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第16話 新しい転校生①

 今日は週明けの学校だ。朝から快晴で非常に気持ちがいい。ただ自分が最も心地よいと思えている1番の要因は、自分のことを心底苛立たせてくれた陸也と高木の抹殺によるものだろう。


「お陰でいい休日を過ごせたよありがとう」


 心の中で感謝する。あの2人の存在に。もしあの2人がいなかったら自分の温泉旅は少し味気ないものになっていただろう。殺す前までは、怒るの感情が胸を支配していたが今では感謝の念さえ抱いている。こんなことを考えていると、朝のホームルームが始まり担任が話し出した。


「はい。じゃあ今日はこのクラスに転校生が来たからな。みんなに紹介するぞ。ほらほら入れー」


「まじか! 今日転校生くるのか。どんな子が来るか楽しみだな」


「それなー可愛い子だといいなー」


「......」


 頭ので休日間の幸せだった出来事について噛み締めていると、突然転校生が来るという事実に教室中がざわめき出した。人は新しい物が好きだ。学生という若い立場という事からその傾向はかなり強い。それぞれがどんな転校生がいいかどうかで盛り上がっていた。


「ただ自分には関係のない話だな。多分俺はその転校生とは一度も話す事はないだろう。なぜなら俺にはコミュニケーション能力がないからだ。」


 雄馬は心の中で自虐する。学校が始まって以来一度も友達が出来ていない自分にコンプレックスがあるかないかといえばあるがまあ仕方がない事であると頭では理解できているのだ。それに人殺しの自分には友達なんてできないだろう。


 そんなことを考えていると、転校生が教室に入ってきた。見かけからして女子だろう。長い黄色というよりも黄金と呼ぶ方が相応しいぐらいに立派な髪を携えたやつ。それが雄馬の抱いた第一印象だった。


「海津雷華といいます。皆さんよろしくお願いします。


「はーいじゃあみんな仲良くしてあげてくれよー。それじゃあ席はどうしようかな」


 髪型のド派手さとは真逆のよくいうとお淑やかで悪くいうと地味な自己紹介だった。まあ転校初日ということで多少も緊張はあるのだろう。教室中も髪の毛に対する驚きとその逆のようなおとなしい性格に肩透かしを喰らいながらもそれぞれ海津雷華のことを見ている。


 海津自信は、地味な挨拶とは裏腹にしっかりと前を見据えている。まるで心の中に強靭な信念があるのではとこちらに推測させる程度に。そしてそんな海津が見ている方向が何故か自分のことを見ているような気がするのが、気のせいであってほしいと願う所だった。


「先生私あそこの席がいいです。あそこ。」


「あそこ? あー石神の隣の席か。そうかそうかまあ転校初日で色々とわからないこともあるだろうし、何かあったら石神に聞くようにな。頼んだぞー石神」


「......はい」


 どうやらこちらの嫌な予感は外れておらずむしろ想定以上に嫌なことに巻き込まれてしまった。突然の出来事という事もあり反射的に返事をしてしまった自分を恨んだ。


 雄馬はこれから先の自分に降りかかる面倒なことを一から想像し、暗い気持ちになっていた。


 教室中の視線が転校生から俺に注がれていた。なぜわざわざ人望も社会性もない石神の隣を選んだんだという好奇心に満ちた嫌な目だ。こちらが不快感を感じていることなど一切気にせずに無遠慮にクラス中の人間が俺を見ていた。


「やっぱり注目集めるよなー。こんな目立つ転校生の隣に座りたいとか言われたらさ」


 社会性のない自分にとって他者に注目されるというのは耐え難い苦痛だ。以前の自分に比べて自信がついたと言ってもこの好奇に満ちた視線には中々なれない。


 そんなことを考えていると転校生が俺の隣の席につき挨拶をしてきた。


「よろしくね石神雄馬くん。あなたとなら仲良くなれるんじゃないかと思って隣の席に指定したんだけど迷惑じゃなかった?


「......別にいいよ。よろしくね」


 努めて明るくなるべく嫌われないように愛想よく返事を返した。昔からいじめられっ子だった自分は無意識に相手に嫌われたくない、いじめられたくないという心理が働き無理をしてしまう。中々治せないがいつかは治るといいが。


「よかった。じゃあ改めてよろしくね」


 海津が可愛らしい笑顔で微笑みかけてくる。女性との交流が悪意を除いたものに限ると一切なかった自分にとって海津というどこをどう切り取っても美人な人間に笑いかけられるというのは中々慣れないものだ。

 美人に微笑むか蹴られたせいか雄馬は上手く言葉を紡ぎ出すことができずぎこちない笑みを返した。


「おいおいなんだよ石神と転校生すげえ仲良さそうじゃん。羨ましい!」


「それなー!なんでよりによって石神なんかを選ぶんだよ」


 嫉妬と羨望の混ざった声が所々から聞こえてくる。これだから嫌だったんだ女子の転校生に隣の席を座られるなんて。全員ヒソヒソ声を意識して話しているのだろうが、生憎耳のいい俺には丸聞こえだ。まあ気にしてもしょうがないのはわかるが。


 しばらくすると、今日の1限でもある数学の授業が始まりそれぞれが授業に集中するためのモードに切り替えていった。


「なんか凄いみんな私たちのこと言ってるね。ごめんねなんか私のせいで」


 海津が申し訳なさそうに謝ってくる。ド派手な金髪ではあるが謙虚で思いやりに満ちた声色でそれだけで優しい子であることが伝わってくる。


「大丈夫だよ。こんな事もすぐに落ち着くだろうしね!」


「良かった! そう言ってもらえると私も助かる。所で1つ聞きたいことがあるんだけどいいかな」


 海津は先程までのにこやかな顔を急に引っ込めて真顔になった。まるで今までのにこやかだった自分は嘘であると言わんばかりに。コミュニケーション能力が低く共感力が低い自分でもわかる。こいつはやばいと。


「石神くんはさー人を殺した時ってどう思ったー?」


 先程までのにこやかな表情から一変し自分にだけに聞こえる小さな声で聞いてきた。その顔は悪意そのものでこちらの動揺を楽しんでいるようにも見えた。


 雄馬の心の中は自分のやっていることを知っているという想定もしていなかった状況に脳がパニック状態に陥っていた。


「ねえ早く教えて。その答え次第で私やらないといけない事があるから」


 発言と同時に海津の周りにはパチパチと雷のようなオーラが見えた。

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