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第十三話 温泉マナー最悪男④

(どうやって殺そうか......)


 頭の中で高木を殺すための手段を考える。先程振われた高木からの暴力によって我慢の限界を迎えた俺は様々な殺害方法を連想していた。


(溺死もいい、打撲死もいい、絞首死でもいいな。こうやって考えると色んな人の殺し方があるな。)


 ポンポンと人の殺し方を思いつく自分が怖くなる。ただ、前提として先にこちらに危害を加えて来たのは完全にあちらなのでもう全く申し訳ないとは思わない。むしろ、こんな風に自分を怒らせてくれたことにさえ、感謝をしている。俺は出来るだけ殺すならクズがいいし社会的にいなくなった方がいいと考えているからだ。


「まてよ、隆也ー」


「早く来いよー高木ー。お前は相変わらず足が遅いな」


 相変わらず温泉という非常に神聖な場所であの2人ははしゃいでいる。2人の顔は何が悪いのかと言いたいほど眩しい笑顔を浮かべており、心の底から楽しんでいるように見える。


(根っからのクズでよかったよ。遠慮なくこれで殺せる)


 改めて2人のクズさ加減を理解し殺すための行動に移していく。とりあえずは高木だ。隆也と一緒にいることで調子に乗っている虎のいる狐には死んでもらおう。隆也のせいで人に迷惑をかけることに罪悪感を抱く事がなくなっているのかもしれないが、こちらとしてはしったこっちゃない。


「すいません!」


「なんだよ、さっきこけてたダサいガキじゃん? なんの用だよ」


「さっきは偉そうなこと言っちゃってごめんなさい。2人が楽しそうだから羨ましくなっちゃって」


「そういうことな。確かにお前友達いなさそうだもんな。どんまいどんまい」


 高木はニヤニヤしながら近づいてくる。本人は友好的な笑みを浮かべているつもりだろうが、その顔は悪意に満ちていた。顔を見ただけでこれからこちらに何かしらの害を加えようとしているのが見て取れるレベルだ。


「まあでもどっちでも良いわ。とにかくお前は静かに一人寂しく温泉に浸かっとけよ!」


「ドンっ!」


 高木はそういいながら俺のことを勢いよく蹴り飛ばした。腹部に強烈な蹴りをお見舞いされた俺は想像以上の苦しさに悶え苦しむ。


「本当ごめん。僕が悪かったから。ちょっと伝えたいことがあるんだけど耳を貸してくれない?」


 痛みを必死で堪えながら俺が必死に声を出した。暴力になれていない自分がここまで努力して声を出すのはもちろん目の前にいるこの憎い男を絶対に殺すためだ。こいつのことを殺せるのなら今一瞬感じるだけの苦痛など本当に些細なことだ。


「お前しつこいな。どんだけ俺に絡んでくるんだよ。いいか? 俺はもうお前みたいなのと口を聞きたくないんだ。だからもうあっちへいってくれ」


 呆れるような表情を浮かべ面倒臭いものを軽くあしらうかのように俺の方に向けて手を振った。


(そうか、こいつは俺が思っている以上にクズでどうしようもない人間なんだな)


 ここまで自分に対して悪辣な言葉をぶつけられたことのなかった俺は怒りに満ち溢れていた。最初はなんの繋がりもない人間から悪意を向けられるという経験に驚きしか感じなかったが今は違う。もう今目の前にいる人間を殺すことしか考えることができない。


「温泉に潜って2度と出てくるな。溺死しろ」


 取り繕っていた無害で弱気でどうしようもない陰気のやつという部分を一気に取り払い高木、隆也というこの温泉地に来たクズ2人だけにしっかりと聴こえるように叫んだ。


 当初は、高木だけ殺して隆也の方には自分達のマナーの悪さのせいで友達を無くしたというショックで自分の意思で自殺させてやろうと思っていたがもうそんなことはどうでもいい。俺が今考えられるのはこの2人の命を奪うことだけだ。


(どうやらうまくいったようだな)


 2人の体はまるで操られているのかと思うほど脱力し、目は虚になっていった。ただ、今回は今までと違う部分がある。それは相手の意識を奪っていないというところだ。


「なんだよこれ、勝手に体が動いてる。お前、何したんだよ! 早く辞めさせろよ」


 勢いよく俺に向けて今自分の身に起きている理不尽に対する不満をぶつけてくるが知ったこっちゃない。全てこいつら自身のせいで起こっていることだ。せいぜい自分の行いの悪さを悔やみながら死ねばいい。


「ごめん無理。2人とも今日初めて会ったけど死んだ方が良いと思うよ。じゃあね」


「てめえ、ふざけるな……」


 最後に何かを伝えようとしていたようだが高木はなんの躊躇もなく自分の近くにある温泉に潜水していった。ブクブクと言いながら何かを必死に伝えようとしているようだが生憎水中ということもあり何を言っているのかは全く伝わってこない。


「じゃあな、屑ども。生まれ変わったらもっといい人間になれるといいな」


 その言葉を心の中で呟き本気で彼らがいい人間として生まれてこれることを祈った。


 高木よりも立場が上に見えた隆也だったが、自分の身に起きたあまりにも突然の出来事に脳の処理が追いつかなかったのかは分からないが静かに水中に沈んで行った。最後は、高木と同じようにブクブクと何かを伝えようと必死にもがき苦しんでいたようだが、どうでもいいことなのは確かだろう。


(これでまたクズをこの世から消すことができた。これからもどんどんクズの掃除をしていこう)


 そうして、俺の中にあった人殺しに対する抵抗感はさらにぐんと下がり罪悪感を抱くことはこの時点でもうなくなった。


 むしろ自分のことを正義の味方だと思い世の中に役に立っていると思うほど石神の心は壊れてしまったようだ。


(これからもどんどん殺して稼ごう)

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