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第十四話 忍者魔族

 相手の質問に答えたのは僕ではなく、物凄い勢いで走ってきたティンでした。


「こら! ツキチヨ! 私のご主人様に手を出すな!」


「ご主人様ですと?」

 女の反応は急激でした、僕が反応できないほどに。

 

「これは大変失礼致しました!!」


 ツキチヨと呼ばれた女魔族は、覆面を一瞬で外すと土の上に直に座り、頭を地面にこすりつけ、動きを止めます。


「誠に申し訳ございません! これは土下座です。我が一族伝統の最大の敬意と謝罪を表す礼でございます。また、覆面を外して素顔を見せるというのは(しのび)にとって敬意を表す作法であります。お館様の主人ということは我が一族にとっても御主人であります。そうとは知らず、これは大変もうしわけなく……かくなる上は腹を斬ってお詫び致します!」


 土下座をしながら早口でツキチヨなるお嬢さん言う。

 正直言っている意味は半分ぐらいわからんが、必死に謝っているのは解った。


「ふん!」


 言い終わったツキチヨは土下座をやめると、今度は服の上を脱ぎ去った。

 人通りが少ないとはいえ、ここは城下都市、まだ日も落ちていない公衆の面前でツキチヨは肌をさらして、どこから取り出したのか短刀を手にした。

 勢いをつけて短刀を、お腹めがけて――。


「まてまてまて」

「ちょっと何してるのツキチヨ!」


 ツキツヨの持っている短刀の刃を握って止める。ほう、僕の手に傷をつけるとは、この短刀は相当に出来がいい。


「あーえーとツキチヨさん。僕も悪かった。いきなり殺すとか言ってしまって。とりあえず、その短刀をしまって、服を着てください」


「いえ、死なせてください。ツキチヨは! ツキチヨは!」



 泣き出したツキチヨを落ち着かせるのに時間がかかった。

 ティンベーヌと協力して、ツキチヨから短刀を取り上げて服を着せた。


「申し訳ございません、トオフ様。お手に怪我をさせてしまって」


「もういいよ治ったし。ところで話を聞かせてくれるかな? 君は誰でどうして僕とティンを尾行していたのかな?」


「はッ」

 片方の膝と拳を、地面につけた姿勢でツキチヨが話す。


「ここ最近お館様が外泊されていまして、なかなか屋敷に戻ってこられないものですからツキチヨは心配しておりました。いつものように見回りをしていたところ、ユリ様の邸宅に入るお二人を見かけたものですから、出てくるのを待っていたのでございます」


「ちょっと待って、お館様ってのはティンのこと?」


「はッ。左様でござります」

 妙な話し方をする子だな。


「オーケー続けて」


「ははッ。それで出てきたお二人を尾行していました。私はお二人が仲良く話していたのを耳にし、きっとこれはお館様が悪い男に騙されているのに違いないと思い、というかお館様のことをお前呼ばわりされるのを聞いたとたん、こう怒りが込み上げてきてしまい……」


「オーケーオーケーだいたい解った。ティン、ツキチヨさんってお前んとこの使用人?」


「うん。そうだけど」


「ツキチヨさんは僕がユリの関係者だと思ったわけね?」


「えっとその……」


「相手が四天王だからって気にしなくていい。ユリが信用ならない相手だってんだろ? いい。僕が許す。思うように話すといい」


「はッ。トオフ様の仰るとおりでござりますれば。……よくよく思い返してみれば会話の最中もお館様は、トオフ様のことをご主人様と親しげに呼んでおられた気がしますが、拙者はなにぶん頭に血が上っていた状況でして。ユリ様とお館様は古い付き合いではありますが、何せユリ様は悪いウワサが絶えないお人、このたびは誠になんとお詫びしたらいいか」


「いいて、十分に謝ってもらったし、そのドゲザだっけ? シノビだっけ?」


「土下座でござります。トオフ様。忍とは我が一族のような諜報や暗殺に長けた一族のことを言います。もっとも今は我がニンジャ族だけが唯一の忍ですが」


「ティン。お前家名は?」


「ニンジャです。ティンベーヌ=ニンジャです」

 下を向いていじけたようにティンが言う。


「私の家は没落中なんです。私が四天王に選ばれたのも偶然みたいなもので、本当はご主人様と釣り合わないような、田舎出身の古くてカビ臭い魔族なんです」


「神魔大戦でおいやられたクチか」


 神魔大戦というのは、大昔の神と魔族の戦争のことです。


 昔々、気の遠くなるほど昔のこと。魔族が支配するこの世に、神と名乗る者達が現れ、各地の魔族を滅ぼしました。多くの魔族は死に、魔族の土地は神が創った生き物に支配されました。数少ない生き残りはこの地に集まって魔王城をつくったのです。


「ええそうです。だから私は家にご主人様を案内したくなかったのです。私の先祖がもっとしっかりしていれば、魔族の土地はもっと広く豊かだったに違いありません。ご主人様もきっと私の事を嫌いになったでしょう」


「ティンベーヌ。僕は今、怒っている」


「はい。すいません」


「神魔大戦は当時辺境に住んでいる魔族達がだらしなかったから負けた。だからこの地を残して支配されたというのが歴史の認識だ。……だが僕は違う」


 ティンの目はうるんでいる。


「はっきり言う。神は魔族より圧倒的に強かったのだ。魔族領なんて簡単に消させたんだ。でも神は何故かそうしなかった。僕はそう見ている」


「ご主人様そんなこと誰かに聞かれたら」

 ティンが周囲をきょろきょろと見回します。


「ツキチヨさん、周囲の聞こえる範囲に僕達以外の誰かいますか?」


「いえ、今は誰もいないでござります」


「ティン。僕には家名がない。というか本当の名前もない。トオフってのも僕が勝手に名乗っているだけだ」


「え? そんな馬鹿な、だってご主人様、めちゃくちゃ強いから」

 ティンとツキチヨさんが驚いた顔をします。


「事実だ。それにな、僕がお前を弟子にしたのは、お前が四天王だからでも見込みがあるからでもない、ただ単に気まぐれと成り行き上、仕方なくだ。それと……言いたくはないが僕がお前をそこそこ気に入ってるからだ。変な勘違いをするな。お前もお前の家も何も悪くない」


「うぐっ、うぐっ、ごじゅじんさまぁぁぁ」


「ええい。泣くな面倒くさい! それにツキチヨさんも泣くな! どっちかってぇと貴方は僕と一緒に、この馬鹿をなぐさめる役割をだな」


「だっで、だっで、お館様の選んだお人がずばらじい人だっだがらぁぁぁ」


 ティンは僕にしがみつき、ツキチヨさんはティンに抱きついて号泣。

 誰も見ていないようだからいいものも。


「やれやれ。面倒だ」


魔王軍の秘密兵器(以下略)を読んでくださり誠にありがとう御座います。


読んでくださる貴方様のおかげで僕は小説が書けています。次話も是非読んで下さいネ。


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