魔の森 遭遇1 かつての蒼空
「だから、イラッとしても魔術を放つ癖を治しなさい!分かったわね!」
ふおおぉ…足、足がぁ…
やっと長時間に渡る説教が終わり立ち上がろうとして足を小鹿のようにプルプルさせているといきなり足に電流が走る
「ぴぇ!」
「フフッ、何その可愛い声」
「て、てめぇ…あ、ごめんなさい突かないで下さぴぇ!」
「フフフッ、[ぴぇ]は反則よ[ぴぇ]は」
「ふ、ふおぉぉ…覚えてろよアリアァ…!」
足がまだ痺れてプルプルしているが指を指して睨みつける
「はいはい、可愛いから効きませんよー」
頭を撫でられるが許さない、絶対に根に持ってやる
「フフッ、可愛い」
さらに頭を撫でられるが…許さない…ゆ、許さないからな
「ふん!もう良い、プロフェンス、笑顔になる暇があったら紅茶入れて」
「はいはい、了解致しましたお嬢様」
一個はいが余計だ
置かれたカップを口に近づけて紅茶を飲み香りを楽しむ
「それにしても…私が守った所以外砂漠にして、どうするのよこれ」
「それについては本当にごめん、アリア」
「良いじゃない、すぐ直せるのだから」
「アリサ、貴女の労力を考えなさいよ」
と3人で会話をしていると突然、森が残っている方から声がした
「〜〜!〜〜」
「あ?なんて言ってるんだ」
「えぇ!森が無くなってやがる、ですって」
耳が良いなぁ、アリアは…と感心しているとどうやら向こうからこっちに来るつもりらしい
「あら、こっちに来るわね」
「喰べたい?アリス」
「いや、今クッキー食べてるからいらない」
「なら、穏便に行きましょう」
と話し合っていると高身長の銀と薄い青が混じった女がこちらに近づきながら声をかけてくる
「動くな、貴女達に質問したい事がある」
「あら、何かしら?お嬢さん」
「この状況について何か知っているか?」
「私達は知らないわよー」
というとあからさまに疑念を抱いているようで、こっちに質問してくる
「貴女は何か知らないか?」
「んにゃ、知らねぇ」
そうか…と言って仲間と相談してくると言ってきたので待つ事にした、数分すると2人連れて戻って来た
「すまないが、お前さんらはあからさまに怪し過ぎる」
「怪しいからなんだよ、連行でもするのか?」
「あぁ…すまないが王国で聴取、尋問する事にした」
「えぇ…グレイス、貴女が行って来なさいよ」
「なぁ、お嬢さんこのグレイアって奴が一番情報待ってるぞ」
「うぇ?!何言ってるのグレイス!」
「そうねぇ、グレイアが一番事情を知ってるかもしれないわ」
「グレイサまで?!」
〔痺れてる時に突いてごめんって!〕
とりあえず無視しておく、あの時の恨みはデカいぞ
「ふむ…全員に同行願いたいのだが、先輩、どうしますか?」
「全員に同行を願いたい、協力してくれると嬉しい」
「…だってよグレイス、グレイサ」
「あら、なら仕方ないわね」
「チッ、しゃあねぇ」
「協力を感謝する」
「なぁ、お前」
隣にいる少し悪そうな顔をしている奴に声をかける、今ここで重要になる事を思い出したので聞く事にする
「俺か?なんだい嬢ちゃん」
「王国にはどのくらい美味しい飯があるんだ」
「食事?あぁ…確か俺が知っている限りだと大抵の所は美味しい所ばかりだ」
「お腹が空いているのかい?」
そいつの反対にいた奴が聞いて来たので素直に答える
「王国ってやつまでの距離によってお腹が空く、空かないが決まる」
「それについては問題ない、私達がここまで来るのにおよそ8時間しか掛かってない」
「なら、大丈夫…かな」
「そちらの執事殿は?」
「おぉ…すみませんご挨拶が遅れました、私めの名前はロフェンと申します、以後お見知りおきを」
「ロフェン殿も同行をお願いする」
「了解致しました」
「三人方の名前を教えてもらってもよろしいか?」
「私はグレイア、覚えなくて良いよ」
「私はグレイサです、お見知りおきを」
「俺はグレイスだ、なんとでも呼んでくれ」
名前を教えると、ポカンと目の前の女性が固まる
「ま、魔女でその名前…さては災厄の三女?」
「あ?なんだよ、それ」
と質問すると、思案顔になり少し黙り込むので待つ事にする
「あぁ…すまない、私の故郷での御伽話でな…グレス、グレア、グレサと呼ばれる魔女が出てくるのでつい」
御伽話か、偶には読み返して見るのも面白いかもしれないなぁ…まだ残ってたっけ
「あら、その御伽話、是非移動中に聞きたいわ」
「…人に読み聞かせるのは慣れてないが努力しよう」
王国に行く事が確定になって移動する事になり、さて移動しようとした時
「グルァェァェァ…」
「なっ!ブラックドラゴン?!」
いきなり横に黒いトカゲが降り立って来た
[よくも、よくも私の息子を殺してくれたな!人間!]
