移動先には覚えが無い
………しまった、ここ何処だよ
「おかしいな…ちゃんと指示通りに走ったはずなんだが」
〔遅いわね、グレイス〕
〔まさかあんた迷ったの?〕
「う、うるせぇ!ちゃんと指示通りに走って、これなんだよ!」
……!そうだ、走るのが駄目なら飛ぶか
そうしよう、その方が迷わない
〔普通に『ゲート』使えば良いじゃない〕
「めんどくさい、疲れる」
〔仕方ないわね…繋げるから待ってなさい〕
と、どうやら『ゲート』で迎えに来てくれるらしい…後で拳骨の一つでも貰いそうだが気にしない、決して怖くない
そう身構えていると目の前に深淵の様な穴が空間に空いて腕が出て来て手招きしてくる。
「早く来なさい、わかったわね?」
「はーい」
手を掴んで引っ張られる、風景が青空一面に広がり少し眩しい
「遅いわよ、グレイス…せっかく手土産持ってきたのに」
ガシャンと目の前に投げられた手土産とやらを見る、どうやら騎司のようだ
「…美味いのか?こいつ」
「何も無いよりはマシでしょう?」
それもそうかと思いながら鎧と兜を無理矢理剥いだ後に、首から齧りつく
「ッ!痛ぇ!離しやがれ!化け物が!」
どうやら痛みで起きたらしい、ジタバタ抵抗してくるが腕と足が無い時点でそこまでめんどくさくないので、気にせず喰らいつき肉を齧り取る
「相変わらず、好き嫌いは激しいけどお腹空いてたら気にしないのね」
「良い事よ、とても」
無理矢理齧り取り続けたら死んでしまったらしい、気にせず腹に手を伸ばし思いっきり手を突き刺す
「ふぇっと、ほほだっふぁっけ」
腸を掴み思いっきり引き抜くと『クリーン』で綺麗にされているのであろう腸が出てくる
「お?『クリーン』使ってくれてたの?ありがとう」
「気にしなくて良いわよ、そのくらいで喜ぶなら」
頭を撫でられるが気にせず腸を貪る、味はとてもイマイチだがお腹が空いているから仕方ない
ひと通り腹を食べたら内臓に手を伸ばし引きちぎって口に入れる…相変わらずイマイチなのが残念だ。
最後に心臓を掴み齧りつき喰べる、顔や服が赤に染まるが気にせず喰べる。
「あら、頭は食べないの?」
「ひゃいごにたぷぇる」
「そう…ゆっくり食べて良いのよ」
と言われたので暫く残っている内臓も腸を喰べ終わるまで貪り、骨を折ってスナック感覚でガリガリと喰べる
「相変わらず、綺麗に食べるのね」
「あら、貴女がそう注意してからちゃんと綺麗に食べるようになったじゃない」
話している二人を無視して頭に手を伸ばし背骨諸共引き抜いて、背骨を切り落として喰べる
噛み応えがある骨だからスルメみたいにガジガジしながら二人の顔を見る
「?食べ終わったの?」
「まだ、頭残ってる」
「そう、それで食事中に申し訳ないけど…何か報告する事あるかしら」
んー、と記憶を蘇らせながら背骨をガジガジ噛んでいると言わなきゃいけない事を思い出した。
「あいつらにバレてると思う、懐かしい奴の仲間がそう吐いたから信憑性高いと思うぜ」
「なら偽名は使わなくて良いのかしら?」
「こうやって3人の時だけは良いんじゃねぇの?」
「そう…分かったわ、アリス」
「ん、ならあまり気にしなくて良いのね」
「そうだな、気にしなくて良いと思うぜ、3人だけなら」
「アリス、背骨食べ終わるの早いね」
頭を掴み目をほじくり取り口に放り込む
飴みたいに転がして遊んだ後に噛み潰すと液体が溢れ出て少し面白い
「脳は食べないの?」
「えぇ…この美味しさの脳味噌は不味いから嫌なんだよ」
「そうねぇ…仕方ないわよね」
口を開き舌を掴んで引き千切る、舌は好物だからこの程度の美味しさでも満足出来る良い部位だ
「ほんと、舌を食べる時は満足そうよね」
「美味しいから」
「そ、食べ終わり次第『モンドゲート』を起動して第二階級世界に行くらしいから、ちゃんとしておくのよ」
「ふぁーい」
顔の肉を喰べながら返事を返す、中々柔らかいな頰の肉
暫くすると喰べ終えて満足したので口元を袖で拭き取ろうとすると
「これ、使いなさい…分かったわね?」
アリサから可愛い刺繍が縫われてあるハンカチを渡されたので、それで口元を拭く
「よし、綺麗になったね、アリサ『モンドゲート』使っても良いよ」
「分かったわ『モンドゲート』起動」
塔の頂上にある扉が反応しゆっくりと開いていくと、その先には森の景色が広がっていた
「どこの世界なんだよ、ここ」
入りながら辺りをキョロキョロ見て、アリサに問うと
「ここ…第二階級世界の…{アグニエル}ね」
「んな所あったっけ?アリア」
「忘れてるわよ、あんな昔の事」
と、三人共まったく覚えてない世界へ繋がっていた