3話「多少でどこまで許されると思った?」
食堂からの帰りに立ち寄った図書室。
「こんにちは。御縁君とザガンさん。」
突然後ろから話しかけられ、俺とザガンは即座に後ろを振り向く。そこには知らない女子生徒が立っていた。アヤも急に話しかけられたこと、二人が振り向いたことに驚き、遅れて振り向く。
「お前、なぜ私がザガンだと分かった?なぜ干渉魔法の影響を受けつつ、干渉前後の幻音を認知できる?お前、何者だ?」
ザガンが敵意を剥き出しにしている。こんなザガンは初めて見た。それに対して女子生徒は、特に警戒してる様子もなく、事情を説明し始める。
「昨日の午後、急に君達二人のイメージが頭に流れ込んできてね。時間差で御縁幻音と御縁願莉、それぞれの名前や姿。御縁君の姿は前と今の両方が、ザガンさんに関しては角のあるイメージまで流れてきた。それで気になってたところで、丁度君たち二人を見つけたから話しかけたの。名前も姿も、どっちも上書きされるようなイメージだったけど、上書き前の名前も姿もしっかり覚えてるよ。何のためにあのイメージが流れてきたのかは、君達とその周りの人達を見てだいたい分かったけどね。」
「そうか。バラムの干渉魔法が効かなかったから、その干渉魔法で伝えられたイメージだけ受け取ったと、そう言いたい訳だな。だが、それはおかしい。干渉魔法の影響を受けた者は必ず記憶が改竄される。魔力が高く、記憶の改竄の効かない者は、そもそも何の影響も受けない。そのイメージが流れ込んでくること自体がおかしい。影響を受けつつ、流れ込んだイメージを知り、そのうえで記憶は保持される。そんな異常な状態は通常ならありえない。高位の悪魔ですら、干渉魔法の影響を受けてしまえば、記憶の改竄は回避できない。魔法の使用者が魔王ならなおさらだ。なぜ人間のお前にそんなことができる?お前は何者だ?特殊な魔法を持った異端者か?単純に、高い魔力と特殊な体質を保持しているだけの人間なのか?正直に答えろ。」
「さぁ?申し訳ないけどそれに関しては教えられないなぁ。見た感じ、ザガンさん、明らかに害は無さそうだけど、完全には信用できないからね。」
「そうか、まぁたしかに当然だな。ならせめて、名前だけでも名乗ってもらおうか。そのくらいなら、同じ学校の生徒である以上、隠しておけないんだから、教えてもいいだろう。」
「まー、そのくらいならね。どうせ隠したところですぐ分かっちゃうもんね。私は三年の硴水碧音だよ。御縁君より一つ先輩かな。」
「へー、先輩かぁ。で、硴水先輩はただ俺達の確認しに来ただけですか?それとも、なんか他にも用があったりします?」
「いーや、特になんにも。まあ、用はあるにはあるけど、別に今じゃなくてもいいし。気になっただけ。にしても、悪魔が生徒を洗脳してまで転校してくるのか。ちょっとビックリしちゃった。」
「あー、まぁ確かに。そうですよね。」
「いやいや、悪魔だって暇してんだよ。危害加えてないし、別にいいだろ。」
なんだろう、ザガンの口調にすげぇ違和感ある。まあ、正体のわからない相手に対して警戒した口調で話してるんだろうけど、いつもの感じに慣れてしまったせいで、少しでも威厳のありそうな話し方すると誰だこいつってなる。
「暇ねぇ。まあ、別になんでもいいですよ。害さえなければ。それに、せっかく近くに悪魔がいるなら、いろいろ手伝ってもらいたいこともありますしね。」
「は?私達になんかさせるつもりか?悪いが、割に合わないような依頼だったら断るぞ。」
「んー、俺は面白そうだったら手伝ってもいいかな?暫くは忙しいだろうけど、そのうち暇になるだろうし。で、内容はなんですか?」
「うーんとね。まず二人は、ニュースとかって見る?」
「あー、俺は朝とかたまーに見たりしますけど。」
「私も、ほんとに極たまにしか見てなかったな。」
それを聞いた先輩がいかにもな感じの話し方で言い聞かせるように話し始めた。意外と演出的なのにこだわったりする人なのかもしれない。
「そう。じゃあこんなニュースは知ってる?明らかに人間じゃ不可能な方法で人が殺されてる事件。最近、何件も起きてるよね。一番最近のは、隣の市で胴体に縦に熱で溶かされたような跡の付いた死体が発見された事件かな。斬られたような跡なんだけど、明らかに傷口は熱で溶かされたような状態らしいんだよね。」
それを聞いて一気に記憶が蘇ってくる。俺が一番最初に魔法を知った出来事。俺がまだ隣の市で退屈な日常を送っていた頃の、炎を操る青年に男性が目の前で殺された光景。
「それってどのあたりで起きた事件ですか?殺された人の特徴は!?」
