表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

芸術はデボーション

 


 もみじちゃんは、いいました。

 ある()(あお)くてひくい、おおきな(そら)(した)



「ゆきちゃん、だいきらい」と。



 わたしはむけました。

 そっぽをむいて、おこっていたから。

 おなじかおをむけました。



「わたしもよ、もみじちゃん」

「もっと、もっと、だいきらい」



 もみじちゃんのゆるくたれた、あかちゃ(いろ)のおめめからは、めらめら、ゆらゆら、(こころ)がとびだしました。

 しずかで、ひっそりと、ぬくもりのあった(こえ)は、もうどこにもありません。

 もみじちゃんのお(くち)から、つきささる(おと)だけが、ちいさくもれていました。



「ゆきちゃんは、いやだったんだね」



 わたしに()せてきた、もみじちゃんの(あし)もとには、おもいがくぶちがありました。


 うんしょ、うんしょ、とかけ(ごえ)にのせて、せなかにおんぶしてきたものです。

 つめたいかぜにおされながら、がんばって()ってきました。

 もみじちゃんなら、きっと、()きだといってくれるとおもっていました。


 それは、きん(いろ)のつる(くさ)が、ふちのまわりをかざる、うつくしいがくぶちです。

 そこにおさまるものはありません。

 ただ、()をおさえる台紙(だいし)があるだけです。

 わたしはその、ていねいにほられたふちだけで、じゅうぶんでした。


 でも、いまは、まっ(しろ)地面(じめん)にうまっています。

 きん(いろ)のふちの、すみっこがうまっています。


 もみじちゃんは、あっちのほうをみていました。

 わたしは、(はん)ぶんだけ()えるかおを、()つめました。



「どうしてなの、もみじちゃん」



 わたしはいいました。

 がくぶちをゆびさして、ちいさく、(くび)をかしげました。


 もみじちゃんのあわい(いろ)のおめめから、ひゅる、ひゅるる、ひややかなかぜがふいてきます。

 (からだ)にささって、いたいです。

 (こころ)にささって、いたいです。


 もみじちゃんが、ずんずんと、(ある)いていきます。

 せなかを()せて、とおくへ、ずっととおくへ。

 その(さき)にはまだ、かれた()っぱが、かさかさと(おと)()てています。

 わたしがふみ()ることのできないばしょに、もみじちゃんはかえっていくのです。




 つぎの()の、あさ。

 ()のえだからたれる、つららの(もり)から、わたしは()ました。

 がくぶちはまだ、まっ(しろ)くてつめたい、けっしょうの(うみ)にうもれています。


 きのうとちがうのは、きん(いろ)のつる(くさ)のかざりが、()えなくなっていることです。

 きんきんとかがやくおほしさまからふってきた、つめたいけっしょうが、それをかくしてしまっているのです。

 わたしは、おひさまにみとれて(ひか)る、はくぎん(いろ)地面(じめん)をほりました。


 ()つけたがくぶちには、やっぱりなにもかざられていません。

 がくぶちにおおわれたくぼみに、ぎん(いろ)のけっしょうがかたまっているだけです。

 それは、ほんとうにうつくしい、1まいの()になっていました。

 もみじちゃんのことを、わたしはおもい()しました。



 ひまわりちゃんに、()いにいったのだろう、とかんがえていました。



 ひまわりちゃんをつれて、ふたりで、おさんぽをするのでしょう。

 きっと、そのころには、もみじちゃんの()きなものであふれているはずです。

 赤色(あかいろ)()っぱも、あぶらをまぜた()()も、だれかがわすれていった(ほん)も。

 わたしのしらないもので、もみじちゃんのまわりにあるものです。


 いっぱい、おもしろいを()つけてきた、その(あし)でまた、()いに()てくれるでしょうか。

 そのときは、あたらしいものをたくさん、()ってきてくれるでしょうか。

 わたしのがくぶちもわすれてしまうくらいの、ゆかいな、なにかを。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