「っ!竜言語が出来るドラゴンだと?!そんなの言い伝えにしか残ってないぞ!」
「どうしますか先輩!」
「ワルフ…俺あのドラゴンがなんて喋ってるか分からねぇ」
「そんな事気にしてる場合か!」
[ごちゃごちゃ喚くな、トカゲ風情が]
「え?」
「な…」
「は?」
[そうよ、貴方の管理不足じゃない、私達のせいしてもらったら困るのよ]
[そうね、貴方が半分悪いわ]
何いきなりメンチ切ってくるんだこのトカゲ、あのクソトカゲみたいに消してやろうか
[き、貴様ら何故我らの言語を使える!]
[あ?んなの聞いたら理解出来るだろうが]
[しらばっくれるな!その口から無理矢理吐かしてくれるわ!]
話が終わった瞬間黒い炎が次々と降ってくる
「聞きたい事が沢山あるが後にする!手を貸してくれないか!」
「名前は?」
「エリス・フェルドノートだ」
「長い、エリスで」
「構わないから手を貸してくれ!」
動くのは面倒くさいがあのトカゲが降らしてくる炎のせいで釣りの時の事を思い出して来てイライラして来た、とてつもなくイライラしてくる
「なぁ、槍とか無いのかよ」
槍?とハテナマークで対応してくるのでもう一回言う
「丁度良いサイズの槍が欲しい」
「あ、あぁ…予備で持って来てる俺の使っても構わないぜ嬢ちゃん」
と、槍を渡してくれた奴に向き直り礼を言う
「えーと…ワルフ?だったけか、ありがとうな」
再度黒いトカゲに向き直り槍を逆手で持ち投擲の構えをする
「お、おい…そんなので倒せる訳ないだろ!」
なんか言われてるが無視だ、とりあえずこのトカゲは生かしたら駄目だ、俺の平穏の為にも
「『駆け昇れ、天へ天へ突き抜けろ、あの時の蒼き空を求め、我は今ここに至る、果てしなき蒼空の輝きは星をも砕く光槍なり』」
思いっきりあのクソトカゲに向かって詠唱魔術を唱え手元の槍をぶん投げる
「『タクマァ』『スカイマーダ』」
投げる瞬間に魔術回路を構築し詠唱魔術を発動する
一直線に光を纏った槍がドラゴンに突き刺さり穿つ、次の瞬間青白い光を放ちながらドラゴンは消失した
《詠唱魔術》
魔法と違い呪文を使うが魔素を使わず、自らの魔力のみで発動する魔術である
この詠唱魔術だけでも大量の魔力を消費するにも関わらず魔術回路を構築しなければならないので使えるのは上位世界の住人しか使えないと天界の書庫に記されている魔術
詠唱魔術『スカイマーダ』
かつて空に憧れ、空を目指し、空に夢見た龍王は小さき頃に見た蒼き空を見る為空を駆け昇りかつての蒼き空を見、星の様に輝く蒼い光の槍を手にしたと言われる、その龍王が習得した光の槍を後世に伝えるべく残された詠唱魔術
実際にその蒼き光槍は龍王が住む星に落ちて来た巨大な星の隕石を貫き消失させたと管理データに残っている数少ない伝承に残っている