に持った道具から目を離してはいけないよ。僕の速度ならいつだって奪える。


 僕は窓枠をつかんで、ムルムル君を蹴りとばして教室に戻った。


「なンだてめェ、落ちとけよ」

 諦めの悪いシャネタンが僕を外に押し出そうとします。

 手の平にふれないよう手首を掴んで防御します。


「こんなことやってる場合かよ」


 階段を上ってくる大勢の魔族達の足音。

 オズズ君とニース君はやられたのかもしれませんね。


 僕はシャネタンをサルーノに投げ、すでにぐったりしているムルムル君を持ちあげ廊下に出ます。


「ごめんよッ!」


 階段から上がってきた下級生達に向かって投げつけます。

 あわれな鬼達は将棋倒しになって吹き飛びます。


「おいおい今の判定タッチなんじゃ」


「魔法は使ってない」


 全身にバツマークがついたムルムル君と違い、僕には一つのバツもつきません。


 なるほど、そうやって判定されるのですか、学校の敷地内全体に結界を張りながら一人一人の行動も監視する。非常に高度で緻密な魔法を使っていますね。


 僕は更なる上、屋上を目指します。

 階段を登る僕にシャネタンとサルーノも続きます。


 開けた屋上は風が吹き抜けています。幸い待ち伏せはなかったみたいですが、逃げ場がないのに変わりはなく、このままでは捕まるのは時間の問題です。


「おいトオフ、どおすンだよ。こんなところにきて」


 ついてきておいて勝手なことを言う。しかしまぁ、見ていろ。


「こうするのさ」


 僕は慎重に狙いを定め、屋上の(へり)から一歩踏み出し、何もない空に身を委ねます。完全な自由落下。今度はロープもありません。


 さようならシャネタン、サルーノ。

 それとムルムル君。君達はここでリタイヤさ。



「ここだね」


 空中に魔力で足場を形成、キックした反動でとある教室に侵入しました。


「だれ?」


 思わぬ侵入者に、教室の主が振り向きます。


「お初にお目にかかります。僕の名はトオフ、子爵級魔族です。貴女が学校唯一の侯爵級魔族、サンダルフォンさんで間違いないですか?」


「うふふ。そうですよ。よくここがわかりましたね。というかこれましたね」


「いやー準備期間中考えたんですよ。今まで一度も捕まっていないし、姿すら見せないって、一体どうやったんだろうって。ズバリ、サンダルフォンさんハッキングしてますよね」


 ヘカティーニ=サンダルフォン、四天王でもあるタケミカヅチ様を除けば、この学校で最高位である伯爵級魔族。

 僕達D級の二つ上、B級魔族と言ったほうが今風か。


 彼女は長い髪を陽光にさらして薄く笑った。


「ええその通りです。動くの面倒ですしね。先生の構築した鬼ごっこ判定用魔法にこっそり細工をしております。それと(わたくし)のことはどうぞヘカティーニとおよびください。私、家名ってあまり好きではないですの」


「わかりましたヘカティーニさん」


 ヘカティーニさんの実行したことはこうだ。


 この試験は先生による判定が絶対。ならば判定そのものを自分の都合よくしてしまえばいい。この教室には強力な隠蔽魔法が施されています。どこに存在するか探知することも出来ません。


 試験中。1000人以上の魔族が学校中を走り回るのです。

 隠蔽していても存在がなくなる訳ではありません。偶然誰かが外から教室に触ってしまうことはあるでしょう、ルール上その時点でヘカティーニさんは失格となるはずです。ですが判定が正常に作動しないように細工をしておりヘカティーニさんは失格になることもなく時間切れまでここで粘ると。


「よくこんな方法を考えましたね」


「わたくし走り回ったりするの嫌いなんですの。この学校にいるのもたまにタケミカヅチ様と手合わせできるからですし。……この試験も早々に捕まってもいいのですが、わたくしちょっと意地が悪くて。うふふふ」

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