気付けば先輩に勢いよく近づき質問していた。
「お、食いついた?場所はその市の、人通りの少ない道、殺されたのは三十代の男性。やけに食いついてるけど、なんか心当たりでも?」
「幻音、それってもしかしなくても。」
「ああ、俺が悪魔や魔法を知るきっかけになった事件。その男性が溶断される光景、目の前で見てた。」
「やっぱりか。」
流石にザガンも気付いていた。まあそりゃ、前にこの話をした時に興味ありそうだったし、気付くよな。
「え?御縁君。君、その時の現場に居たの?なら話が早いね。」
「え?ちょ。御縁君?私、そんなの聞いて無いよ。魔法を見たっていうのは聞いたけど、ただ魔法を見たんじゃなくて、そんなの見てたの!?」
硴水先輩が少しポカンとしたような顔をしたのに対し、アヤはかなり驚いていた。まあ、そりゃそうなるか。流石に殺人現場を見たなんて言えなかったからな。
「あー、アヤ達に説明するのに、流石にその事に関しては言わなかったんだよ。いくらなんでもヤバそうだし。話さない方がいいかなって。それで、先輩の依頼は?話が早いって言ったよね。もうなんかだいたい察しがついたし、嫌な予感しかしないんだけど。」
「だいたい察しの通りだと思うよ。私の依頼はその犯人の特定及び討伐。顔とかも見たんだよね?目の前で見たんなら流石に。もしそうなら都合がいい。こいつが人殺しをしたのは今回で初めてじゃないんだよ。こっちも情報は提供するからさ、特定して殺して貰いたいんだ。ま、危険だろうけど。どう?興味沸いた?ま、その人がきっかけで悪魔と契約出来たんなら、討伐ついでにお礼でも言いに行けば?」
特定するだけでなく、殺す事まで簡単に頼むあたり、やっぱりこの人も悪魔と契約をした異端者か、もしくは関係者か、とにかく何かしらと関わっていることは察しがついた。
「勿論、興味はあります。なんせ、俺からしたらそいつが全てのはじまりみたいなもんですからね。危険人物なのも分かってるし、その依頼だったら受けてもいいですよ。」
まあ、実際、殺されるべきであることは確かだと思う。ただの犯罪者ならともかく、異端者を法が裁くなんてことは不可能だ。銃火器で敵う相手な訳がないし、捕らえたところで幽閉する手段がない。周りの人間に害をなすならば、殺すという判断は正しいだろう。
「ま、私も興味あるし。幻音が引き受けるんなら手伝うよ。ま、私が一番気になるのは、そいつと契約した悪魔の方だけどね。」
「ありがとう。助かるよ。じゃあ、この依頼を達成してくれたら、さっき聞いてきた私の秘密、教えてあげる。正体を明かしてもいいくらい信用できる人物だって判断するよ。でもまあ、こいつの情報はまだ若干少ないし、他にもいくつかこんな感じの事件はあったりするから、そっちを先にこなしてもらいながら、情報が集まったら、かな?連絡先、教えてくれる?他の依頼やら情報やらいろいろ伝えるために。それにもう、昼休み、終わっちゃうしね。」
「分かりました。じゃあ、また連絡ください。」
「ちょ待。おい、他にもいるの?私の他にそんなに人間と契約してる悪魔が居たのか。.......はぁー。」
ザガンは、他にも悪魔が居るということに対して驚き、深くため息をついた。情報の集め方とか、なんで先輩がそんな事件を解決する必要があるのかとか、気になることはけっこうあるけど、俺にとって、他の異端者との戦闘とかは求めていたことだし。特に今は深く考えず、連絡先だけ交換して教室に戻った。
「にしても、いきなりいろいろあり過ぎだろ。なんだったんだろ、あの先輩。なんでそんなにいろいろと知ってんのか。それに、わざわざ変な事件解決しようとしてるあたりもよく分からん。ま、確かに放置しとくと危ないような連中ばっかなのかもしれないけど。正義感だけであんな必死になるかなぁ。」
教室に戻ってから、ザガンと話す。
「あー、あいつはまだ、いまいち信頼できないねー。ま、他の悪魔とかの情報が貰えるんならありがたいけど。でもさぁ、初対面の相手に普通、人殺す依頼とかするか?」
ザガンが珍しく、割とまともなことを言ってる。
「いや、普通はしないと思うけど.......ま、硴水先輩がそもそも異端者なのかも分かってないし。異端者じゃないけど悪魔とかを見たり認識したりできるだけで、自分にとって脅威だから無くしたいとか、そういうのが一番可能性高くない?仮に異端者なのだとしたら、誰と契約したのかも分からないし、どんな力を持ってるのかも分からないし。いろいろ分からないから判断しづらいと思う。」
「ま、私は幻音の判断に任せるよ。ほんとに危なくなったら止めるけどね。」
