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第二十六話 鬼ごっこ試験開始

 試験日までの準備期間として、突如授業がなくなった。


 準備といっても追いかけっこするだけでしょう? 

 一体何を準備しろと?


 僕はそう思ったのですけど、先生の「解散」の号令とともに、慌しく教室から出て行ったクラスメイトを見るに、何かしらやったほうがいいのかもしれません。


 ま、結局僕はぼーっとしてたのですけど、ついでに授業もないので学校さぼって家でゴロゴロしていました。


 やっぱ家はいいですね。

 来月あたり新しいソファでも買いたいです。


 なんでかって?


 お邪魔な弟子がいるので今のソファだと狭くってですね。



 ――――――


 ――――


 ――


「よし、全員そろっているな。トオフは最近来なかったから心配したぞ。さて、まもなく時間だ」


 そうこうしているうちに試験日となり、久しぶり登校すると皆気合満タンといった様子です。


 少ないクラスメートが3人とか2人に固まって最後の打ち合わせをしています。


 僕はひとりですけど。


「…………クラス対抗鬼ごっこ試験……開始!」


 あ、号令です。始まったみたいですね。


 この試験、スタート位置が大事だと思うのですが開始時は各教室に集められているので、どこに誰がいるか丸わかりです。


 騎士()従騎士()クラスは一階。僕たち子爵()クラスと男爵()クラスは二階。


 そして上位、BCクラスは三階にあります。


 半ば自動的に上の階を目指すのですが、廊下に出ても一番近いEクラスの連中がこちらに殺到することは明白。


 階段から上の階を目指すのは難しいです。


 ですので僕は、教室の窓から上を目指します。


 何人かは同じ考えなのでしょう。準備していたロープを窓から上の階に投げています。


 窓から顔を覗かせて見上げると校舎の壁には、準備期間中に打ったのか、それ以前からなのか、壁に杭が打たれています。


「シャネタン様。できました」


「よくやった」


 教室内での位置がよく、一番先にロープを固定したムルムル君をシャネタンが踏み台として使います。


 慣れたものなのか趣味なのか、文句ひとつ言わないムルムル君。


 シャネタンに続いてムルムル君が登り、その後ろにもう一人の奴隷であるサルーノ君が続きます。

 

 壁には杭のほか、梯子があったりロープもあります。

 どれもみな残骸ですけど。

 “準備期間”の意味がわかったような気がします。


 シャネタン組の他、ゾーイとミスティそれにクリームヒルトもロープで窓から行くようです。

 

「私の出番ね」


 ゾーイの投げたロープは生き物のように壁を上って行き、残骸であるちぎれたロープに辿り着くと繊維の一本一本が瞬時にほどけ、元々一本のロープだったかのように接合します。


「流石ゾーイね」


 褒めるミスティ。

 シャネタンに一歩遅れ、ゾーイたちも登って行きます。


 教室の外ではやたら大きな(たる)を背中に担いだオズズ=エゴランと、オズズに乗ったニース=ヘッグが暴れています。


 触られたらダメ。魔法に当たってもダメ。自分の魔法を当ててもダメ。

 ならばどうするか。


「フハハハ! 燃えろ! 燃えろぉぉ!」


 ニース君がオズズの上で笑っています。樽の中には色々道具が入っているようです。


 何を撒いたらそうなるのか、廊下は火の海です。煙がすごく、他のクラス生徒から「目が、目がぁ」と声が聞こえてきます。

 その中をゴーグルをつけたニース君を乗せたオズズ君が、ゆうゆうと歩いて行きます。


 というかニース君あんなキャラでしたっけ。彼が笑うところを初めて見たような気がします。


「トオフ。お前は登らんのか? もうじき中にも生徒が入ってくる。それに先回りして上に登ろうとする者もいるだろう、最初の5分ぐらいが勝負の分かれ目だぞ」


「あ、はい。それじゃ先生行ってきます」


 僕は下からロープで登ってくる生徒に机を落としてから外に飛び出します。


「飛行は禁止。でもこれなら?」


 いきおいをつけて虚空に跳んだ僕は、足元に魔力の力場をつくり、三角跳びの要領で三階の窓に張り付きます。


「おや?」


「遅かったじゃないか。てっきりもうつかまってェしまったのかと心配したぜ」


 窓から教室に侵入しようとする僕に、先に行っていたはずのシャネタンが話しかけてきます。


「ロープは必要なかったようだね」


 ロープを手にしているサルーノが微笑んでいます。ムルムル君も一緒です。


「おやおや勢ぞろいでどうしたんですか?」


「ひとりでやンのもいいけどよぉ。この試験はひとりだときっついぜェ? お前だけひとりみたいだしよ。どうせならオレ達と一緒に行かねェか?」


 そう言ってシャネタンは手を差し出すのでした。

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