ずるいずるいの妹と観察者の姉、婚約破棄後の二人の行動の結果が導く最後とは?
ずるいずるいー、おねえちゃまだけそんなケーキをいっぱいたべられてずるーい。
ずるいが口癖の妹を観察しているとある一定の癖がある。私はホールケーキの前でずるいと騒ぎ立てる妹の行動を見て、食べていいわよとにっこりと笑ってみた。
あ、ずるがしこく妹が笑った。
今日は私の八歳の誕生日なんだけど、いつもこうくるのよね。変化があまりない。面白くない。
「もういりません、あの子にあげてください」
前回は少しだけおねえちゃまにもあげようねとの両親の助言で、妹はほんのすこしだけ私にケーキを譲った。でも今回はすべてあげますという行動にでてみることにしました。
あ、じゃあもういらないと食べかけのケーキを放棄しました。前は意地でも全部食べてやるといったのに、行動の違いはでましたね。
私はいつも妹のずるいずるいという言葉の後の行動を観察してきました。
もう少し小さいときはなぜ妹ばかりわがままを許されるのか? という理不尽にたちむかおうとしましたが。
「お姉ちゃんだから妹にゆずってあげなさい!」
「お姉ちゃんだから妹とけんかしちゃだめ!」
「おねえちゃんなんだから……」
と二歳年上なだけで、おねえちゃんだからという言葉で私の反論が封じられるので諦めました。
あきらめて、このずるいずるい大魔神の行動を観察することにしたのです。
いつもいつもおねえちゃまがいじめるの~とあのずるい大魔神は吠えます。
いじめてませんし、それにずるいずるいといってあなたがとろうとするのは私の私物です。
私は侯爵の一番上の長女、そしてずるい魔人は次女の妹。
妹という特権を最大限に生かそうという性格を持っていたのがあの子でした。
私はお姉ちゃんなんだからといつも言われて、妹に大切なものを譲るよう強要されてきました。
あきらめて、あの大魔神を観察してみると、いつもやっぱり行動は変わらない。
たまに変化はありますが、十三歳になっても全く同じでした。
私は十五、結婚適齢期に入ろうとしていました。やっとあれと離れることができると安堵したものです。
そして私が王太子殿下の婚約者に選ばれて、ずるいずるい大魔神がお父様にずるいを連発していました。
「ずるいずるい、どうして地味なお姉さまが王太子殿下の婚約者になるの。私がなりたーい」
「……それは無理だ、リーゼル」
さすがに無理とぴしゃりとはねのけられ、ずるい大魔神は怒り心頭でした。
しかしこれは譲れないとお父様、これはいままでにない展開でした。
どういう行動に次はでるのか? 冷静に観察する私。
いままでにないパターンですが、まあ予想通りというか……。
「王太子殿下、あそびにきちゃいました」
婚約者の妹という特権を生かし、王宮に出入りするようになった妹、さてはて、ずるいを発動しなくなったのは外聞が気になるのか?
私は三人でお茶をしながら、妹が王太子殿下にアピールするのを観察していました。
しなをつくる。そして甘えかかる。小首をかしげる。
まあいつもと変わらないパターンではありました。十三歳からのアピールに困った顔の王太子殿下、さすがに二十歳にはその手は通じないようです。
同世代には通じたのにとばかりに今度は妹キャラとやらを演じようとします。
「お姉さまと結婚されたら、殿下がおにいさま♪になられるのですのね」
あ、殿下が何か困ってます。こちらをちらちら見てます。助けてくれという感じですか。
でも助けようにもこのずるい大魔人は私ではどうしようもできません。
三人でのお茶会が何回か終わりました頃、私は王太子殿下に呼び出されました。
「できたら君との婚約を一度解消したい」
「ええかまいません」
「君はいつも冷静だね」
「そんなことだろうと思ってました」
「え?」
私はふうとため息をついて、まあこうなるだろうと予測をしていたことを話しました。
まずあの妹に王太子殿下がほとほと困っていて、そして私があれをどうにもできないということがわかって、そして十三歳の年下の女の子を邪険にもできず、なら縁をなくせばあれと離れれると殿下が考える。
そこまではよめてましたし。
「……君は意外に物事を考えているんだね」
「慣れてますし」
「そうかい」
そして私は王太子殿下と婚約を一旦解消しました。そしてあのずるい魔人の本格活動は停滞するより余計悪化しました。
婚約者にしてくれアピールをいやというほど王太子殿下に向けてしたのです。
私はその行動を観察しつつ、いつも通り本を読みながらあのずるい魔人がどうなるか考えておりました。
そして一か月後、王太子殿下の婚約者が決まりました。
なぜか私で、そして妹は王宮に出入りを永久に禁止、私との接触、王太子殿下との接触も永久に禁止されることとなりました。
王太子殿下のお願いでこうなりましたが、まあ最後はこうなるかと予想したうちの一つでしたが。
「……これでやっとゆっくりできる」
「そうですね」
「もうあの妹攻撃だけは辟易してたよ。アゼルだけで十分だ」
「妹君で困っておられましたしそうだとは思ってました」
「そうだよ。君も大変だっただろう」
まあ。妹キャラで行こうとした路線は別に間違いではありませんでしたが、本当の妹がいて困っている兄には通用しないという所があの子の考えが甘いところでした。
「おにいちゃま、遊んで、ずるーい、おねえちゃまと二人だけで遊んでる~」
「ああアゼルか、わかったわかった」
御年五歳の妹王女を見て、仕方ないなあというように笑う殿下、年の離れた妹をもつ兄の苦労をまた聞いてくれと耳打ちする彼に私はええと頷いたのでした。
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