意見はいまいちまとまらなかったけど、とりあえず、先輩の依頼を受けてみようということになった。実際、他の情報も得られるし、楽しそうでもある。
「そろそろ五時間目かな?席戻るね。」
「分かった。幻音、一応このこと、帰ったらバラムにも話しとこっ。あいつ、なんだかんだで頼りになることあるし。普段あんなんだけど、もう一人のバラムはほんとに強いから。」
「分かった。まあ、今日はみんな呼ぶし、その時でいっかな。」
そう言って、自分の席に戻った。
ザガンがバラムのことを褒めていたけど、眠り羊はかなりの規模の干渉魔法を使ってたし、暴れ牛はそれと同等レベルの攻撃魔法が使える可能性があると考えると、たしかにちょっとヤバそうな感じはする。まあ、一応味方なんだから別に怖がる必要は無いんだろうけど。いろいろと考えながら、ほとんど内容が頭に入ってこなかった五時間目が終わった。
当然ながら、六時間目も何事もなく、いつも通りの時間にSHRが始まる。先生が、転校生の願莉に関してちょっと喋っただけで直ぐに終わり、アヤ、ザガンと一緒に掃除場所のある棟に向かう。
「さーて、さっさと終わらせますかぁ。他の三人は校門前で待ち合わせしてるから、早めに行かないと。」
「まあ、倉橋君達も掃除あるし、大丈夫だとは思うけどね。」
「あー、掃除かぁ。こっちくるまでは一週間に一回くらいしかしてなかったなぁ。」
「てか、ザガンって何処いたの?一応は魔王なんだし、やっぱ城とかそういうとこ?」
「ちょ、幻音?一応とは?私は正真正銘の魔王だよ。私は城住まいじゃなかったよ。使い魔とか眷属とか、いろいろ家来がいたんだけど、そいつらに任せて一人で出てっちゃったからねぇ。小さい家で一人暮らししてた。日本の本読みながら、日本のアニメ見たりして。楽しかったけどやっぱ一人だし退屈でねぇ。たまーに召喚されることもあったけど、金作ってやって寿命奪ってはい終了。ほんとにつまんなかったよ。最近はしばらく召喚すらされなかったし。」
「へー。つまり城出てかせずに、一人暮らしさせないでおけば、こんな変態にならなかった訳か。」
「あー、城出てかなかったらそういうのにハマったりしなかったかもね。」
そうか、こいつはそこで人生の選択肢を誤ったのか。
「まあ、おかげで幻音とこの契約を結んだんだから。良かったと思ってるよ。」
「はは...そうですか。」
ザガンにそう言われて苦笑する。まあ、たしかにそうだよな。こいつが他の悪魔より頭がおかしいからこそ成り立った契約だ。
「あ、私、ちりとり取ってくる。」
俺達が箒でゴミを集め終わったのを確認したアヤが、掃除用具入れにちりとりを取りに行った。
掃除を終えた三人が玄関に行くと、丁度、見慣れた男子三人が出て行くところだった。
「お、倉橋氏ー。三人とも、ちょ待ー。」
「み、御縁君、走らなくてもちょっとだけ早歩きで行けば多分、校門に着く前には追いつけると思う。」
「いや、待ち合わせなんだし、二人とも、別に急がなくてもいんじゃね?あ、でも幻音の声に気付いてるじゃん。止まってるよ。」
「ならなおさら急がないとでしょ。待たせてんだから。」
そう言って、小走りに三人の元へ寄って言った。
「おまたせ。」
「いや、この三人も今きたとこじゃん。」
「ちょ、ザガン。一応待たせてたことに変わりはないし、流石にそういうこと言うとモテねぇぞ。」
ザガンに似た性格の人がいたとしたら、きっと直ぐに愛想つかされそうだと思う。
「あはは、まあ、たしかに今来たとこだけどね。」
倉橋氏は苦笑して答えた。ほんと、こいつは普段からこういうとこイケメンだわ。まあ、一応俺は今は女子だけど、元は百合好きな男子高校生だし、好きになることは無いが。てか、倉橋氏のそういう話、全く聞いたことは無いけど、けっこう好かれてるんじゃないだろうか。
「で、この近くのアパートっていうと、何処?」
関澄氏はこの会話への関心はあんまり無さそうだ。二次元と二・五次元以外の女の子に関心無いやつだからなあ。こいつは。
でもまぁ、悪魔とTSとアルビノ。はたから見たらかなり変わった三人組だと思う。まあ、倉橋氏も悪魔学詳しいし、関澄氏はガチオタクだし、俺らの中にまともな人って、もしかしなくても登佐氏しか居ないんじゃないだろうか。.......けっこう本気でその可能性あるので考えるのをやめた。
「とりあえず、着いてきてくれ。直ぐ着くから。ほんとに、大した距離無いよ。」
「う、うん。」
しばらく周りを見ながら苦笑していたアヤが口を開いた。アヤは見た目だけなら変わってるけど、中身は登佐氏と同じくらいまともだと思う。若干コミュ障ではあるけど。
