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第十話 ドワーフ視点②

 僧侶が戻ってこない。山小屋での長期滞在は無理があるので、山を越えて(ふもと)の町で待つことにした。

 山小屋にはメッセージを残してある。あの心配性で、気配り上手な僧侶が見落とすようなヘマはするはずがない。

 するはずが、ないのじゃ。


 何日も待った。

 もうとっくにカタキをとっているはずじゃ。魔王城に行って魔王も倒したとして、十分に帰ってこれる日数。


 町の者達は誰もワレ等が勇者パーティーだということを知らない。この国の民からすれば、ワレ等は王国の私兵。敵国の兵士。


 こっそりと、いつものように旅の冒険者を装い、宿屋にて滞在。


「ねぇ戦士」


「なんじゃ魔法使い」


「もうそろそろこの町を出ないと、怪しまれると思うの」


「そうじゃろうな、へんぴな田舎村。たった二人の冒険者パーティー。安くはない宿で長期滞在。ワケ有りだとしても目立ちすぎるのじゃ」


「だからその、どうする?」


 魔法使いが言ってるのは進むか、戻るかということ。


 普通に考えれば帰るしかない。しかしそれは敗北を認めるということ。勇者パーティーの敗北を、旅の終わりを。


 戻ることは容易い(たやすい)。また山を越えなければいけないのは少々億劫(おっくう)だが、問題はそこじゃない。戻るということは挑むということ。

 勇者が勝てなかった。そして僧侶も。


 頭ではわかっている。理性は認めろという。

 勇者も僧侶も死んだ。

 認めたくはない。認めたくはないが、それが事実じゃろうて。

 

 二人が勝てなかった相手に挑む。それは犬死(いぬじに)じゃ。

 ワレが死ぬのは構わない。でも魔法使いまで死ぬことだけは、それだけは、それだけは死んでも我慢ならない。


 引きずってでも、魔法使いから嫌われても連れて帰る。

 そう決めたのに。


『謎の戦士単独で魔族領へ、勇者との噂も?!』


 勇者殿の防具を身にまとい、ワレの斧を担いだ人物が映った写真。あの魔族の関係者じゃろうか? しかしモンスターを狩っている。人間であることは間違いなさそうじゃが。


 記事に書かれた文章に信用などせぬ。

 しかしこの写真は本物。魔力で現像した写真を加工することは出来るが、新聞屋ごときが加工した写真を見抜けぬワレではない。


「おい! 待たんか!」

 走り出した魔法使いを追って山を越える。謎の人物、偽勇者に会おう。何かを知っているかもしれない、もしかしたら僧侶が生きているかもしれない。


 しかしどうも、嫌な予感がする。

 

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