俺の友達【小話】
拙い物語ですが、お暇にどうぞ。
アリスは不思議な女だ。
コロコロと表情は変わるし言葉も変わる、中身がごちゃ混ぜになってるように見える。
本人も気にしているようで強気になったり言って後悔してちらっとこっちを心配そうに見てくるのは可愛い。
言葉や雰囲気は変わるし変な人間だけど根本は変わらないから気にしてはない。
まぁ、友達だしな!受け入れてやるのも男の器だろ?
「あなた!ロード様にまで手を出すなんて!!許さない!」
ある日散歩していると庭の人気のない場所で叫び声をきいた。
アリスと………どっか隣国の貴族の娘だな。
気が強くて美人で高飛車だけどにっこりと微笑みを見せると手の平でうまーく踊ってくれるから何回かデートしたことあったっけ。
「貴女が来てからロード様わたくしを誘ってくださらなくなったのよ!貴女魔力が強いからって何でも思い通りになるなんて思わないでちょうだい!!!ロード様を返して!!!!!」
あら。大変。なんて他人事みたいに眺めながらアリスを見る。
アリスはなんて言うだろう?とちょっとした期待を胸に隠れて様子を見る。
『…貴女はロードの婚約者様?』
簡潔に首をかしげると怒鳴っていた令嬢は顔を真っ赤にして更に怒る。
「ち、違うわ!でもデートも何回もして頂いたのよ!き、キスだってしてくださったわ!わたくしのこと可愛いっていってくださったのだもの!貴女が権力をふりかざなければっ、きっとまた…」
わぁ、余計なこと言うなよアリスに嫌われると冷や汗が出てきてどうしようかと内心焦る。
『……まぁ、婚約者でなくとも構わないのだけど。言う相手を間違えてはいなくて?わたし、権力なんて合ってないようなものだもの。有るのは立場だけ……貴女も分かってらっしゃるでしょう?』
そうだ。権力権力といいながらアリスにあるのは立場だけだ。
囚われの婚約者……この地に住むものならすぐに理解する。
アリスの魔力を国が利用し続けるための
この国の可哀想な大切な【生贄】
だからアリスを害するものは居ない最高地位にいながらにして囚われの可哀想なお姫様
「っ、、、その魔力で脅しているのでしょう!化け物!!!!」
言ってから青褪める令嬢は正しい。
アリスの容姿は妖精に愛された証の髪と瞳。
その魔力は化け物といって差し支えもないのだ。
禁句でありながら事実である。
言ったことがバレたら死罪にもなり得る。
この国はその化け物の力で成りなっているのだから。
アリスの反応は?と友達の癖に眺めてしまう俺はくずだと思う。
『っ、ははっ、ふふふ……』
綺麗に綺麗に花が咲くように笑って微笑む天使。
死神の鎌を持った天使。
『貴女は、可愛いわ。この国の人間はだれもそう思っても言えないの。この魔力が怖いもの。言えた貴女は可愛いわ。』
可愛いとクスクス笑うアリスは妙に大人びていて綺麗で見とれてしまう。
『化け物……ね。正しいわ。』
その目のなんて冷たい事だろうと思う。
悲しみもないガラスのようなただ美しいだけの表情にチクリと胸がさす。
「なら、囚われた哀れな俺を愛を与えて助けてくれますか?アリスお嬢様?」
つい、声を出した。
令嬢の顔は更に青白くなって逃げた。
『誰から助けるの?私追いかけないから逃げていいのよ?あの子がいったとおり私化け物だもの』
表情はまだ変わらない。
「言ったろ?貴女は俺を追いかけてほしいって。追いかけて捕らえて離さないでくれたら俺は満足だよ。」
例えそれが友愛だとしても。
囚われたいと思ったのだから。
にっこりと笑う俺に困った顔をするアリスはさっきの美しくも感情のない化け物としての表情ではない。
その顔が好きだ。弱くて困ってて人間らしい顔。
好きだと可愛いと囚らえてほしいとつげるたび呆れながらもアリスは安心してくれる。
ならば何度でも愛しのお嬢様の為に道化になろう。
ゆっくりとゆっくりと偽物のような砂糖のように甘い愛をふりかけて………
アリスの心が溶けるまで
ありがとうございました。