とりあえず、四人の変人と二人の常識人は、もう一人の変人、二重人格悪魔の元へ向かうことにした。
校門を出て、歩いて直ぐ。目的地であるアパートに到着した。
「いや、近っ。」
倉橋氏が苦笑しながらそう言った。まあ、ほんとに笑えるくらい近い。そりゃあ、学校から一番近いとこを借りたんだから当たり前ではあるが。
「とりあえず、部屋ん中入るか。」
俺はそう言い、鍵を開け、扉を開けた。
「バラムー。ただいま。.......寝てるか。」
まあ、あいつはどうせ寝てるだろうとは思ってた。
「え?寝てるのに良いの?」
「あー、大丈夫大丈夫。どうせ一日中寝てるんだから。入って入って。」
バラムに気を使ってくれたアヤにそう言い、みんなに入室を促す。
「お邪魔します。」
みんながそう言って次々と入っていく。そして、
「お邪魔しまーす。」
「そうかそうか、お前はこの家の人じゃ無かったのか、とりあえず、不法侵入になるから出てこうか。」
「ちょ、幻音待って、ふざけただけだから。なんかそういう流れだったじゃん?お姉ちゃんを追い出そうとしないでぇ。」
何故かお邪魔しますと言って入ったザガンをからかった。ほんと、ネタ悪魔かよ。威厳のある喋り方の時は疲れるけど、でもここまでダメな性格の悪魔は流石にちょっとヤバいと思う。ほんとに他にもいるんだろうか。こんな感じのやつが。とりあえず、
「バラム、起きろ。」
ベッドで寝息をたてているバラムを起こした。
「おはよう。今何時?てか、誰?」
「お前まさか朝から一度も起きずに寝てたのか?.......ま、まあいいや。お前にこいつらを紹介するのと、こいつらにお前の紹介をしたり、いろいろ説明したりするために集まってもらった。」
「へー。」
「おい、お前もうちょい関心もて。関係者なんだから。」
「あ、うん。えと、顔洗ってきていい?眠いし。」
「まだ眠いのか。あー、うん。まぁ、流石に洗った方がいいな。」
顔を洗うために洗面所に行こうと、布団から出てきたバラムを見て言い加えた。
「とりあえず着替えてこい。流石にパジャマはやめい。」
「え、ダメ?」
「そりゃな。来客中だぞ、もうちょい威厳保て魔王。」
相変わらず怠惰過ぎる。何も知らない人がこいつを強大な悪魔だって聞かされたら、多分ベルフェゴールだと思うんじゃないかってほどだ。怠惰を司る悪魔なんて一人で十分だろ。しかし、眠り羊がここまで睡眠欲を具現化したような存在なら、暴れ牛はどうなんだろう。破壊欲とか、攻撃的な欲求を具現化したような感じなのだろうか。一度は見てみたいと思う。まあ、こいつが暴れ回るところなんて想像できないが。
それぞれがちょっとした雑談をしていると、洗面所から着替え終えたバラムが出てきた。
「おまたせー。」
「おし、じゃあ始めるか。まず自己紹介。バラムからでいいか?」
「うん。」
「じゃあ、頼む。」
「はーい。えと、私はバラム。魔王やってる。でも、めんどくさくて出てって、寝てた。でも、家事とか結局めんどくさくて、ここにきた。えーと、居候?になるのかな?だいたい寝てます。」
語彙。
「.....お前、ここに来た理由、やっぱそんなんだったんだな。仮にも王だろ。ザガンといいバラムといい、こんなんばっかなのか?」
「えー、失礼だなー。昔はすごかったんだよー。」
「あー、バラムはほんとにすごいやつだぞ。暴れ牛だけは。」
ザガンがだけをかなり強調して言った。つまり、眠り羊は見た目の通りダメなやつなんだろう。
「暴れ牛って?」
アヤが呟くように言った。まあ、当然の疑問だ。俺も最初はなんのことなのか分からなかったし。
「えっとね。バラムは二重人格者で、今みたいな眠り羊の人格と、もっとこう、戦闘狂?な感じの暴れ牛の人格があるっぽい。」
みんなに向かって簡潔に説明した。まあ、ザガンから聞いたことしか分からないけど。
「へー、成程。で、バラムっていうと三つ首をイメージするんですけど、角だけなんですか?」
悪魔学についてそれなりにいろいろ知ってる倉橋氏から、そんな疑問が出た。これも、俺が最初に抱いた疑問だ。
「あー、暴れ牛の人格の時だけなんだか、戦闘の時だけなんだか分からないけど、とりあえずそんな感じの時に三つ首になるらしい。いつもは角だけだし、寝る時とか角すら無いぞ。」
「へー。」
登佐氏と関澄氏はちゃんと聞いてはいるが、疑問を口にしたりはしない様子だ。まあ、別に問題は無い。
「バラムについてはこんなくらいか、次、みんなも簡単に自己紹介してもらっていい?」
