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第二十五話 学業は面倒ですね

 シャネタンとクリームヒルトの大暴れは放課後まで続いたので、僕は先に帰りました。


 翌日からクリームヒルトはクラスのスターです。

 たった、9名のクラスですけど。

 入れ替わり立ち代り誰かがクリームヒルトに話しかけています。


「クリームヒルトさん、すっごく強いのね。私感心しちゃった」


「えーとあなたは?」


 ちなみに結果は引き分けみたい。

 クリームヒルトがその気ならシャネタンは最初の一撃で死んでいます。


 そうならなかったということは、クリームヒルトは手加減したということ。手加減するのはいいとして問題は落としどころですが、飽きるまで付き合ったのでしょう。


 登校したとき、校庭のあちこちに破壊の爪あとがあるのを見ました。


「私、ゾーイ。ゾーイ=ピンロイドよ。あなた見たこの無い魔法使っていたけど、どこの魔族なの? 家名はなに?」


 どうもシャネタンは女子からは嫌われているらしく、シャネタンと激闘を演じたクリームヒルトは暖かくクラスに迎え入れられた。特に二人の女子達はクリームヒルトを褒めたてる。


「私、ミスティ。よろしくね」


「ええどうも」

 ぎこちなくクリームヒルトは握手なんてしている。


「それで? どこから来たの? もしかして魔族領の外からだったりするのかしら?」


「えーと」

 質問攻めに困っているのだろう。助けてと口にはしないが、チラっと僕の目をクリームヒルトが見る。


 自分で蒔いた種だろ、自分でなんとかしろよ。そう思いながらも平和な学園生活のため、ここはひとつ良い言い訳をでっちあげましょう。


 クリームヒルト達のそばに行って話しに混ざります。

「あーすいません、ちょっといいですか?」

 

「ああトオフ君。クリームヒルトさんすっごく強いのね。トオフ君も強いの? 角はないけど」

 早速ゾーイさんが食いついてきました。でもこの人ちょっとデリカシーがないですね。


「角の有無は関係ないでしょう。あのですね。僕とクリームヒルトのことなのですが、僕とクリームヒルトは秘密の魔族なのです。どこから来たか、何故強いのか、家名は何か、一切は明かせません。そういう一族なのです」


 僕の言葉に素早くゾーイさんが反応します。

「あら、同じ一族なのね。でも秘密の魔族だなんて初めて聞いた。ねぇやっぱり魔族領の外から来たの?」

 

「だから明かせませんって」


「なんでよ」


「なんでなのかも明かせません」


「もーケチンボねぇ」

 

「まぁまぁ仕方ないよ。そういう魔族なんだよ」

 ぷりぷりと怒るゾーイを、横のミスティがなだめてくれます。


「ええ、ご理解感謝します」


「外の魔族だったら素敵なのに。王国か帝国から来たとしたら素敵じゃない? 共和国や神霊国でもいいけど、今も人間達に囲まれながら自分達の土地を守ってるだなんて私凄い尊敬しちゃう」

 

 地理的に言って王国や帝国は魔族領からかなり遠く、向こうがどうなっているのかよくわかっていないのが実情です。


「逃げてここまで来るほうが大変かも」

 ミスティ手をひらひらさせて、ないない。といったポーズをとりました。



 その時授業開始のチャイムが鳴り、メガネの教員、フォルカス先生が入ってきたのでした。

「よーしお前ら座れー。今度の試験を案内する」


 魔王軍士官学校では、授業と試験があります。

 どちらもは座学と実技があるのですが、重要視されるのは共に実技です。


「恒例のクラス対抗鬼ごっこを行う。前回は散々だったからな、今回は少しは良いところ見せないと降格もあるぞ、覚悟しておけ。ルールは簡単だ。誰にもつかまらずに伯爵(はくしゃく)級の奴等にタッチするんだ。いいな」


 試験。クラス対抗鬼ごっこ。別名狼と仔羊、その他別名多数。非常にポピュラーな遊びだ。先生が簡単なことを簡単すぎる説明をしたので、今一度整理しよう。


・タッチされたら失格。その時点で試験終了


・エリアは学内だけ。飛行は禁止。地下を掘るのもなし。


・全員が鬼であり子。自分の下のクラスが鬼。つまり上のクラスをタッチする必要がある。


・魔法の使用は自由だが、魔法が接触するとタッチとみなされる。つまり下のクラスを妨害する目的でも魔法を使うと失格になってしまう。


 その他細かいルールは気にしなくてもいい。判定係の先生に攻撃してはいけないとか、そういった考えればわかるでしょ的なやつだ。


 それよりも気をつけないといけないポイントは、この学校は下位のクラスほど人数が多いということ。


 従騎士と騎士はどちらも500名程いる。従騎士が騎士を狙ってくれればいいのだが、この二つの階級は合同試験であり、1000人の魔族が上の階級を狙ってくる。

 1000名が一つ上の40人いる男爵級だけを狙ってくれればいいが、ぶっちゃげ逃げ足なんてのは強くなってもさほど変わりはしないしない。


 上の階級ならだれでも良いのだから、騎士と従騎士から逃げなければならないのは僕達も同じ。


 僕ら子爵級は9人。

 僕。クリームヒルト、シャネタン=デカラビア、サルーノ=ジュン、ムルムル=ルシルフォン、ゾーイ=ピンロイド、ミスティ=スカベンジ、オズズ=エゴラン、ニース=ヘッグ、以上9名。


 僕らの狙うのは学校に3人だけいる伯爵(はくしゃく)級とたった1人の侯爵(こうしゃく)級だ。ちなみに侯爵の上のクラスはないので、侯爵が1人で1000人の従騎士と騎士を狙うことになっている。


 あとこれはムルムル君から聞いた話。

 伯爵がやる気を出して、従騎士と騎士を減らしてくれればいいのに、全く彼は動かないそうだ。


 その割には一度も捕まっていないとのこと。


 フォルカス先生が伯爵をタッチしろと言っているのも、ここが理由だろう。


 一度も捕まらない。それどころか姿さえ見えないナンバーワン。

 僕は3人の伯爵よりも、侯爵さんが断然気になります。


「試験日は来週だ。各自それまでにしっかり準備をしておくように」

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