第七話 久しぶりの女神との再会
いよいよ女神と再開する時刻に近づいてきた。
俺は布団の中に潜り入眠に向けて準備をしていく。
それにしてもこの1週間はやけに長く感じた。恐らく初めての殺人という刺激的なビッグイベントをこなして事によるものだろう。こんなに充実感を感じた1週間は久しぶりだった。
まあその充実感を感じた理由が殺人というのは人としてかなりあれな気がするが。まあいいだろう。
そんなことを考えていると徐々に眠気が湧いてきて、
自然と意識が落ちていく。
「久しぶりね雄馬くん。仕事を始めて1週間で早速1人掃除しちゃうなんですごいじゃない。あなた人殺しの才能があるわ」
そう全く言われても嬉しくない言葉が突然現れた黒いモヤから聞こえてくる。
その声は傲慢で上から目線にも感じる様な言い方でありながらも、本気で自分のことを認めてくれる様な優しさも感じる声だった。
自分は運動能力・学力・コミュニケーション能力という学生というか人間にとって大切な3つの能力がどれも人よりも劣っている。だからこそ褒められるという経験は記憶に残っている限りでは存在しない。
だからこそ、人を殺して偉いという歪で狂った褒め言葉ではあったが、自分の心は満たされ始めて自分のことを承認された様な気分になりとてもいい気持ちにさせられた。
「全く嬉しくはないがありがとう。俺もまさか本当に殺せるとは思わなかった」
ありがとういう言葉は照れ隠しである。人に褒められた経験がないので、素直に受け取る事ができないのだ。
「素直じゃないのね。でも本当にすごいと思うわ。私が今まで依頼してきた人の中でもトップクラスだと思うわ。」
女神は俺の発言の真意を見透かした様に答える。
それにしてもやけにほめてくるな。俺がした事はそんなにすごい事なのだろうか。
「やけに褒めてくるがそんなにすごい事なのか? 大体俺以外のやつはどれぐらいで掃除を始めるんだ?」
俺は素直に疑問に思ったことを女神に聞いてみる。
「人にはよるけど私が依頼した人は大体1ヶ月程度は殺人を犯すと言うことに強い抵抗感を感じて悩むわ。まあ結局そういう人たちもいずれ何かの拍子に誰かを殺し始めるんだけどね」
なるほど。大体のやつは1ヶ月でなんだかんだ殺し始めるのか。能力をもらった次の日に殺した俺はそう考えると大分はやいな。
周りの人間とは違い、圧倒的な速さで殺人をしていたということに驚きながらも他の人間の誰よりも早かったという事実が、またひとつ自分の自信になり、心の中にある余白の量が増えていくのを感じる。
ふとそんな話をしていると、また1つ疑問が湧いてきた
。
(今までで一番早く殺したやつはどれくらいなのだろうか......)
俺は一度気になると、居ても立っても居られなくなるたちなので、女神に聞いてみる。
「ひとつ気になったんだが、今までで1番早く掃除を始めたやつはどれぐらいの速さだったんだ? 」
「私が依頼した人の中で一番早かったのは1分よ。その人は私が能力を渡した瞬間嬉しそうに外に飛び出して無差別に掃除をしていたわ」
俺はあまりの速さに驚く。そんな人間がいるのか。自分が言うのもなんだが確実に頭の外れたやばいやつじゃないか。
人のことは言えないが、そのことを聞いた瞬間全身に寒気が走り、身体中があったこともない人間に対して嫌悪感を抱いていることがわかる。
「そう、今あなたが思った通り完全にイカレてたわ。いわゆるサイコパスというやつね。あなたには掃除をしてほしいけど、あんな風なイカレ野郎になってはダメよ。どうせするなら善人ではなく悪人。その方が絶対にいいでしょ? 」
そう語気を強めにいう女神からは、ただ人間に殺人をさせる冷徹で残虐なイメージとは真逆な正義の匂いを感じた。
(もしかしたら本当に世界のことを考えているのか.....)
