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第二十一話 クリームヒルト視点①

 女神様が二人目の勇者を召喚した。

 そんなのアタシ聞いてない。二度目があるの? だったら何でアタシ達はあんなに必死に、あんなに無理して。


 恨み言がなかったと言えば嘘になる。でもどうだっていい。

 アタシにとって重要なものは永遠に失われてしまった。


 幼い頃、魔法の才能を見出され、優秀な師匠をあてがわれた。師匠のことをドワーフだからって見下す人がいるけどアタシは尊敬してる。


 勇者様のことが好きだった。

 勇者様と出会ってアタシは変わった。この人の役に立ちたい。この人の為にもっと強くなりたい。心からそう思った。


 僧侶ちゃんも勇者様のことが好きだった。魔王を倒して平和になったら二人で告白しよう。どっちが選ばれても恨みっこなしね。


 秘密の約束だった。


 アタシ達の普段の態度でバレバレだったかもしれないけど、師匠も勇者様も何も言わなかった。私は魔法使い。私は私の、皆は皆の役割をまっとうしようとした。


 油断は無かった。初手に出したのは私の最高傑作。改良に改良を重ねた火属性呪文。威力、速度、マナの消費、全てにおいて高い水準。


 赤と白の髪色をした魔族はなんなく弾いた。油断があれば驚きで動きが止まっていたと思う。勇者様は油断なく連携攻撃を繰り出した。


 私と勇者様の連携攻撃。魔王を倒すのはきっとこの攻撃だ。僧侶ちゃんと師匠には悪いけど間違いない。アタシは密かに優越感を持っていた。


 バチが当たったのかな。アタシは魔法を使うだけの機械にならないといけなかったのかもしれない。恋心を持つのは許されなかったのかな。


 勇者様が死んだ。


 あとのことはよく覚えていない。記憶がとぎれとぎれ。


 僧侶ちゃんがいなくなった。師匠が死んだ。

 アタシは師匠だったものを国に持ち帰った。


 神官の部屋に行ったら、神官はボコボコに殴られた後だった。殴ったのは二人目の勇者。


 召喚するとは聞いた、でもそんなにすぐに?


 二人目の勇者はハルトと名乗った。名前を名乗られたときの気持ちをどう表せばいいのだろう、羨ましい気持ち、恥ずかしい気持ち、悲しみ、恨み、怒り、多分どんな言葉でも表現出来ない。


 ハルト君は行動力があった。いくら死んでも死なないチカラを与えられたとはいっても、レベル1で魔王城に突撃するのは普通じゃない。


 アタシにとってハルト君は勇者じゃない、仲間でもない。そう伝えたけどハルト君は文句を言わなかった。困った顔をするだけで「そりゃしょうがないね」と笑って許してくれた。


 正義感と優しさだけは勇者様と一緒だった。


 ハルト君は、必ず赤と白の髪色をした魔族を倒すと約束してくれた。


「だから無理しなくていいよ」

 そう言ってくれた。


「アタシが出来なかったらお願いね」

 図々しいと我ながら思うけど仕方ない、もうアタシしか残ってないんだもの。


 ハルト君にお願いして魔王城に連れてきてもらった。優秀な後輩が出来たもんだ。


 アタシがダメでもハルト君が、もしハルト君がダメでも女神様がさらなる勇者を召喚するだろう。


 宣戦布告と観光。最後の自由だと思った。


 それが


 どうして


 こんな、ことに。


 

 出会った魔族。偶然見つけた。

 運命だと思った。ハルト君には悪いけどやっぱりアタシがこの手で殺す。


 クリームヒルト。殺せなかったばかりか名前が与えられてしまった。


 逆らうことは難しいけどアタシの恨みがあれば不可能じゃない。それに攻撃は自由に出来る。


 一方でトオフという魔族はアタシを殺せない。


 アタシに有利すぎる契約。


 なにこれ。なんなのこれは。


 アタシは、アタシは――――!!





「――士官学校に入ってもらう」


 は? 意味わかんない、誰こいつ?


「僕も入っていいですか?」


 なんだかわからないけどトオフも来るらしい。


 いや、そうじゃない、そうだけどそうじゃない。


 クリームヒルト、クリームヒルトだ。


 名前が与えられて時間が止まった時、アイツの気持ちが流れ込んできた。アタシに死んでほしくないだと?


 秘密の為にとはいえコイツはアタシを保護するつもりらしい。


 嫌だ。コイツだけには守られたくない。


 くそ、何で気持ちがわかるのよ!

 名付けという繋がりがだけで気持ちが判るなんて、どんだけ魔力を込めて名前つけたの?


 アタシの力は下っていない。むしろ以前より強くなっているのを感じるわ。これがアイツの魔力。


 くそ、なんでアタシを強くするのよ、なんなのこの名前。こんなの呪いよ。一刻も早くトオフを殺さないと。


「いいだろう。ただし入学テストを行う。実力は疑っていないが一応決まりだ。明日でいいか?」

 タケミカヅチとかいう魔族とトオフが話している。


「いいですよ、クリームヒルトもそれでいいね?」


 くそ、その名前で呼ぶな、調子が狂うんだよ。


「好きにすれば」

 アタシはそう答えてしまった。コイツを殺さないといけないのに。


 

 

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