太陽とアステリズム
ひまわりちゃんは、いいました。
ある日、青くてたかい、おおきな空の下。
「もみじちゃん、ありがとう」と。
わたしはこたえました。
口のはしをあげて、笑っていたから。
えがおでこたえました。
「ありがとう。ひまわりちゃん」
「きっと、もみじちゃんもきにいるよ」
ひまわりちゃんのほそくてきれながの、おひさま色のおめめからは、きらり、きらり、まぶしい光がこぼれました。
つん、として見えるのに、笑うと、おめめのおしりがさがるのが、とてもかわいいです。
ひまわりちゃんのえがおにつられて、お空もすごくたのしそうに見えました。
「もみじちゃんに、みてほしいの」
わたしに見せてきた、ひまわりちゃんのりょう手には、前にかしてあげた、ちいさなもの入れがありました。
おひさまに5かい、さよならといって、おつきさまに6かい、こんにちはをいう前のことです。
わたしがひまわりちゃんにわたしたとき、ものいれのなかには、なにもありませんでした。
ものいれの外に、わたしの好きなかざりがたくさんついていて、そこが気に入っていたからです。
だから、なかに、なにか入れたいと思ったことはないです。
でも、いまはちがいます。
かえしてもらった、ちいさなもの入れのなかには、なかみがあるみたいです。
手のひらにうけとったとき、ちょっとだけ、ずしっ、としずみました。
ひまわりちゃんは、笑っています。
にっこり、えへへ、と笑っています。
なかに入っているものは、すごく良いものなのでしょう。
これから、もの入れをあけて、なかにあるものをいっしょに見ます。
わたしは、たのしみだね、といいました。
ひまわりちゃんは、もうすこしまってね、といいました。
わたしは、おつきさまをまちました。
き色くて白い丸が、いちばんたかくのぼるのを。
となりのひまわりちゃんは、わたしより、わくわくしています。
「ひまわりちゃん、おしゃべりしよ」
わたしはいいました。
ひまわりちゃんは、すてきなものを見つけるのが、じょうずです。
いままで見つけてきたものを、いっぱいおはなししてくれました。
わたしは、じっと、ききいっていました。
心のなかで、むくむくと、あたたかいきもちがおおきくなっていきました。
いつのまにか、おつきさまがのぼっています。
首をうしろにたおして、見上げるほどたかいところにあります。
わたしは、もの入れのふたに、ゆびをかけました。
ひまわりちゃんは、やっぱり、きらきらと笑っていました。
にっこり、くすくす、と笑っていました。
もの入れのなかには、ひまわりちゃんのたのしいが、しきつめられていました。
よるのお空にかがやく、3つのおおきなほしが、とじこめてありました。
デネブと、アルタイルと、ベガ。
ほそながくて、おおきな三角になるためのせんをつなぐ、おほしさまです。
そのおほしさまが、ひまわりちゃんのだい好きなものなのだと、おしえてくれました。
もの入れから、おほしさまがのぼっていきます。
おおきくて、くらいお空に、すいこまれていきました。
もの入れのなかは、空っぽです。
わたしは、おほしさまがなくなったことを、気にしていました。
でも、ひまわりちゃんは、おこりませんでした。
さくらちゃんに、会いにいくよ、と笑っていました。
さくらちゃんに会えたら、また、見られるようになるそうです。
でも、おめめのはしに、きらりと光るつぶがありました。
それだけを、わたしは、ずっとおぼえているとおもいます。
またつぎも会えたら、ひまわりちゃんは、見せてくれるのでしょう。
わたしのもの入れをいっぱいにする、たいせつな、なにかを。