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第三話 いじめる同級生③

とりあえず女神は1週間後にくるということだったので、それまで普通に生活していこうと思う。


俺に与えられた能力は、簡単に言うと自分の言葉にとても大きな力が宿るというものらしい。まだよく分からないがこれからから理解していけばいい。


「ゆうまーもう朝になってるけど何してるの? 早く起きてくれない? 私は昨日も遅くまであってとても疲れてるの。それなのにあなたは自分の力で起きることさえせずにぐうたら寝てどういうつもり? 母親の気持ちをもう少し理解してくれてもいいんじゃない? 」


そう母親はいつものように延々と俺に対しての不平不満を遠慮なくぶつけてくる。


「ごめんなさい母さん。次はないから許して欲しい。」


俺は反省している感じたっぷりで返事をした。


「まあいいわよ。あなたが反省してるのはとても伝わったわ。早く学校に行く準備をしなさい。」


母親はそう何事もなかったかのように朝ご飯の調理に取り掛かった。

これはおかしい。いつもならこちらが謝罪しても不満は止まらず一方的に言われ続けるのに。


「これが能力ってことなのか......」


これは使える。誰かを殺すだけではなく、こういう自分の嫌な場面を避けることにも使えられるから。


俺はとりあえず用意された朝食を食べ、学校に向かう準備をしていく。

その後、学校に徒歩で1時間半かけて到着した。

自分の学校は山の上の方にあり、普通は電車か自転車で通学するのだが、家庭の事情によりそれは俺にはできない。


「毎日登校するだけでも一苦労だな。俺もせめて自転車通学にしたい。」


そう俺は家内もしない理想を教室に向かう道中で考える。

そして、自分の教室がある場所に到着し、教室の中に入る。入ってみると自分の登校が遅かったということもあり大半の生徒は既にきており、それぞれ仲のいい友達と談笑している。

その中の1人が俺に話しかけてきた。


「おーいお前汗だくじゃん。くせーなーそんな汗かくなら電車でくればいいだろ。」


半笑いで俺に対して罵声を浴びせてくる。


「あ、ごめんそう言えばお家貧乏で電車代が払えないのか。ごめんごめん忘れちゃってたー。」


今度は俺のお家が貧乏だというところまでいじってきた。周りもクスクス笑っており恥ずかしい。正直気分はよくはないがわざわざ反応するのもめんどくさく、こう返事をする。


「そうそうごめんね。俺の家貧乏だし学校から遠いからこんな汗描いちゃうんだよ。ほんとごめんー」


俺は媚を売るような笑顔を作り返事をする。

情けない。でも返事をしてわざわざ事態を拗らせる方が問題だ。今のクラスでやっていくにはこうするしかない。

俺に対して罵声を浴びせてきたのは中村修二という男でクラスのリーダー的存在である。俺に対してはとても当たりが強いが他の人に対しては人当たりもよく多くの人から好かれている。

しかも文武両道で運動も勉強も出来ることから女子にもとても大人気だ。


「敵に回すにはリスクが高すぎる......」


心の中でそう思い、やり過ごそうとする。

すると中村が近づいてきて俺に言う。


「気持ち悪いんだよその顔。自分が一番不幸ですみたいな顔しやがって。ちょっとは言い返したらどうなんだ」


侮蔑的な声で俺のことを辱める。だいじょうぶ、こんなのいつも言われてることだ。我慢していればいずれ時間が経って周りも俺への関心を失うはずだ。

その後もいろいろ言われ心に少しダメージをおったが時間になり授業が始まった。1限は数学で、どんどん話が進んでいく。


「だめだ。全く理解できない。やっぱり俺に勉強の才能はないな」


そう思い目の前の授業に集中せず窓の外を見る。今日の空は晴天で雲ひとつなく綺麗である。


「いい天気だなーこうやって空を見ている時だけ落ち着くことができる。」


そう外の景色を見つめぼんやりしていると、ふと中村に言われた言葉が蘇る。


「お前は貧乏で汗臭い。」


端的に言えば今日はこんなことを言われた気がする。確かに中村が言ってることは事実かもしれない。でもそれは仕方がないことではないのか?全て貧乏である事も汗臭いという事も全部俺の意志でそうなっているわけじゃない。

今日言われたことだけじゃない。普段俺に対して言われている事も誰かを不快にさせようと思ってそうなってるわけじゃない。

なのに何故俺はこんなに言われなければならないんだ。


「思い出したら少し腹が立ってきたな」


心の中でどうしようも出来ないとは内心わかっていながらも中村への怒りが湧き上がってくる。

何か具体的に自分に対する誹謗中傷をやめさせる方法はないだろうか? と1限の数学が終わってからも考え続ける。


「あ、そういえば女神にもらった力があるな。あれを中村に対して使えばいいのか」


俺は明暗を思いついたと思い、少し嬉しくなる。でもそんなのダメだ。同じクラスの人間をやるなんて到底自分のメンタルでは出来ない。他の方法はないかと1限以降の授業でも考え続ける。


すると、昼食の時間になった。やっと授業という苦痛の時間から解放された俺は伸びをしてリラックスをする。


「まあ自分は経済的に苦しいからご飯は食べないけ

ど」


周りの人間が持参しているお弁当やパンなどの美味しそうな食品に目を奪われ嫉妬しながらも我慢する。じゃあ自分の友達から貰えばいいのではないかという話だが、自分には友達がいないのでそれは無理な話だ。


「とりあえずトイレにでも行って用を足すかー」


そう思い教室を出てトイレを目指す。そして教室の近くにあるトイレではなく、今は誰も使っていない、4階にあるトイレに向かう。理由としては、お昼の時間というのはトイレが混みやすくガヤガヤしており、落ち着かないというしょうもない理由からだ。こんな自分を情けないと思うがまあ仕方がない。


「クソーやっぱり4階は階段を登らないといけないからしんどいな。」


学生にしては体力のない俺は息をハアハア切らしながらもなんとかトイレにつき用を足す。


「はあースッキリした。戻りたくはないけど教室に戻るか。」


そう思い、俺はトイレから出ようとした。すると、自分の顔が人の胸にぶつかった。俺は下を歩きながら歩いていたので全く気づくことができず衝突してしまった。


「あ......すいません」


俺はすぐに謝りぶつかった人間の横を通り過ぎようと体を移動させ前に進もうとする。


「ちょっと待ってよ石神。わざわざこんなトイレで会うなんて奇遇だな」


まさか自分のことを知っている人だとは思わずとても驚き軽いパニックになる。まぜ、こんな所に人がいるんだ、しかもなんで俺のことを知っているんだと一瞬の間で頭の中で思考を巡らせる。

そして頭の中を整理した俺は自分に対して話しかけてきた人間の顔を見た。


「よお、別に驚くことはねえだろ。もっと喜んでくれよ。」


そうゲスな笑みを浮かべながら中村修二が俺に話しかけてきた。

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