そう言った後、それを承認してくれたみんなが、朝にザガンにしたのとほぼ同じような自己紹介をした。
自己紹介が済んだ後に、ザガンとの契約の前後にあったことと硴水先輩のことをみんなに説明、報告する。
「硴水先輩かあ。上級生は知ってる人なんて少ないからなあ。」
流石に硴水先輩のことを知ってる人は居なかったが、とりあえずいろいろと納得はしてもらえた。
「じゃあ、各々ちょっとした雑談でもしてていいけど、とりあえずは解散で。」
そう言って、着替えを持って洗面所に向かった。流石にみんなが居れば、ザガンも覗こうとはしないだろう。倉橋達男子三人の事は信用できるし、今着替えるのが正解だな。着替えを置き、みんなが帰った後に下着を作る必要があることを思い出しながら着替える。身軽な部屋着になって、洗面所を出る。苦笑した倉橋氏とダメですっと言い聞かせる登佐氏に取り押さえられてる変態に汚物を見る目を向けたあと、アヤとバラムの元へ戻った。すると、
「幻音ちゃん。この娘、すっごい良い子。」
「え?うん、知ってる。」
なんかバラムがアヤを褒めてた。
「家の事情とかいろいろ話してもらったの。なんか直感的に気になって。いろいろ質問したら答えてくれた。」
あー、アヤの家庭事情はよく知ってるから、すっごい分かる。
「まあ、たしかに。アヤはすごいいい子だよ。周りにダメなやつが多いから窮屈な思いしてるだけ。」
「この娘、ここに住んじゃダメ?窮屈な場所にずっと居るのって意外と辛いんだよ。私、環境に潰される人間、けっこう多く見てきたし。ずっと我慢してきたんなら、もう逃げてもいいと思う。」
「いや流石にダメだろ。仲良くはないとはいえ親が居るんだし、そもそも三人ですらかなり狭いし、それに、アヤと一緒に住んだら俺の理性が持たん。」
「うん、わ、私も高校生で同棲はどうかと思う。ごめんね。バラムちゃん。心配してくれたのに。」
「いや、心配だけど大丈夫なら問題ない。でも、たまにはきてね。」
「うん、ありがとう。」
意外にも、バラムはアヤを気に入ったみたいだ。髪の毛サラサラだし、ぜんぜんモフくないし、体温もけっこう低い方だし、俺のことを抱き枕にしたいとか言ってたバラムがアヤと仲良くなるのはちょっと予想外だった。こいつの好感基準は、自身の睡眠や堕落な生活に関する所で決まると思っていた。まあ、境遇が似てたから話に感情移入して考えたのかもしれない。いや、バラムの場合はただ単に面倒だったから逃げただけだから、アヤのが大変な気はするけど。とりあえず、アヤに友達が増えたのなら俺としても嬉しい。てか、質問されたとはいえ、アヤ.....バラムに家庭事情まで話したのか。倉橋氏達がそろそろ帰ろうとしだしたのを見て、アヤも帰る支度を始めた。
「もー帰るのかぁ。また来てねー。文乃ちゃん。」
「うん、また来ていいなら、来れる時には来るよ。」
新しい友達が増えて嬉しいのか、ちょっとだけいつもよりテンションが高いアヤが嬉しそうに返事をした。ここまで嬉しそうなアヤは久しぶりに見た。普段以上に明るい笑顔がとても可愛らしく、ずっと見ていたい気になる。でもまぁ、ここまで喜ぶのも無理もない。アヤにとって、初めての女子の友達だ。当然、変質者のザガンと中身が男の俺を除いてだが。アヤは女子に対してトラウマもあったし、バラムと関わってく中で、それが少しでも癒えたらいいなと思う。
アヤを見送った後、先程覗きの現行犯で取り押さえられた変態と、アヤと仲良くなってくれた心優しい眠り羊の二人を連れて、テーブルにつく。
「それじゃあ、硴水先輩からの依頼について話そうと思う。」
三人全員がテーブルについたのを確認し、こう言った。みんなが居る時にある程度の説明はしたものの、依頼を直ぐに引き受けるのか、それともしばらく魔法を練習してから引き受けるのか、どのくらいの頻度で受けるか等々、依頼の内容が異端者討伐だと分かっていても、どんな人が敵になるのか分からないし、少なくとも殺人等を犯していて、硴水先輩から殺害を依頼される程度の危険人物であることは確かなのだ。しっかりと話し合った方がいい。それに、バラムにはもうちょい細かく説明した方がいいだろうし。と言ってもまあ、バラムはあくまで居候だから、戦いはしないだろうが。
「えーと。とりあえずバラム、一応確認。お前は別に戦ったりはしないよな?多分。」
「うん。戦闘は好まない。」
「そっか。ま、だろうな。」
流石に分かってたけど、ともかくこれで一応確認は完了だ。
「じゃあ、ザガン。とりあえず、暇な時でいいから俺にこの魔法の使い方、もうちょい細かく教えてくれ。まだ全然分かってないし。」