俺はただのイカレ女神ではなかったのかと少し女神に対するイメージを改めるとともに、不思議と親近感を持った。
「そういえばあんたについて何も教えてもらってなかったな。俺にあんたのことを教えてくれなにか? 流石に一方的に自分にことが知られているのは気持ち悪いぞ」
少し毒を混ぜながら女神に発言する。先ほど親近感を抱いたことにより、もっとこの女を知りたいと思ったからこその発言だ。
「言われてみればそうだわ。私あなたに何も話してないわね。ちょっと待って、今そっちにいくから」
その発言を言い終わると同時に先程声が聞こえていた黒いモヤモヤの中から女性の様なものが落ちてきた。ちなみにこの状況は全て俺の頭の中で起きていることだ。
「まず自己紹介がまだだったわね。私はリリスという名前を持った女神よ」
現れた瞬間喋り出した女は正直言ってかなり魅力的に感じた。顔立ちはキリッとしており自己主張な激しそうな印象を受けるが、自分の想定した顔立ちの予想範囲内だったのでそこは驚かなかった。
服装は黒を基調としたドレスの様なものを着ておりとても落ち着いた印象を受ける。しかし、両胸に視線を伸ばすと、全くこちらの心を落ち着かせない程の大きな2つのボールが存在していた。これは男子校生には刺激が強すぎる。
ただやっぱり神様ということもあり、神聖なオーラを身体中に纏ているのを感じる。
「どうしたのかしらそんなにみとれて。何か気になるところでもあるかしら? 」
女神は不思議そうにこちらの顔を見てくる。どうやらそういうことには疎い神様らしい、
「いやなんでもない。初めましてリリス。これからよろしくな」
俺は女神に対する信頼と親近感を言葉に乗せて、これから長い付き合いになるであろう女神に挨拶をする。
「ええ、よろしくね雄馬」
女神も口に笑顔を見せながらそう言ってくれる。その発言から俺に対する信頼の様なものが感じ取れた。
「それにしてもあなた顔つきが変わったわね。声にも少し自信を感じるになってきたし」
「そうか?まあでも確かに最近そう言われることはあるな」
ついに学校の連中だけでなく、女神にも言われてしまった。どうやらだれが見てもわかるレベルで変わっているらしい。
「私のあげた能力で自信を持ってくれるなんて嬉しいわ。人を殺して手入れたものだとしても自身は自信。その自信をこれからどんどんつけていけばいいわ」
女神は小さな子供に語りかける様な優しい声で俺に語りかけてくれる。
「ありがとう。そうするよ、本当にお前のおかげで俺は変わっていってることを実感している。だからこれからも掃除をしていくことでどんどん自信をつけていくよ」
素直に女神に感謝し、これからも仕事をこなし続けて自信をつけていくことを宣言する。
「頑張って。でも人を殺してどんどん自信をつけていくのもいいのだけどそれ以外も何かしてみたら? 筋トレとかあれ自信つくって聞いたことあるわよ」
急に筋トレという俗っぽい言葉がでてきた。まあ一瞬驚いたが心に留めておこう」
「後サウナもおすすめよ。メンタルが弱っている時とか心をリフレッシュしたい時に使うと効果的よ。今は女神の世界でも効果的なメンタルヘルスの方法として親しまれているわ」
どうやら女神というのもかなり人間に近いことをしているらしい。俺は元々抱いていた親近感よりも大きな親近感をリリスに感じた。
「とりあえず今言いたいことは全部言ったわ。何か言っておきたいことある? 」
「今のところは何もない。大丈夫だ」
「あら、そう。じゃあとりあえず今日のお話は終わりね。また来週会いにくるわ。さようならー」
リリスは言い終わると同時にすぐに黒いモヤモヤの中に消えていった。
(切り替えの早いやつだな...... まあまたすぐに会えるしいっか)
そう自分の中で思ったことを解消させると自然と頭が働くなっていきどんどん意識を維持する力がなくなってきた。そこから俺はまた深い眠りに落ちていく。
そして、1週間ぶりの女神との会話は幕を閉じまた退屈でつまらない生活が始まっていく。




