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第十一話 ユリの秘密

「あいつは……」


 小柄で筋肉隆々。ヒゲをたくわえたドワーフの男。

 素早い身のこなしにも見覚えがある。

 違いは手には斧ではなく杖がある。


「凍てつく弾丸よ。心臓を貫け。アイシクルバレット!」


 ユリの背後からドワーフが呪文を唱える。

 ドワーフの放った魔法が猪型魔獣を倒した。驚いたユリが振り向く。


「あなたは?」


「ワレのことなどどうでもよい。お主、その鎧をどうやって手に入れた?」


 疲労がたまっているのか、目の下にクマが出来ているドワーフ。眼光は鈍く輝いている。


「これは町で買いました」


「買った? どこの店じゃ? 誰から?」


 斧を下ろしているユリに対して、ドワーフは杖を握りこんでいる。ユリは気づいていないかもしれないが、もし戦闘になれば先手はドワーフだ。


「お店はフリーマーケットです。町外れに並んでる放置露店があるでしょ? あの一画。人物は、あー言っていいのかなーなんかワケ有りぽかったし」


「言え! 言うのじゃ!」


「しょうがないですね。教えましょう。これを売っていたのは魔王です」


「魔王じゃと!?」

 ドワーフが驚いた顔をしますが、それはこちらも同じ。ティンがビックリして立ち上がりそうになるので頭を押さえつけます。


「ええ、私の見立てになりますがあの人物は魔王です。私内心殺されるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしました」


「赤と白の髪色をした少年ではなかったのか?」


「誰ですかそれは見ていませんよ。私が見たのはフードで角を隠した魔族です。何かしらのアイテムで強大な魔力を隠していましたが私の鑑定眼はごまかせません」


「鑑定眼?」


「ええ、私相手のことがわっちゃうんですよ。生まれつき。例えばそうですね、ドワーフさん貴方大事なものを捨てましたね」


 なんだ? なんなのですか? ユリは何を言っている?


「……にわかには信じられん。いやしかし有りうるか、奴と魔王が繋がっていればあるいは……」

 ドワーフが腕を組んで考え出す。どうやらユリの嘘を信じたらしい。


「それとドワーフさんこの斧元々ドワーフさんの物でしょう? 貴方に返すために私こうやって目立つことをしていたんですよ」

 ユリは斧を地面に突き刺す。


「それとこの鎧も要りますか? 正直重くって動きづらいんですよこの鎧」


「ああその鎧の持ち主は装備の重さをゼロにしていたからな。重くても問題なかったのじゃ」


「勇者ですか」


「ガハハハ。どうやら鑑定眼というのは本当らしい。どうする? この国ではワレは敵じゃ。捕まえて衛兵にでも引き渡すか?」


「冗談きついですよ。私じゃドワーフさんには勝てませんし。それに言ったでしょ。私はこの斧を渡したいだけなんです。ついでに鎧も」


「なるほどな」

 ドワーフの杖を握る手から力がぬける。

 斧と鎧を抱えたドワーフ、流石に重いようで足元がふらついている。


「ではワレはこれで、さらばじゃ」


 ドワーフが背を向けて立ち去ろうとした瞬間、ユリは隠し持っていた短剣を取り出してドワーフの背中に刺そうとした。


 完全に刺した。そのタイミング、意識外からの攻撃だったはず。それがかわされたということは読んでいたのか、音を立てて斧と鎧が落ちる。

 ドワーフは残像を残して跳んでいた。


「今のが避けられるとはね」


「くぐってきた修羅場があるのでな、お前さんのような嘘つきは臭いで判る。おー臭くて鼻が曲がりそうじゃわい」


 ドワーフは杖を、ユリは短剣を構える。


「「凍てつく風よ」「燃え盛る稲妻よ」」

 ドワーフから二つの声が同時に聞こえる。


「ご主人様、二重詠唱ですよ」

 ティンが興奮していている。大きな声を出すんじゃない。


「なんだそれは? それとうるさい」


「言葉のまんまです、二つの呪文を同時に操っているんですよ。それに高等呪文、あのドワーフかなり強い」



「――言ってくれるわね。ぶっさいくなドワーフ風情が、二重詠唱? それちゃんと制御できるのかしら」


「「撃てよ踊れよ切り裂けよ」「響け唸れ轟け」」


 ドワーフの魔法がユリを襲う。詠唱が完了する前に効果の一部を先取りして発動させている。


「くそっ」


 ユリは予想外にいい身のこなしをするが、避けるのに精一杯でドワーフからの距離は開いていく、そして防具のないユリでは当たれば死ぬだろう。


「どうしますご主人様。ユリたすけます?」


「ほおっておけ、死ぬなら死ぬでかまわない」

 仮に鑑定眼とかいうのが本当だとすれば、いっそ死んでもらったほうが都合がいい。


「「我は風権能を護る者」「我は焔を喰らう者」」


「「我は氷に眠る者」「我は天を貫く者」」


「「我が意、万物を砕くと知れ」」


「――合体魔法・スターストライク!――」


 ドワーフから放たれたまばゆい光りの束。美しい光りだが全てを消し飛ばす威力がある。

 森に一直線に伸びる破壊痕。めくれ上がった大地が熱で溶けて結晶化している。


「あー!!」

 ティンが大声で叫んで空を指さす。


「あれは?」


 角の生えた魔族が空に浮んでいた。黄色い髪を風になびかせ、黄色の瞳で僕を見て笑った。


「ユリだ」


「やれやれ、我に魔人形態を取らせるとはな。当たれば死んでいたぞ」


 ドワーフとユリの視線がぶつかる。ドワーフは視線を動かし、ティンと僕を見た。


「見つけたのじゃ、お前を殺してやる」


「「破壊しろ」「全てを壊せ」「破壊こそが我が渇望」」

 右手に斧、左手に杖を持ったドワーフが僕に跳んで来た。デタラメな速度。


「そうはさせん!」

 ユリの短剣は柄が伸びて槍になっている。柄の部分でドワーフの斧を受け止めて地面に叩き落すユリ。


「我が名はユリ。魔王軍四天王が一人、槍のユリホオズキ」


 そうだ、忘れていた。

 忘れさせらていた。


 四天王ユリの代名詞的な魔法、認識阻害をされていたのだ。

 あの方は四天王のユリ。槍の使い手にして、偽りの魔人。

 呼吸するように嘘を吐き、同族であっても信用ならない人物。


「「速く」「誰よりも速く」「光りよりも速く」」


 呪文を唱えるドワーフの速度が増してゆく、縦横無尽に跳ぶ流星のようだ。音速を超えた蝿のようだ。ドワーフの目にも止まらぬ猛攻をユリがさばく、ときおり僕とティン目掛けて、ドワーフが飛んで来るが身体を滑り込ませてユリが防ぐ。


「「一秒を無限に」「速度は全てを破壊する」「永遠に加速を」」


「ユリ様、加勢しましょうか?」

「いらぬ!」

 訊いてみたが断られた。


「「この呪文こそワレが勇者殿からいただいたチカラ」「魔法を超越した速度と威力。思い知れ!」「飛翔せよ加速せよ破壊せよ」」


「エタニティアクセル!!」



魔王軍の秘密兵器(以下略)を読んでくださり誠にありがとう御座います。


読んでくださる貴方様のおかげで僕は小説が書けています。次話も是非読んで下さいネ。


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