「手取り足取り教えようか!」
「.....うん、セクハラにならない程度に頼むわ。」
「えぇ~。」
「いや不満そうな声出すなよ。まあ、しっかり細かい使い方まで教えてくれんなら多少は許すから。」
「言ったな?」
「お前、多少でどこまで許されると思った?」
「『自主規制』とか『自主規制』とか『自主規制』くらいならセーフでしょ。」
「うん、そっか。」
笑顔で変態を殴り飛ばした。テーブルの前に座ってたザガンは綺麗に後方へ倒れてベッドの横に頭をぶつけた。
「ちょ、痛い痛い痛い。なんで、多少でしょ!?」
「お前なぁ。多少許すでそれなら、普通に全部許可したら何するつもりなんだよ。」
「それは」
「いや、聞きたくないわ!」
そうだった。こいつに常識は通用しないんだったわ。
「ま、いいや。じゃあ、先輩からの依頼を受けるのはいいけど、実行するのは俺がある程度この魔法を扱えるようになってからでいいかな?」
「幻音がそれでいいなら、私はそれでいいよ。」
「おけ。じゃあ、暫くは練習に付き合ってくれ。」
「はーい。てか、すっごい今更確認だけど、異端者討伐だから、当然人を殺すことになるんだけど、その覚悟はだいじょぶ?」
「え?犯罪者殺すのになんで躊躇する必要あんの?警察どころか軍隊でも敵わないような奴、野放しにできないだろ、普通。」
「あー、うん。そだね。まぁ正論っちゃ正論なんだけどさ。なんかもう、人間ってより悪魔寄りな思考なんだ。うん。そっか。分かった。大丈夫だね。」
「じゃあ、改めてよろしく。」
とりあえず、暫くは戦わないということになったので、まあ、そろそろこの話は終わりでいいだろう。
「じゃあ、ザガン。この話はこれで終わりでいいよな。丁度、いつの間にかバラムが寝てるから、今のうちに」
「ん?」
「これから生地買ってきて下着作るから、見本用に下着を一着でいいから貸せ。」
それを聞いた瞬間にザガンは自分のはいていたものを一瞬で脱ぎ、差し出してきた。
「いや、さっきまではいてたのを渡すな。替えとかにしろ。」
「え!?替え?これのが良くない?」
「よくないわ。見本っつってんだろ。何に使うと思ってんだよ。」
「くんかくんk」
「違ぇよ!」
言いきらせる前に否定した。
「何回も言わせんな。作るんだよ!お前が服を準備しておきながら何故か準備しなかった下着を!でもどういうふうになってるのか分かんないから、見本として寄越せって意味で言ったんだよ!てか、なんでこんな馬鹿な魔法の使い方しなきゃならないんだよ。」
一気にそう言い、ふぅとため息をつく。
「なるほど。見本になればいいんなら、別にこれでもいいよね?」
いや正論だけど正論じゃない。なんか違う。
「いや、良くはないんだけど。まあ、作れるんならもうなんでもいいわ。」
「はーい。」
諦めて受け取った。
「えーと、とりあえず、使えそうな材料買いに...百均?とかで売ってんのかな?生地って。まあ、出掛けてくるわ。」
「あ、じゃあ私も行くー。」
「分かった。けど、外で変に騒ぐなよ。」
「ちょ!私をなんだと思ってんの?」
「変態。」
そりゃまあ、即答だろ。
「うー。てか、普通に私が既製品買った方が早くない?」
「いや今更かよ!!お前が準備しないって言ってたんだろうが!」
「まーそうだけどー。」
「でもまあ、それには反対。お前絶対自分の趣味で買うだろうし。ヤバいの買ってこられても対処に困るし。俺は地味な方がいいから。」
「えー。」
「どうせ、生地買って作られるくらいなら、自分の趣味で買ったの着せた方がいいとか考えて既製品って言ったんだろ?」
「流石幻音!私のことよく分かってる!」
「うん、嬉しくないわ。」
「ちょ。なんでぇ!」
「変態だから。」
また即答してやった。
「とりあえず、お前も行くんなら一旦これ返すわ。」
その後、結局騒ぎながら移動し、とりあえず一番近い百均まで来た。
「売ってるかなぁ。まあ、何かしらはあるだろ。」
「ねー、幻音。私、隣のスーパーでなんか食材買ってっていい?晩御飯、何も無いよね。多分。」
あ。
「そっか。完全に忘れてたわ。ありがと。じゃあ、頼むわ。こっち買い終わったらそっち行くから。」
「分かったー。直ぐ来てねー。」
「りょーかい。」
なんか、馬鹿で変態だけど、こういうとこは一応しっかりしてるんだなぁ。ま、とりあえず、直ぐに行くと言ったからには、直ぐに買い物終わらせないとな。そう考えて、百均の中に入っていった。生地とか、そういった素材がある場所まで真っ直ぐに進み、さっき見せてもらったものに近い材質のものを探す。暫く探し、目当てのものが見つかったので、何個か手に取ってレジに並ぶ。ザガンが居ないと静かだし、もうちょいゆっくりしててもいいかなとも思ったが、珍しくザガンがまともな行動を取ってるし、さっさと移動しよう。そんなことを考えながら、会計を済ませる。
