第一話 退屈な日々の終わり
多分学生のほとんどの人間が思っていることがある。それは暇だということだ。
趣味に没頭したり勉強に打ち込んでいて暇を感じることがないほど忙しいという人もいるとは思うが、大体の人間は毎日暇だなと思いながら日々ダラダラ過ごしていると思う。
「マジで暇すぎる......何にもやりたいことがないし毎日つまらないなー」
こう思いながら俺も常に生活している。俺の名前は石上雄馬といい高校2年生で帰宅部である。
なので部活に放課後打ち込んで部員の仲間たちと熱いキラキラした青春をすることもなく毎日退屈に過ごしている。
俺が部活に入らなかった理由としては学生生活を過ごしていく中で必要な運動能力・コミュニケーション能力・学習能力このどれもが欠けているからだ。
「せめてどれかの能力は恵んでくれよ」
そう俺は悲観的になりながら家に帰宅する。
家に着くと母親が話しかけてくる。
「ゆうまー、ちゃんと手洗うのよーその後はいっぱい勉強して大きな会社に入ってお母さんを楽にさせてね」
これがうちの母親の決まり文句だ。どうやら俺は母親から将来の世話係としての役割が決まってるらしい。
「わかってるよ、すぐにしてくる」
俺はそっけなく返事をし自分の部屋に向かっていく。
そしてもちろん勉強などはせず一瞬にして床に寝転がる。
うちは母子家庭で母親と2人暮らしである。兄弟はおらず父親は物心がつく前に他界してしまった。なので母が1人で金を稼いでいるがそれだけでは当然やっていくことはできず俺もアルバイトをして家計を支えている。
「自分はただただ働くために生きているのだろうか」
そう虚しい気分になりながらも俺は毎日バイトしている。。今は学校が終わりゆっくりできる時間ということもありSNSを開く。
そこにはいろんな人が充実感に溢れる眩しい写真がいっぱいあった。
「どこでひとはこんなに差がつくんだろう、俺は毎日バイトばかりで楽しいことが何もないのに」
そう思いまた虚しい気持ちに襲われる。
「まあこんなことは考えても無駄か」
そう俺は諦め、携帯を閉じる。そしてしばらく時間が経ち母親によばれ冷凍ご飯で作られた手抜きご飯を食べ、部屋に戻る。そして携帯ゲームをしばらくして今日は眠りについた。また明日から同じような日々が続くのか。
「嫌だ嫌だ嫌だ。もうこんな生活続けたくない。俺も充実感が欲しい。こんな人生なら続けたくない」
目を瞑っている間こんなネガティブな言葉ばかりが頭に浮かぶ。それでも時間が経てば人は眠れるようにできている。俺もそのまま気づいたら寝ていた。
すると何か声が聞こえる。気のせいかもしれない。でも確実に何かが自分に対して話しかけている。
「君は恵まれているのになんでそんなに辛そうなの?意味がわからない。もっと自分が幸せな状況にいることに気づけばいいのに」
そんな声が聞こえた気がする。
「何か自分が充実できるようなものが欲しいの?それなら私がプレゼントしようか? 」
そこだけはとてもはっきり聞くことができた。「本当か?お前が俺の人生を変えるきっかけをくれるのか?」俺は縋る縋るように答える。
「女神に対して偉そうな口の聞き方ね。まあいいわよ。そのかわり覚悟のいるものだけどいいわよね」
そう女神と名乗るものが俺を試すかのように話かける。
「なんでもいい。俺は今の退屈でつまらない現実から抜け出せるならどんなことだってやる。
だから俺に今の生活を変えるチャンスをくれ」
俺は心の底から叫んだ。
「わかった。いい覚悟ね。私があなたにして欲しいことはこの世界のために掃除をして欲しいの」
そう女神という存在は淡々と喋る。
「掃除? 一体何を掃除すればいいんだ?」
俺がなんのことか分からず質問する。
「それはね人間よ。今の世界は人間が増えすぎてていてこのままだととても問題なのよ。だからあなたにはそれをなんとかして欲しい。」
「何を言ってるんだ!俺に人を殺せと言っているのか!」
まさかこんな野蛮な提案だとは思わず大きな声で叫んでしまう。
「わかりやすく言えばそうよ。いまは人口増大のせいで食料問題や環境問題が起きてるのよ。だからそれらを解消するためにあなたには掃除をして欲しいの。」
そう説明をされた。確かになんとなくニュースでそう言った問題は見たことある。何十年後かには食糧難になり環境汚染が進んでいくとかなんとか。でもだからと言って人殺しなんかできるわけない。
