花達のメランコリー
さくらちゃんは、いいました。
ある日、青くてひろい、おおきな空の下。
「ひまわりちゃん、ごめんね」と。
わたしはききました。
まゆ毛をさげて、なきそうだったから。
わけをききました。
「どうしたの? さくらちゃん」
「あのね、ひまわりちゃん」
さくらちゃんの丸くてきれいな、にじ色のおめめからは、ちょっとずつ、ちょっとずつ、なみだが、ぽとぽとおちました。
かわいくて、お花のはらっぱみたいに、さわやかなえがおは、もうどこにもありません。
さくらちゃんのなみだは、あたたかくて、土の地面にすぐとけていきました。
「ひまわりちゃんの、だいじなもの」
わたしにみせてきた、さくらちゃんの手のひらには、きのうかしてあげた、ちいさなかみかざりがありました。
わたしのたんじょう日に、おかあさんとおとうさんから、プレゼントだよともらったものでした。
かみかざりには、いろんなお花が咲いていました。
でも、いまはお花が、ばらばらになっています。
さくらちゃんは、泣いています。
すごく、すごく、泣いています。
かみかざりが、こわれてしまったから。
わたしは、かなしくないよ、といいました。
さくらちゃんは、かみかざりはつかえないね、といいました。
わたしは、すこしだけさみしくなりました。
なみだは出なかったけれど、泣きたくなりました。
だけど、さくらちゃんのほうが、とても、とっても泣いています。
「さくらちゃん、だいじょうぶだよ」
わたしはいいました。
かみかざりをうけとって、もういいよ、と笑いました。
さくらちゃんのきれいなおめめから、また、ぽたっ、となみだがおちていきました。
ほんとうに、とてもかなしそうです。
わたしは、笑っていました。
さくらちゃんが、やさしくて、うれしかったのです。
でも、さくらちゃんは、やっぱり泣いていました。
つぎの日も、またつぎの日も、ごめんねと泣いていました。
ずっと、ずっと、泣いていました。
さくらちゃんのなみだを、わたしは毎日みていました。
いろんなお花や、あおいお空や海のように、たくさんの色があったおめめから、ずっとなみだがおちていました。
だけど、ある日。
さくらちゃんに、会いにいくと、どこにもいませんでした。
すずしいかぜがふく、すっきり青い空の下。
そんな日がつづいても、さくらちゃんには会えませんでした。
いつもあそんでいたばしょなのに、さくらちゃんは来てくれません。
かわりに、すわっていた大きな岩の上に、1まいの葉っぱがありました。
きれいなみどりに、白い石でせんをつけた葉っぱでした。
そこには、さくらちゃんのことばが、ひとつ──。
ゆきちゃんに、会いにいくね。とかかれていました。
ゆきちゃんは、きれいなものをたくさんもっているそうです。
どこにいるかわからないけれど、会いにいくそうです。
すぐにまた、いっしょにおしゃべりしたいけれど、えがおを見るためにがまんします。
つぎにさくらちゃんに会うときは、その手にもっているのでしょう。
わたしのかみかざりのかわりになる、きれいではなやかな、なにかを。