買い物を終えてスーパーに入り、ザガンを探すと、魚介類のある場所で、たくさんの秋刀魚をじっくりと眺めていた。鮮度とかをかなり気にしているのか、かなり真面目な表情でじっくりと選んでいる。割と主婦みたいなところもあるのかもしれない。
「ただいま。こっちは買い終えたけど。えーと、晩御飯は秋刀魚なの?」
「いや、どうしよっかなって。」
「あれ、真剣に秋刀魚見てるから、てっきり秋刀魚で決定してるのかと。」
「あー、違う違う。知り合いにそっくりだなーって思ってただけ。」
「失礼だなおい!」
いや、ツッコんでしまったが、今の台詞は流石に秋刀魚に失礼か。反省。
「いやー、暫く会ってなかったからなぁ。銀鮫のロリ野郎でさー。」
前言撤回。
「いや鮫かよ!似てねぇ。」
鮫の悪魔なのに秋刀魚に似てるとか失礼にも程があるだろ。知り合いって言ってたし、暫く会ってないとも言ってたし、明らかに敵じゃないだろ。友達かなんかならそんな罵るなよ。しかもロリかよ。
「銀髪のロリっ娘で、周りに銀鮫侯とかフォル侯とか呼ばれてたから、私、そいつのことロリ侯爵とかロリ侯って呼んでたんだけど。しばらくしたら、なんか無視されるようになって。」
「百パーお前が悪いだろそれ。」
「まー、いいや。今晩は秋刀魚にしよう。」
そう言ってザガンは秋刀魚を3匹、横にあった専用の袋に取る。
「ちょ。急に話戻すなし!...まあいっか。魚好きだし。」
「そっか、幻音、魚が好きなのか。じゃあ、魚料理多めにしよっかな。献立。」
お、それはありがたいかも。と思った矢先、
「でも、幻音さえ良ければ、私を食べてくれてもいいんだよ。勿論性的な意味d」
即、片手で口を塞ぎ、もう片方の手で引っ張りながらその場を離れた。
「おい、外でそういう発言やめろ。三メートルくらい離れたとこにいたおっさんがこっち見ながらちょっと気持ち悪い表情してたからな。しかも周りからも目立ってたし。」
「え、そんな変態いたの?怖。」
「お前のが怖いわ。」
「いやいやいやいや、流石にそこまでキモくないから。」
「まー、いいや。とっとと他の食材買って帰るぞ。」
「はーい。」
ある程度の量の食材を買い、散々に騒いだスーパーを出る。重い荷物を持ちながら家に帰り、冷蔵庫に食材を入れる。
そして居間の机の上を見て固まる。
「な、なあ。お前。今、スカートの下。なんかはいてる?」
「え?幻音に脱がされたから、なにもー。」
「ちょ。」
まあ、もう気にするのはやめよう。買ってきた生地を使って早速製作に取り掛かる。それと同時に、ザガンが台所で料理を始めた。この魔法にはまだ慣れていないから、苦戦するのではないかと思ったが、見本と同じような形状に変化させるのはそこまで難易度が高くなかった。
しばらくして、料理の匂いでなのか、バラムが目を覚ます。まぁ、秋刀魚は焼くといい匂いするよな。
「おはよー。」
「ああ、おはよ。もう夜だけどな。」
「さかな?」
「うん。秋刀魚買ってきた。」
「へー。あとどのくらい?」
「結構経ったし。直ぐじゃないかな?」
「分かった。」
「そだ、バラム。」
「なに?」
「昼間、アヤと仲良くしてくれてありがとな。アヤ、学校に女子の友達とか居ないからさ。多分、思ってる以上に喜んでると思う。ま、男子も俺の他は倉橋氏達三人と少し話せるくらいだけど。」
「文乃ちゃん、すごい良い子じゃん。なんで友達居ないの?」
バラムは当然のように聞いてくる。ザガンが銀髪の悪魔の話をしていたし、アヤみたいな髪色は普通だという感覚なのかもしれない。
「あー、周りが普通じゃない見た目だけで近寄ろうともしない奴らばっかだから...かな。銀髪の人間って珍しいんだよ。」
「えー。見た目?可愛いじゃん。」
「だよな!!」
あ、やぺ。思わず大声を出してしまった。
「家だけじゃなくて、学校までそんなに居心地悪いのかー。逃げようって思わないのかな。」
「真面目だからな。てか、そういや昼のバラムの話、普通に初耳なんだけど。」
「あー、私ね。二つ人格あるでしょ?牛が戦争とかで優秀だからって、しょっちゅう呼び出されてて。私は戦争嫌いなのにねー。それで、無理やり前線に立たされたりしてたから、いつからか逃げるようになって。それで逃げる癖がついちゃったの。」
「.....そんな過去があったんだ。」