「安心して。あなた以外にもたくさんの人にはこの仕事をお願いしているの。今の人口を減らすには数が必要だからね。もちろん犯罪にはならないように私が力を使って隠しているわ。」
そう女神は誇らしくいう。
「そうかよく聞く魔法的なあれか」
「そうそうだからもしバレて警察に捕まるかもとかは一切考えなくていいわ」
女神は微笑みながら教えてくれる。でもたとえ捕まらないとしても人殺しは人殺しだ。絶対にやってはいけないことである。そんなことをすればもう真っ当な人間として行けていけないかもしれない。俺はいろんな考えが頭によぎる。
そこでふと今までの自分の過去が頭に浮かんだ。
そうだ俺は昔から何をやってもダメだった。勉強も常に底辺レベルで運動はまともにできるスポーツが一つもない。コミュニケーション能力も全くダメで本当の意味で気の許し合える友達なんて1人もいない。
「そうだ俺は何をやってもダメなんだ、だからこのまま成長していけば確実に嫌な未来がまっている。」
そう俺はこれまでの経験から推測する。ならこれはチャンスなのではないか? そう自分の考えが徐々に自分の考えが変わっていくのを感じる。すると女神が
「ちなみに1人掃除するたびに報酬を渡すわ。10万円でどう? 」
「そ、そんなに貰えるのか!? まずその報酬をもらえるという保証はあるのか? 」
俺は信じられず女神に食い気味に言葉を発した。
「全く信じてないようね。それなら明日の深夜の2時にあなたのお家のポストに前金としてポストに10万円を入れておくわ。それなら信じられるでしょ?」
確かにそれなら信用しないわけにはいかないだろう。そして同時に今話している女神というものの正体も真実味をおびてくる。
「わかった。じゃあもし本当に俺の家のポストに十万円が入っていればお前の話を信じよう」
そう俺はいいとりあえず考えがまとまった。
「とりあえずあなたがやるかどうかはまた明日あなたが眠りについてから来るから、その時決めればいいわ。それまでに自分がどうしたいか決めておいてね。
そういうと声は聞こえなくなり俺はそのまま寝てしまった。そして朝鳥の鳴き声を聞き俺は起きた。
「なんか昨日は具体的でとてつもなく変な夢を見たな」
そう俺は思う。よく考えればあんなのただの夢だ。あの夢の中であった女神みたいなやつなんて現実にいるわけがない。そう思い、夢のことなど気にも留めず朝の支度をし、学校を出る。そして退屈で虚しい学校生活が終わり、帰宅する。
「今日も昨日と同じことの繰り返し。本当につまらないな。」
そう思いながら俺は部屋でダラダラ過ごしている。そして夜になった。そこで俺はふと思い出す
「確か夢の中の女神は2時に来ると言っていたな......」
そう思い俺はどうせないだろうと思いながら一応深夜2時まで待ってみた。そしてしばらくすると深夜2時になった。すると、カンっという音が玄関らへんで聞こえた。俺は足早に確認しにポストに向かう。
そしてポストを漁ると本当に十万円あった。まじか、あの夢は現実だったかのかと少し恐怖をかんじたがそれ以上に今までにないようなワクワクを感じる。
「女神は俺が寝たら現れると言っていたな、とりあえず寝よう」
そう思い興奮から中々寝付けなかったがなんとか寝ることに成功した。するとまた、微かに声が聞こえその声がどんどん明瞭に聞こえてくる。
「前金は受け取ってもらえたようね。どう? 私のことは信じてくれた? 」
そう女神は聞いてくる。
「ああ流石に信じる。こんなことありえないからな。」
そういい俺は女神の言うことを完璧に信じた。
「結局どうする? あなたは私の提案に乗る? 乗らない? どうするの? 」
そう聞いてくる。
「もしやらないなら貴方から記憶を消してその十万円もなかったことにするけど」
女神は少し高圧的に言い放つ。そして俺は言った。
「俺はやるよ。こんな充実感のない、生きていてもなんの面白みもない人生を変えるために」
俺は堂々と女神に宣言した。
「そう?いい覚悟ね。これからよろしくね雄馬。また会いにくるわ。」
そう女神はいいまた声が聞こえなくなった。
ここから俺の自分のためでもあり世界のためでもある掃除の日々が始まっていく。