神都襲来 邂逅 回想レオナルド編
そこはまさに地獄絵図だった、いきなり空間に亀裂が出来て裂けたと思ったら見た事も無い化け物達が流れ込んでき
周りにいる生物を食い散らかして侵略してきた
「おいレオ、生きている市民は俺が救助する、お前は城を守っていてくれ」
「父さ…はい、了解いたしました隊長」
その言葉を聞いて父は背中を向け翼を展開した、少し心配になりつい言葉を掛けてしまった
「父さん、気をつけて」
「ふん、自分の心配をしろレオ、紅鎧を着て負けるなど許されんのは知っているだろう」
紅鎧…父が着ている鎧は第九位階級世界のあらゆる名匠達が命を失いながらも最高位悪魔を閉じ込め力を付与させる事に成功した鎧だ…第一騎司団隊長しか着る事が許されない力の象徴と言っても良いぐらいだ
「まぁ良い、帰ったら家族皆で豪華な物を食べるぞ」
父は紅鎧から魔法を使い紅蓮の翼を展開し空高く飛び目に見えないスピードで戦場に突撃した
時々父が放ったであろう魔法で轟音が鳴り響く中、王の扉前で守りを固めしばらく警戒をしていた
しばらくすると父が遠くの向こうから歩いて帰還をしてくるのが分かり、やはり父は強いのだと胸を張れる思いでいっぱいだった
よく見ると所々重傷に近い傷を負っているのが見えたので慌てて近寄り声をかけた
「と、父さん!大丈夫?!」
父の姿がようやく見えるようになり…あり得ない姿を見た
死んでいた、体は呪いが蝕み腕は欠け足は変な方向に曲がっていたそして…頭がなかった
「お、活きが良い奴が来たな、やっぱりデュラハンにして少し歩かせて正解だったな!」
真横から声がし慌てて飛び退いた、そこには父の頭を手にぶら下げ血塗れの腕を喰べている少女がいた
「やっぱこの辺りになると美味しいな、もっと欲しくなってお腹がペコペコだぜ」
ケプッと腕を喰べ終えて一息ついている少女を見て…正直言ってちびりそうになってしまった
「父さんを殺したのか…」
「お、息子さん?ならこれお返ししないとな」
父の頭を無雑作にこちらへ投げて来たので慌ててキャッチし
父の顔を見た…面影が少しあるぐらいで目はくり抜かれ歯は全て抜かれて舌は無くなっていた、それを見た瞬間怒りを抑えれなくなって剣を抜いて構え振りかぶった
「貴様ぁ!よくも、よくもぉ!」
父は偉大だった、誰にでも接し話しを聞き悩みを解消したり困っている人がいたら助けていた
俺には少し厳しかったけど、稽古や勉強をつけてくれて強い父を憧れて俺も背中を必死に追いかけて騎司団に入って父の補佐役にまで必死に努力して縋りついた
そんな父が…多分簡単に死ねなかったのだろう…苦悶の表情で顔を弄ばれ死んだのだ、許せなかった
少女の物理障壁に当たり弾かれてもがむしゃらに父に教えられた剣術を振った
「おー、やっぱり似てるなぁ剣の振り方とかそっくりだ」
パリン…と音がして物理障壁が弾け飛び、好機と思い振りかぶる
「まぁ、良く頑張ったな?こいつに簡単に剥がされて気を取り直して結構厚めに張ってあったんだが…」
腕をあっさりと掴まれ引き寄せられ、少女が密着するように手を回し抱きしめられた
「離せ!くそっ!」
もがいていると肩に頭を置かれ耳元で囁かれた
「お前の父親を蘇らせる事は出来るぜ?」
驚いた、父が生き返る事が出来ると聞きもがくのをやめ集中した
「ただし、条件がある」
「な、なんだ…何をすれば良いんだ」
顔の真横で少女がニコリと笑顔になり口を開いた
「大切な物を対価に生き返らせてやるよ」
「た、大切な物…?」
少し記憶を覗くぞー、と少女が言い赤い霧に包まれた
ほんの少しだけ時間が経ち赤い霧が霧散した
「成る程ぉ…恋人がいるのか、しかも婚約してる」
「ッ!ナヤには手を出すな!」
「なら父親の件は無しだな、交渉決裂だ」
「ぐっ…」
どちらも大切な人だ、選べる筈が無い
頭が痛いまるで直接ハンマーで何回も強く殴られている痛みが響く
少女が体を締め上げる、体の中がぐちゃぐちゃになりそうだ
「ガハッ…ぐぅ…」
死にたくない、そう思った
「死にたくないか?怖いのか?」
少女は一旦締め上げるのをやめて覗きこんで来た
眼帯が巻かれていて目は見えないが不思議と吸い込まれそうになり慌てて顔を逸らした
「…ならやめてやるよ、ほら」
手を離され自由になり少し呆けてしまった、何故離したのか分からなかった…羽虫のようにプチっと潰せるはずなのに、少女は殺さなかった
少女は笑顔で今でも覚えている言葉を口にした
「強くなったら喰べてやるよ、お前が生きる代わりにこの世界の全てを喰い散らかしてやるから懺悔でもしてるんだな」
そう言い残し少女は創り出した黒い扉を開き消えたいった
正直その後は覚えていない、無我夢中で剣を鍛え魔法も父より強くなるまで練習して、父がしていたように明るく皆と接して行った。
どのくらいたったのか忘れてしまったが、俺はようやく父が着ていた紅の鎧を着れる許可をもらった
そして、今目の前に…宿敵がいる
今度は負けないと誓って、俺は迫ってくる鈍い銀色の物体を斬る