もしかしたら、昼間言っていた、私は逃げたのにっていう台詞は、最近のことじゃなくて、俺なんかじゃ想像もできないような昔のことを言ってたのかもしれない。
「それで前に、ザガンに手伝ってもらいながら逃げ出して、ザガンの用意してくれた隠れ家で暮らしてて。そのままずっと生活してたんだけど。ある時急に、ザガンに呼び出されて。」
そこからの流れは知っている。
「借りを返したぶんのお釣りとして、ここに来ることを要求したと。」
「そう。」
「そっか、いろいろ大変だったんだな。」
「うん。」
「お前さえ良ければだけど、ここにだったらずっと居て大丈夫だからな。」
「ん、ありがと。」
「うん。」
なんか、どっかの変態と違って、この娘はすごくいい子に見える。ただの家出魔王かと思っていたが、割と苦労の絶えない人生を送っていたのかもしれない。と、バラムの過去のことを少し考えていると、ザガンが料理を持ってきた。ご飯、味噌汁、秋刀魚、漬物、なんか、これぞThe和食って感じだ。
「おーまたせー。」
「お、ありがとな。ザガン。」
「ん、ありがと。」
持ってきた料理をテーブルに並べ、それを囲って座る。
「「「いただきます。」」」
そう言って、三人とも、料理を口に運ぶ。
「ほんと、なんでか知らんが料理うまいよな、お前。」
「ふふ、お嫁さんにしたいなって思った?」
「ん?俺はシスコンじゃないよ。あー、料理の美味いお姉ちゃんがいるといいなー。」
「うう。」
面倒な時は姉妹設定を使えばけっこううまくかわせる気がする。なんだかんだ、お姉ちゃんと呼ばれるのは嬉しいらしいので、学校以外でずっとこう呼んでれば、少なくともさっきみたいな発言はしなくなるかもしれない。まあ、慣れて学校でも呼ぶ危険性があるし、調子に乗る可能性もあるので、たまにしか呼ばないが。
ご飯を食べ終え、食器を水に付ける。そして、まだザガン達が食事を終えていないので、
「先風呂入るね。」
帰ってきてすぐに沸かしておいた風呂に入ることにした。
「ちょっと待ってまだ食べてる。」
食べてろ。
「うん、俺が風呂入るのになんでお前が食事してちゃダメなんだ?」
「覗けない。」
「そっか。うん。意味分からん。」
そう言って着替えを持って洗面所に行き、鍵を閉めた。今日は昨日と違って変態がいないため、ゆっくりと風呂に入れる。俺は割と温泉が好きな方なんだが、こんな体になった以上、なかなか温泉に行くのはハードルが高い。てか普通に駄目な気がする。だからこそ、せめて風呂くらいはゆっくり浸かりたい。脱いだ服を洗濯機に入れて、浴室に入り、直ぐに体を洗って浴槽に浸かる。
今日は...ってか今日も、いろいろあり過ぎた気がする。先輩が何者なのか分からないけど、あの炎魔法の青年を探すための唯一の手掛かりだし、それにこれから、他の異端者と戦いをしていくためには、やはり先輩から情報を貰うのが一番だ。どのみち、先輩に頼まれようが頼まれまいが、結局はすることなんだから、別に断る理由もない。
昨日までは未定だった今後の方針も、二日目にしてかなり決まってしまった。まだ完璧にこの魔法を扱えるようになった訳ではない。暫くは練習が必要だとは分かっているが、早く依頼を受けたいという気持ちが強い。正体がわからず、完全に信用しきっていいのか分からない先輩だけど、あの人のお陰で、求めていた非日常の舞台は整った気がする。
一日でも早く、この魔法を極めないと。そう思い、目の前に氷の塊を作った。馬鹿らしいことだが、ザガンのせいで下着を作ったりと、一応は魔法を使用していたので、ある程度の細かな形を作るのには慣れてきた。氷を刀の形に変える。初日の最初に作ったものと違い、柄の部分の装飾まで細かく作れた。なんかもう、それなりに使いこなしてないか?まあ、使い方が他にもあるだろうし、ザガンからはそれを教わろうか。
そのままかなりの時間、いろいろと考えを巡らせ、暫くしてから風呂を出る。全く、何故風呂に浸かっていると考え事をしてしまうのか。昔から地味に謎だと思っている。
着替え終えて居間に戻ると、今度はザガンが洗面所に入った。.....なんか心配だけど、まあ、どうせ匂い嗅ぐくらいだろ。...くらいじゃねぇな。どう考えても。やばい、感覚が麻痺してきている。もうそれについては諦めて、明日の支度だけ済ませると、疲れた体を癒すため、ちょっと早いが寝ることにする。一つしかないベッドで既に寝ているバラムの横に入り、そのまま目を瞑る。いろいろと今日あったことが頭に浮かんでくるが、もう風呂で充分考えたし、それらを無視してとりあえず寝ることにした。